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20, ふかふかの布団
しおりを挟む「ほう、ではあの屋敷に悪魔はもう出ませんかな?」
「はい。心配ありません。」
夜中に屋敷に戻った時、ザンバザルは律儀に出迎えてくれた。
今は顛末を報告をするためにザンバザルの書斎にいる。
あれから馬車の中でブルダンが乗り移ったはずのペンダントに呼びかけてみたけど、何も反応はなかった。
夢で見た内容をユジンに話したら、ユジンも内容についてはよく分からないけど調べてみると言った。
「そうですか。いやぁ、助かりました!流石は枢機卿様。リュス君もありがとう!これであの屋敷を売りに出せます。」
ザンバザルがテカテカした顔をぐりんとこちらに向けて言う。
「しかしこんなに若く愛らしいのに、退魔師としても優秀なんて枢機卿様のお稚児さんとして素晴らしいですねリュス君は!」
両手を擦り合わせながら勢いよく話している。
「えへへっ」
俺様褒められたのだ。ユジンも喜んでくれたかな。
「いえ、まっっっっったくの未熟者です。」
バッサリなのだ。ううっそんなに力いっぱい言わなくても……。
「そんなとんでもない!聖職に就いていないならば下の娘の婿に欲しいくらいです!生まれはどこですかな?ユジン様にお仕えするくらいだ。尊いご出自でしょう?還俗のご予定は?」
ずいっと分厚い体が椅子からこちらに乗り出してくる。ギラギラした目が怖い。
「え、えっと……俺さ、あ、私は……」
「ザンバザル殿、おたわむれを。」
「いや、失礼。せっかくのご縁ですから、お二人とこれきりはとても惜しいのですよ。枢機卿様は一度私の上の娘に神学のご講義など頂けませんか?未熟ですが、信仰心は厚いのです。謝礼はもちろんたっぷりお渡しします。娘は今18歳で……」
「ザンバザル殿、私のご報告を続けても?」
「あ、ああ、度々失礼。まだ何かありましたかな?」
ザンバザルがギラギラを少し抑えて座り直した。
ユジンが預かっていたペンダントトップを取り出して渡す。
「こちら、ありがとうございました。見た所屋敷の怪現象とお祖母様は無関係でした。しかし、屋敷にはお祖母様の魂がまだ残っていました。貴方たちご子孫を心配されてのことでしょう。その御魂をこれに移してまいりました。」
ザンバザルがペンダントトップの肖像画をまじまじと見る。
「ふむ、この絵に鳩など描かれていましたかな?」
「それが、お祖母様の魂が宿っている証です。」
「ほう……不思議なこともあるものですな。枢機卿のお話でなければとても信じられません。いやしかし、大したことの無い品なのですよ。祖父が初期の事業で得た利益で作らせたと聞いていますが、工房も無名だし絵師も未熟な学生のはずです。祖母も何もこんなものに宿らなくても……。ベンスの細密画の方に移せませんかな?」
「……魂次第かと。何にせよ、どうかお大事にされますよう。私もその品が気に入りました。また近くに来た折は拝見に伺います。……その時はお嬢様にお相手頂きたいものですね。」
その言葉に、ザンバザルの顔がパッと明るくなる。
「ややややっ!もちろんです。お越しの際は娘とご覧ください。不束な娘ですが美術には詳しいのです。いやぁ、先ほど反応が薄かったから落胆しておりましたが、枢機卿様も立派な男でいらっしゃる。お若いのにムッツリなんですな。や、失敬。誠に結構結構。あっ、もちろん私は口の固い男ですぞ。ふっふっふ。」
何の話かよく分かんなかったけど、ザンバザルの嬉しそうな言葉にユジンの口が小さく引き攣っているのが見えた。
その後、もう遅いからザンバザルの屋敷に泊まる事になって俺様はユジンと別の客間に通された。
シンとした部屋で落ち着かない。今までユジンかグイドが近くにいたからな。
1人になるのは久しぶりだ。
……寂しいな。
『ユジン?聞こえる?俺様は寂しいぞ。』
頭の中で話しかけてみるけど、返事はない。寝ちゃったのかな。
-暗闇は嫌だ。寂しい。愛されたい……-
ブルダンの言葉が胸を締め付ける。
俺様も、ヴァルプルギスの夜が来たらまた暗闇に帰らなきゃいけないから。
昔は違ったんだろうか。ユジンやブルダンが言うように、俺様は土地神で人間と一緒に暮らせてたのかな。
考えると頭がぐちゃぐちゃしてきたから、もう寝ることにした。
用意されてたナイトガウンに着替えてベッドに入る。
…………ふっかふかなのだ!!!
凄い。凄いのだ。ユジンの部屋のベッドと全然違う。
あれも暗闇にいた頃のねぐらと比べればふかふかであったかいと思ってたけど更に気持ちいいんだぞ。
俺様はゴロゴロ転がってふかふかを楽しんだ。
これならぐっすり眠れそう、と思って目を瞑ってみる。
……ユジンの匂いがしないな。
それに何だか眠れない。
今日いっぱい寝たからかな。
暫くじっと寝ようとしていたら部屋のバルコニー窓からコツコツと音がした。
ベッドから出て窓の外を覗いてみると、バルコニーにユジンが立っている。
「ユジン?どうしたのだ?」
窓を開けるとズンズン中に入って来た。
面白くなさそうに眉間に皺を寄せている。
「どうしたもこうしたも、あのジジイ娘を夜這いに寄越しやがった。無視したら鍵を開けようとして来るから窓から逃げてきた。調子に乗りやがって。」
「夜這い?」
「馬鹿。姦淫のことだ。」
「かっ、姦淫!?駄目なのだ!俺様以外と姦淫なんてっ!!」
俺様の咄嗟の言葉にユジンが珍しく目を丸くしている。
変なこと言ったか?本当は聖職者は姦淫しちゃいけないんだろ?それに、何だか俺様は嫌な気持ちだ。
「当たり前だ。これ以上リスク抱えられるか。レンナの一商人ごときと繋がっても私には何の得もないし。」
いつもの顔に戻ったユジンがあれは失言だったな、と呟きながらベッドに辿り着いて寝転んだ。
「ここで寝るのか?」
「知らん女が股開いて待ってる部屋に帰れないだろ。お前の事は孤児だって言っといたから、下の娘の突撃もないだろうし。」
布団にくるまるユジンに続くように俺様も小走りでベッドに戻って一緒に潜り込む。
そうすると、ユジンの腕が俺様の体に回ってきた。
「わっ、ユジン冷たっ……」
ひんやりした服や髪が肌に当たる。
「そりゃ、この季節に寝巻きで外の壁伝ってきたんだ。ここ遠かったし。あー寒。」
「俺様で暖を取るなっ!寒いっ!」
冷たい体から離れようとするけど、回された腕が解けない。
「いいだろ。他の奴と姦淫しないでやるから。」
「っ……本当か?」
「……馬鹿。」
ユジンの凍えた指が俺様の鼻をギュッと摘んだ。
痛いし冷たい!
「ひゅっひゅめたい!」
「あーあったか……。」
「ぴゃあっ!首触るなぁっ!」
ユジンが冷たい手で身体中触るせいで暫く寒かったけど、布団はふかふかで、ユジンの匂いがして、そのうちにぐっすり眠れた。
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