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13, 初仕事に行くのだ
しおりを挟むユジンに唾液と精液をもらって回復した後、俺様とグイドは食堂で腕組みをして椅子に座るユジンの前に立たされていた。
「グイド、外にいる間この馬鹿から目を離すなと私は言わなかったか?」
「申し訳ありません。案外リュスがしっかりしていたので、独断で判断しちまいました。」
グイドがすまなさそうに眉をハの字に下げて頭を掻いた。
「言い訳は聞いてない。おい馬鹿、お前外で変幻を解いただろ。じゃなきゃあんな風にならない。」
ユジンが今度は俺様を睨んで言う。
「出し入れの練習してたのだ。そしたら凄く辛い思いを持った人がぶつかってきて、それが俺様に移ったのだ。ねぇユジン、あの人は大丈夫かな?」
きっとあのままだとずっと苦しいと思う。可哀想なのだ。
「はぁ……人間は専門外だ。知るか。そいつの邪心に悪魔が呼応するようなら、その悪魔を蹴散らすことは出来るがな。」
「うっ、でも……」
「ゆ、ユジン様っ。一応聖職者として迷える信徒を気にかけませんか?その者の邪念を悪魔が取り込む事もなくなりますし。ね?」
話に入ってきたグイドをユジンが横目で見る。
「チッ。そんな事は切りがないと思うがな。グイド、この馬鹿から今日中に人相を聞いて人物が割り出せるようなら教会として必要なフォローをしろ。」
「へぇ、承知しました。」
「俺様も手伝うのだ!」
「馬鹿は明日から私と任務だ。グイド、未明にレンナのザンバザル商会に向け発つ。馬車と数日の旅の準備をしておけ。いない間の私の業務はいつも通り依頼が来た順に部屋に並べておくこと。」
「承知しました。」
「任務?」
「詳しくは道中話す。お前が余計な問題を持ち込んだせいで仕事の進捗がだいぶ遅れた。話は終わりだ。明日寝坊するなよ。」
そう言うとユジンは食堂から出て行った。
「ありゃ夕飯も食べに来なさそうだ。リュス、後でお持ちしてくれな。」
「うん。グイド、ユジンは大変なんだな。俺様ユジンの書斎が紙や巻物でいっぱいなのを見たぞ。あれが全部業務なんだろ?」
「ああ、ユジン様は特殊というか、特に優秀でいらっしゃるから元々負うものも多いが今は特にだな。」
グイドが困った顔で笑った。
「今は特に?」
「あの方は教皇庁で教皇様の補佐をされるのが本来の役割なんだ。それをだいぶ無理を言って望んでこの片田舎の司祭をやってる。その皺寄せってとこだ。」
グイドの言うことがよく分からなくて首を傾げる。
「あの気性で曲がった事が大嫌いだから、性根が腐った中央のジジイどもに大分嫌われてるみてぇだ。仕事の押し付けが絶えねんだよ。ま、下らないやっかみだな。それでも教皇様のユジン様に対する信頼は揺らがねぇからいずれねじ伏せると思うけどな。」
「グイドはユジンの事を信仰してるんだな。」
俺様が言うとグイドは笑った。
「俺が信じてんのはただ一人、天の神様だよ。だから教会にいる。俺がユジン様に期待してるのは、きっと将来教会の頂点に立って神様と人間の関係をもっと良くしてくれる方だからだな。」
それを聞いて俺様は少し悲しくなった。分かってたけど、ユジンとグイドは教会の人なのだ。そして教会は悪魔が嫌いだ。
神様に背き、人間に迷惑をかけるから。
「……俺様は、早く帰りたい。」
これまでは魔物や怨霊になって人間に悪さをしたり退魔師に痛い目に遭わされたりするのが嫌だった。
でも今は、ユジンとグイドに嫌われたくないから穢れるのが怖いと思う。そうならないためにはまた暗闇の中で過ごすのが一番だ。
「あ、ああ、お前のことに関しちゃユジン様は酷いと思うぜ。リュスはこれまで何も悪さしちゃいなかったんだからな。」
グイドの眉毛がまたハの字になった。
何だかその言葉にも少し悲しくなる。
「あ、悪魔だって、悪魔だって……みんな好きで悪さするわけじゃないのだ。だって俺様は人間が好きで、でも人間といると穢れてしまうから……」
「……そうだったんだな。うーん……。」
グイドが困っているのが分かる。
もうこの話はやめた方がいいかもしれない。
「グイドっグイドっ!さっき見た事は誰にも言わないで欲しいのだ!恥ずかしいから!」
俺様はぱっと思いついたことを話した。
「えっ、ああ、正直言えるわけないから大丈夫だ。むしろ見ちまって悪かったな。」
グイドの顔が少し赤くなる。
「仕方なかったのだ。誰も悪くないのだ。」
「ありがとな……いや、どうだろうな。ユジン様、いつも執務中は書斎に鍵を掛けるから。」
「?、グイドは開けれたじゃないか。」
「ユジン様がたまたま鍵を”忘れてた”からな。俺たちが一緒に出掛ける時ちょっと臍曲げてたし。」
「そうなのか?ユジンも一緒に行きたかったのかな。」
「あー……。うーん……。」
困らせないために変えた話題だったのに、グイドは何故かまた困った顔で頭を捻り始めてしまったのだった。
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