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しおりを挟む結局、部隊は引き返す事もなく出発した。
しかも何故か、僕はゾックの小飛竜に同乗している。
子供か女性みたいに前に座らされ、背中には包み込むようにゾックが貼り付いている。
何故だ。って、ペアの研修生のところに戻ろうとしたらゾックが許してくれなかったからだ。
「ゾック、流石に周りに示しがつかないから、僕は研修生用のドラゴンに乗るってば。」
周りの好奇の視線が痛くてしつこく主張する。
「駄目だ。マルは隙が多すぎる。ペアの相手が衝動的に襲いかかってきたら危険だ。」
「そんな誰彼構わず喧嘩しないもん。ペアの人いい人そうだったし。」
「ままままマルはあの男がすすすすす好きなななななのか?」
「ちょっ、大丈夫?痺れ茸でも食べた?」
「すすすす好きなのかっ!?」
「好きも何も、さっき初めてちよっと話したくらいなんだけど。」
「マル、私とももっとお話をしよう。」
「いや、唐突だし遠征中だしあんた隊長だし、私語は慎しまなきゃ。」
「マルはあんな奴より私が好きだ。そうだろう?」
「はっ、はぁ!?何言って……」
怒鳴りつけようとしたら、隊の右から慌てたように飛んできた騎士がゾックに告げた。
「逃げてきた村人からの情報です!黒炎のドラゴンがコルムの村を焼き払っているとのこと!」
とたんに隊がざわつきだした。
とうとう人的被害がでたんだ……。
一気に場に緊張感が走る。
「分かった。」
ゾックが低い声で短く答え、僕をみた。
「隣の小飛竜に移れるか?」
それを聞いてはっとする。
「だっだめだ一人で行かせない!あんた丸腰なんだよ!?」
そう言って首根っこにしがみついた。
僕はゾックの戦い方をよく知ってる。
彼以外の人員はほぼ保険で、実際はゾックが殆ど一人で戦っているんだ。
それで負け無しだから、部隊も悠長に見習いを討伐に連れて行ける。
「マル、大丈夫だから。」
「だめだってば!」
僕はゾックにしがみついた。早く行かなきゃ村が……って頭では分かってるけど、ゾックをこのまま行かせるわけには。
「ふむ、マルが私から離れたくないというのなら仕方ないな。ちょっと怖いと思うが、頑張るんだぞ。」
心なしか嬉しげな声がした後、体にぐんと負荷がかかるのを感じた。
ゾックが僕を庇うように抱き込みながら小飛竜を爆速で飛ばせたのだ。
「は?え?」
混乱しながらも体感したことの無い速度に思わずゾックにしがみつく。
「ドラゴンにたどり着き次第突撃してしとめる。しっかり掴まっていろ。」
風を切る音にかき消されないようにゾックが僕の耳元で告げた。
冗談だろ!?
こんやなつ見捨てておけば良かった……と後悔するがここで抗議してゾックを足止めすれば襲われている村の被害が広がるかもしれない。
こんなに自信満々なんだ。きっとステゴロでも何か勝算があるんだろう。
常識で考えたらあるわけないけど。
「いたぞ。落ちるなよ。」
その言葉にどうにか首をひねって正面を向けば、空に羽ばたく黒くて巨大な龍影が視界に入る。
黒い炎を吐き、眼下の集落を焼き払っていた。
恐ろしさに息を飲む。
でも、ぁ、あれ……?あのドラゴン、何か……。
考える時間もなく、更にゾックは加速した。
距離が縮んでドラゴンが近づく自分たちに気付く。
こちらに向かって炎を吐いた。
それをひらりと交わして間合いを詰めるゾック。
炎が空気をあぶり、熱された肌がチリチリした。
ドン!
何かが破裂したと思ったが、それはゾックがドラゴンの懐に僕を抱き込んだまま小飛竜でつっこみ、喉笛に拳をめり込ませた音だった。
竜の喉の真ん中には逆鱗と呼ばれる鱗があり、竜を仕留める急所だ。
しかし、普通は素手でぶち抜けるものじゃない。
大型竜となれば、何人か係りで地道に大剣で切りかかるか、大砲で打ち抜いてやっと屠れるようなもの。
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