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しおりを挟むコーヒーも飲み終わって部屋に戻り、先輩が見たいと言うので僕が普段見ている動画サイトのチャンネルを一緒に見ることになった。
タブレットなんて気の利いたものは無いので、大学時代から使っている型落ちのPCで動画サイトにアクセスした。
ベッドを背もたれ代わりに二人で横に並んで14インチの画面を覗き込む。
動物園のチャンネルとか、最近発売されたゲームの実況動画とかを紹介した。
先輩は興味深そうに画面を見たり説明する僕の顔を見たりしている。
「花邑さんって動画サイトとか見ないんですか?」
「そうだね。普段は見ない。」
「じゃあサブスク映画とかは?家族アカウントあるんで、そっちの方が良ければそっち見てもいいですよ。」
「そういうのも使ってないな。」
今時動画もサブスクも見ないなんて珍しい。
「何か趣味とか休みの日にやることってありますか?」
興味本位で聞いてみた。
「休みの日は付き合いのゴルフが多いな。あと、子供の頃から茶道と弓道は続けているよ。」
「さどうときゅうどう。」
そうだこの人若様だった。
画面見ながらいいねボタン押してるより圧倒的に若様なご趣味。
「興味あるなら今度一緒にやってみるかい?道具も俺の予備をあげるし……」
「いえ、結構です。」
自分がさどうときゅうどうにふさわしい人間とは到底思えない。
「あ、でもゴルフはやっぱり今の会社にいるならやっておいた方が良いかなって。難しいですか?」
思いついて聞いてみた。
正直な話、道具買うだけで30万、1回のプレイに交通費やら含めたら1万円、さらにレッスン代、と聞いているのでしばらく手を出すつもりはないけど。
「練習すれば大丈夫だ。俺が教えてあげるよ。道具も沢山あるるからユウくんは心配しなくてい。」
それは魅力的な申し出……いやいや、僕は集りじゃないぞ。
「やっぱりいいです。今の部署では必要ないし。」
「そう……残念だな。ユウくんと一緒なら絶対楽しいのに。」
「いや、僕なんて絶対足手まといですよ。球技とか苦手なんで。」
「そんな事ないよ。最近ユウくんといるのが一番楽しいから。……そうだ、趣味『ユウくん』でもいい?」
「よくないと思います。」
何で『いいこと思いついた』みたいな顔してんだこの人。
「もう趣味だと思うけどな。」
「ダメです。あ、そろそろお昼じゃないですか。今度は僕が用意しますね。」
一緒に付いて来ようとする先輩に動画視聴の課題をいくつか出してキッチンに行く。
お昼は冷凍チャーハンに決めた。
ドラッグストアが毎週水曜日にやる半額デーで買っといた特用サイズ。
レンチンして、焼いた目玉焼きを乗せたら完成だ。
丼に入れるのがポイントだったりする。
平皿よりパラパラの米粒を掬いやすいからね。
二つ持って課題をこなしている先輩に近づき、丼を一個渡した。
「ありがとう。このまま手に持って食べるのかい?」
丼を見下ろして目を丸くする先輩。
「だって机にはパソコンあるし。並ばないと一緒に動画見られませんよ?」
自分も座ろうとして、はたと気付く。
「中濃ソースかけ忘れました。取ってきます。」
「チャーハンに?」
「目玉焼きなので。花邑さんもかけますか?」
「…………じゃあ……。」
丼を二つ持ってもらい、取ってきたソースをそれぞれに掛けた。
先輩は何だか複雑そうな顔でそれを見ていたけど、食べてみたら美味しさが分かったのか嬉しそうにしている。
僕も画面を見るために先輩の肩に触れるくらいのところに詰めて座ってチャーハンを食べた。
それから時間潰しにいくつか動画を見て、僕が好きなお笑い芸人のコントを流し見する感じになった。
先輩は知らない芸人だったみたいだけど、僕の横で画面を眺めている。
見ていたら、ツッコミの発言がツボで思わず吹き出した。
「あっはっは、花邑さん、今の笑えません?」
同意を求めて隣を見れば、先輩がじっと僕を見下ろしていた。
「花邑さん?」
その雰囲気に心臓がドキリとする。
見つめ返すと更に心音がドクドク鳴った。
先輩の顔が黙ったままゆっくり近づいてくる。
おどけた動画の音声がだんだん遠くにいくようだった。
キスされるかも、と思ったけど動く気にはならなくてギュッと目を瞑った。
ピンポーン、ピンポーン、
目を瞑った途端インターホンが鳴ってパッと目を開いた。
先輩の顔がすぐ目の前にあって、我に返った表情をしている。
「あ、来たんじゃないですかね。」
まだドキドキする胸を押さえながらそうわざとらしく軽い口調で言って、まだ呼び出し音が鳴っているインターフォンに応じた。
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