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第3章 学園編

29 書庫整理完了

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結局、その週はまともに授業に行けなかった。
育成科の棟に行くと囲まれてしまって酷い時は授業の妨げになるくらいの騒ぎになり、教授に出ないように釘を刺されてしまった。
ま、まあ、俺が守護獣を進化させてるわけじゃないしそのうちこの誤解も解けるだろう。

代わりに新しく引き受けた生徒には過去のレポートも含め出してもらうことにして、空いた時間は書庫に引きこもって整理の時間に当てた。
授業中は流石に生徒達も付きまとってこない。

迂闊に廊下も出歩けなくなって、授業の合間にユーリスを遠くから盗み見ることもできなくなってしまった。
こんなにユーリスから離れるのは出会って以来始めてだ。

会いたい。

ついそう思ってしまう思考を頭を振って切り替えてまた本に目を落とした。

育成科の授業が終わると、いつものみんなが書庫に来てくれた。
書庫にも生徒が押しかけるんじゃないかと心配だったけど、ティモルの機転でグレが扉の前を陣取って突撃者をブロックしてくれるので作業は至って平和だった。

それから数日。

作業が終わった最後の本を棚に戻す。

「出来た……。」

書庫にあった大量の書物全てにラベルと貸出カードを付け終わり、入り口には全書籍のカード目録を収めた棚を設置した。
流石に要約までは終わってない本もあるけど、いずれ全部につくだろう。
最近ではまだ要約が付いていないものは研究科の誰かが本を借りた時に要約をつけて返してくれるようになったからだ。
その中には、俺に添削を押し付けた2年生の生徒なんかもいる。

始めた頃は、こんなにみんなに協力して貰えるなんて思わなかった。

「ルコさんおめでとうございます!」

ティモルが後ろでぴょんぴょん跳ねて祝福してくれる。

「手伝って頂きありがとうございます。」

ティモルに返し、一緒にいるミレーユ達3人にも振り返って感謝を伝えた。

「皆さんもご協力ありがとうございました。」

「まあ、思ったより悪くないやり方だったからな。」

ジキスが澄まして言う。
ルドルスはいつものように無表情だけど、心なしか満足げにメサイアを撫でていた。

「とうとうルコさんがユーリスフレッド様に告白するんですね……。」

ティモルが頬を少し紅潮させて言う。

ティモルや友達がユーリスのファンだと言うのでもし嫌なら協力しなくてもいいように、書庫の整理が終わった後に自分がしようとしてることは伝えてあった。
それでも手伝ってくれるという返事に、ファンといっても憧れみたいな感じで俺みたいな恋愛感情じゃないんだと分かって少し安心している。

「はい。皆様のお気持ちに報いるためにも、もう一度自分の気持ちをきちんと伝えます。」

「ルコぉ、もし振られても学園辞めないでね!」

ミレーユががばっと抱きついてきた。
この2週間、ミレーユ達と毎日作業する間に他愛もない話をしたりしてみんなすっかり気の置けない存在になっていた。
前世では学校で友達を作るなんて当たり前だったけど、村を離れてからずっと働いていた今の自分にとってそういう出会いは貴重だったと改めて噛みしめる。

「ありがとうミレーユ。俺も、もしそうなっても続けられたらいいなって思う。」

初めは成り行きで来た学園だったし、本来入学できる立場じゃないから辞めることになっても仕方がないって思ってたけど、やっぱりここで目にする守護獣の世界はすごく面白いんだ。

「いや、ないだろ。」

横からジキスが目を細めて言う。
ルドルスもうんと頷いた。

「確かに坊っちゃまにしてみたら袖にした使用人が身の程知らずにいつまでもうろちょろしてたら目障りかもしれませんが……。」

「……本気で言ってるのか?」

流石にそこまで貴族のジキスに言われると非常識なことを言ってると思い知らされて自信がなくなってくるな。

「もちろん、坊っちゃまが私が目障りで去れというならそれは受け入れます。」

「はあ?」

「おいガーデンシア。何か話がおかしい。」

ルドルスが俺とジキスの会話に割って入った時、乱暴に書庫の扉が開いた。
見やるとティモルと一緒に書庫整理を手伝ってくれたつり目の小柄な生徒、ケニー・ローズワートが中に飛び込んでくる。

「どうしたのケニー?」

ティモルが目を丸くして尋ねた。

「ゆ、ユーリスフレッド様が王立軍に10人抜きをぶちかましてますぅ!」

息を荒げながら叫ばれた言葉に、その場の全員の目が点になった。
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