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しおりを挟むぜ、全然話すチャンスがない……。
1番先頭を飛ぶ騎士長の背中を見つめながら心で頭を抱えた。
討伐隊の出発当日、龍葬騎士は1人1頭、見習いは2人1頭で小飛竜に乗って出発した。
集合からずっと隙を見て騎士長に話しかけようとしてるけれど、騎士長の周りには常に誰かがいて熱心に話しかけており、見習い無勢の僕が割り込む余地は見つからなかった。
離陸してしまえば空の上で隊列を編成して飛ぶからなおのことだ。
「はぁ….。」
「大丈夫ですかワイスさん。顔色悪くないですか?」
僕の前で操縦役をしているペアの生徒が振り返って聞いてくる。
名前は……なんだっけ?
「緊張でちょっぴり眠れなかっただけ。大丈夫だからちゃんと前見て。心配ありがとね。」
気を抜いてはダメだと思い直し、姿勢を正す。
「な、何かワイスさんと話すの初めてだけど印象違いました。美人だけどもっとなま…厳しい人かと。」
生意気って言おうとしたなこいつ。
同学年ってことは僕より年下のくせに。
「別に。君には絡まれたり意地悪されてないもん。」
「そうですね。あ、もし辛かったら俺に掴まってくださいね。操縦の交代も無理しないでいいんで。」
え、何こいつ?優しい……。
思えばこんな風に同級生と話すの初めてだな。
友達作りに来てるわけじゃないから自分からは話しかけないし、向こうから来るのは揶揄ってきたり胡麻擦ってくる奴らばっかりだし。
小飛竜での飛行、高さが怖くてちょっと苦手だから掴まれるのは助かるな。
「じゃあ、ちょこっとだけ掴まらせてね。」
「は、はい!どうぞ!」
そんなに大きな声出さなくてもこの距離なら聞こえるけど。
後ろから少し体を寄せて両腕をお腹に回す。
触れた時に相手の体がピクッと跳ねた。
「ごめんね。こしょばい?」
「大丈夫です!」
さらに声がデカい。でもいいやつだな。
名前……聞いても変じゃないかな。
「ねぇ……」
相手の顔を見ようと少し体を横に倒し前を見た。
すると、こちらをじっと見てくる視線が目に入って思わず言葉が止まった。
騎士長が振り向いてこっちを見ている。
え、怖。
遠目なのにはっきりわかる。いつものヘラヘラ笑った顔じゃない、睨むみたいな。
やっぱりこの遠征で僕に仕返しするつもりなのかな!?
「前方に湖あり!休憩のため下降!」
前から伝言が聞こえて間もなく隊列は下降体勢に入った。
僕は騎士長の表情が気になってペアの人の名前を聞くなんて事吹っ飛んでしまった。
休憩中も、騎士長に話しかける機会は全然来ない。
仕方がないから湖で顔でも洗ってサッパリすることにした。
湖の畔に近づけば、もう集合が近いからか他の人はいなかった。
屈んで水面を掬い、ぱちゃぱちゃと顔に水をかける。
軽く水気を手で払って、余計な滴は顔をプルプルして飛ばした。
「おはよう、マル。元気か?」
聞き慣れた言葉に振り向くと騎士長が立っている。
一気に心臓が跳ね上がった。
おちつけ僕。今が謝るチャンスだ。
謝るぞ。精一杯の誠意で……!
「なっ、何で門番とか嘘ついたわけ!?最低なんだけど!?」
なにやってんだぼくぅぅぅ!
でもこの口が、騎士長を見ると悪態を吐くようになってしまってるぅぅぅ!!
「すまなかった。マルに気楽に接して欲しくて……。騙して悪かったが、マルともっと仲良くなれたから俺は後悔してない。」
仲良くした覚え無いけど!?
すこぶる認知歪んでない!?!?
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