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37, 悪魔と運命の人
しおりを挟む「人間は憎しみや絶望の感情に支配されて抑えられなくなると強い邪心を放つようになる。それを俺たちが取り込むとそれは穢れになってその感情が俺たちを支配し、怨霊や魔物になってしまう。それはわかってるんだよなリュス?」
朝ごはんの後、ラムールが俺様を自分の部屋に呼んで話を始めた。
「うん。知ってるぞ。」
「更に、ほとんどの人間は多かれ少なかれ日々怒りや悲しみを感じている。人間といれば少しずつその微かな邪念が俺たちの体に溜まり、時間をかけて穢れになる。本来土地神として信仰されている間はそうした穢れは人間の信仰心で浄化されていたが、今俺たちを信仰するものはほぼいないから溜まる一方だ。」
「そうなのか。それは知らなかったぞ。」
普通に暮らしていても穢れが体に溜まるのか。
「だからお前は主人から取り込んだ血肉の消費が早いんだな。主の血肉は信仰心の代わりになる。体内に取り込んで入り込んできた小さな邪念と相殺させられるんだ。だから入り込んでくる邪念を減らせば当然貰う血肉も少なくて済む。」
「そうか。だからユジンは俺様が止めてって言ってもいっぱい中に精液を出してくるんだな。」
「……何だそれは。」
「ユジンは俺様が気持ち良すぎて辛くなってもいっぱい唾液と精液を入れてくるのだ。でもそれは俺様の所為だったんだな。ちゃんと入ってくる邪念を減らしたらどれくらい貰うので済むんだ?」
「…………俺は月に一度アリアス様に貰っているが。」
言われた頻度にちょっと焦る。
「月に一度!?俺様実は今毎日ユジンに触りたいんだ。月に一度は困るぞ。」
「はぁ……リュス、お前とユジンがどういう契約をしたのかしらんが、俺がアリアス様から貰っているのは血だ。だから、なるべくいただく量が少なくなるように気をつけている。」
「そうなのか!?俺様はユジンに唾液と精液を貰っているぞ。」
そういえば、出会ったばっかりの頃にユジンが血や肉は痛いから嫌だと言っていたな。血を貰う契約にもできるのか。
「それは……飲むのか?」
「飲んだり、姦淫でお尻に入れられたりなのだ。」
「…………。」
ラムールは黙ってしまった。
そういえば、姦淫の話は絶対するなってユジンに言われてたっけ。しまったぞ。
「ラムール!今の話は内緒話だ!お願いなのだっ!!」
慌ててラムールに口止めする。
「ああ、だろうな。しかし、主人が傷付かない良い方法だと思う。流石ユジンだな。」
ラムールが納得顔で腕組みする。そうか。姦淫ならユジンの体に悪いとかは無いんだな。よかった。
「しかしどちらにしろ邪心や邪念への防御は高めた方がいい。今日から訓練だ。」
「わかったのだ。」
ラムールが頷いて、話題を変えた。
「それと、お前”運命の人”についてユジンに話したんだな。選んだのか?」
「え?いや、ブルダンが言ってた事を話したんだ。駄目なのか?」
「神だった頃の事覚えてないのか?」
「う、うん……。人と暮らしてた気はする。ラムールは?」
「俺はセルトの村の住人が出入りする沢にあった巨石に宿っていた。村が滅んでもしばらくはそこにいたが、ある日岩が砕けて引き摺り出され、気がついたら別の怨霊と化した悪魔に取り込まれて穢れていた。それを救ってくれたのがアリアス様だ。」
「そうか。俺様は昔の事全然覚えてないんだ。ラムールは”運命の人”の事知ってるなら何で昨日話さなかったのだ?」
「自ら”運命の人”と選んだ相手以外の人間にその話をするのはタブーだ。体が話せないようになっている。」
「え、俺様ユジンにしちゃったぞ。」
「大した話はしてないんだろ?」
確かに、俺様ブルダンは消えるために”運命の人”を探してた、としか言ってないな。
「”運命の人”は今の俺たちの従属契約に近いが相手に全てを委ねる契約だ。だから、人間側が心から望めばその死に際して契約した土地神を一緒に連れていく事が出来る。俺たちは心変わりをする事がない不死の存在だ。本当に愛する人間が出来た時その死で永遠に苦しまないように”運命の人”を選んで共に死のうとする。」
「それは、退魔に使えそうにないな。」
「ああ。あくまで永遠の愛の下土地神が相手を選び、人間がそれに応じる必要がある。」
ユジンが悪魔を殺す方法にはならなさそうで安心した。
「リュス、言っておくが、安易に”運命の人”を選ぶな。人間に永遠を求めるのは難しい。相手が心変わりすれば、俺たちは契約のペナルティで怨霊になるからな。裏切った人間の方も死後の魂がこの世を彷徨うことになる。」
ラムールが重い口調で言ったから、俺様も黙って頷くしかなかった。
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