【R18BL】稀代の龍葬騎士長がコブ付き令息に捧げる必死の求婚

ナイトウ

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僕の型を見た教師は、間髪を入れず言った。

「とんでもない!素晴らしい型ですよマルクザーク様!」

そんな僕たちの様子を見て他の生徒はこっそり笑ったり呆れた顔をしている。
……まあ分かってはいた。ここでこの教師の対応を責めたらまた面倒そうだから、僕はそれ以上教えを乞うのをやめた。

仕方がないから訓練後、校舎裏の少しひらけた場所で自主練をすることにした。
色々試してみるけど、やっぱりしっくりこない。

「うぅ、これじゃ実践だと次の踏み込みに繋げられないだろうな……」

焦りに思わずひとりごちる。

「体を捻るとき右肩が、後ろに行きすぎてる。」

声に振り返ればゾックだった。
いつからいたか分からないが、少し離れた所でこちらを見ている。

「なっ、何で門番ごときにそんなことが分かるんだ!あっち行け!サボるな!!」

恥ずかしさに思わず怒鳴りつける。
訓練で出来なくてこっそり練習してるのを見られた。
うまくいかなくて愚痴をこぼしてるのを見られた。
無様すぎて顔から火が出そうだ。
幻滅されたかもしれない。
……いや、別にこいつにどう思われても構わないけど。

「しかし……」

食い下がってくるゾックを無言で睨みつける。
どっかに行ってほしい。これ以上こいつに格好が悪いところを見られたくない。

「……そうだな。悪かった。」

ゾックは物分かりよく去っていった。
本当に嫌なやつだ。門番のくせに偉そうに。
……気にかけてくれたんだろうか。別に嬉しくないけど。
肩か。言われてみれば、下半身の重心ばかり気にしてその辺意識しなかったな。

言われた通りに肩が後ろに行きすぎないように気を付けながら何度か試したら、どんどんしっくり来るようになった。
ま、まあ、どうせたまたまだろう。


それからますます、僕はゾックに会うたびに憎まれ口を叩くようになった。
あいつはちょくちょく門番の仕事をサボって校内をうろつくから、最近は姿を見かければ走って追いかけて注意している。
別に、あんな奴が怠慢で首になってもどうでもよくて、この僕が通う学校の警備が疎かになるのが許せないだけだ。




「黒炎のドラゴンの討伐隊にですか?」

ある日の授業終わりに学校の担任に呼び出されて、討伐隊参加演習に選抜された事を知らされた。
黒炎のドラゴンは、人間に害をなすドラゴンの中でも最強種だ。国の1番近くにある西の龍郷で最近目撃され、近隣の田畑や家畜の火災被害が出ている。
このまま人里に慣れてしまえば、街や村が焼き払われるのも時間の問題だった。

「隊を率いる騎士長からの指名だ。よかったな。」

「え!?騎士長の!?」

うわずった声でした質問にそう返されて、頭が軽くパニックになった。
騎士長は、総司令と並ぶ龍葬騎士軍のツートップだ。
総司令官が事務方のトップなのに対し、騎士長は実戦で功績を多数あげた1番強い騎士が任命される。

今の騎士長、ゾクライア・フェルデンは歴史的にも稀に見る龍葬騎士で、歴代最年少で騎士長になった。その実力は50人がかりで行うレベルの討伐を剣と盾の軽装備で単独で達成してしまうほどだ。
しかも10年前、本人が若干14歳の時である。

実は、その話を聞いて僕は龍葬士を目指すようになったのだ。
だって凄いじゃないか。
僕と二つしか違わないのにそんなに強くて、ドラゴンと対等に渡り合うなんて。
そんな風になりたいって思った。
僕は結局大学を出るまで騎士学校に入るのを許してもらえず、スタートは大分遅れたけど、頑張って今から騎士長に少しでも近づくんだ。

騎士長はこの部隊では珍しく僕と同じ貴族の出らしいけど、会ったことはない。いくら社交界に呼んでも来ないと父さんが嘆いていた。
本人が嫌なら仕方がないと思う。
僕もわざとらしく誉められたりおだてられたり、居心地悪くてデビュー以来出てないから気持ちは良く分かる。
それにきっとすごく忙しいんだろう。
何せ騎士学長も兼任してるのに入学式すら顔を出さなかった。学校に通い始めて半年、未だ姿を見たこともない。
偉そうに前に出ようとしないところも硬派でいい。
今は会えなくても、立派な龍葬騎士になって僕から会いに行くんだ。

誰も足元にも及ばない突出した力を持つ孤高の騎士。
何て格好いいんだろう。
どこぞの才能を飼い殺している堕落した門番とは同じ名前でも月とスッポンだ。
だめだ。あんなやつを連想するなんて、騎士長に失礼すぎるな。

「ははははい!騎士長のご期待に添えるよう全力で頑張ります!!!!」

「……ああ、まあ、守備よくな。」

担任の言葉が少し歯切れの悪いことに若干引っかかりを覚えたが、討伐隊に参加できる興奮ですぐに頭からかき消された。

教員室を出ても足元がフワフワしていて、思考が定まらない。
どうして騎士長は僕を選んでくれたんだろう。
正直なところ、学校での訓練成績は中の上くらいで、自分より出来る生徒はたくさんいる。
ひょっとして、自分が侯爵家だから忖度したのか?
父さんがいくら声をかけても袖にするような人が、そんな事をするとはちょっと思えないけど。
まあいいか。家が有力なのも体が大きいのも同じ素質だ。チャンスをしっかり掴めばいい。
現場で力を発揮できれば、それだけ夢に近づく。

最後は廊下をスキップしながら寮に戻った。
途中正門を通ったらゾックはいなくて、またサボってるみたいだったけどそれも許してやった。


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