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しおりを挟むしかし、ゾックはそれを渾身のアッパーカットで砕き、肉まで貫いた。
そのまま小飛竜を飛ばしドラゴンの首下から離脱する。
ドラゴンは喉笛から鮮血を散らしながら落ちていった。
その刹那、遠ざかる竜と確かに目が合った。
悲しげで、何かを言いたげな。
「ぞっ、ゾック!ドラゴンの所に行って!」
思わずお願いする。自分でも自分の言葉の意味は分からない。
でも行かなくてはと強く思った。
「下は燃えていて危険だ。」
「うるさい!良いから行って!じゃなきゃ僕は今すぐ降りる!」
精一杯の力で暴れたら、ゾックは戸惑いながらも降下してくれた。
「……熱が、下がっていくな。」
焼き払われて高温なはずの空間が案外冷えていることに、ゾックか怪訝そうに呟いたけど、そのまま僕を連れて地面におり立つ。
僕はすぐに小飛竜から飛び降りて、横たわる黒炎のドラゴンに駆け寄った。
「まっマル!」
ゾックがあわてて僕を引き留めようとする。
「行かせて!」
ピシャリと言えば黙って一緒についてきた。
それに目もくれず、地面に伏せた黒竜の顔に近づく。
瀕死の竜が、もの言いたげな瞳で僕を見た。
「ねぇ、何か僕に伝えたいの?」
尋ねてみると、瞬きを一つした。
その目元にそっと身を伸ばして触れてみる。
とたんに、僕の体を青白い光が一瞬包んだ。
「マル!」
咄嗟にゾックが僕を抱き寄せて庇う。
けど、危険なことは一切されていない確信があった。
むしろ、何かとても大事なものを託されたのだと分かった。
それが何かは分からないけれど。
そうしてその黒いドラゴンは目を閉じて事切れた。
「マル、大丈夫か?体に異常は!?」
「そんな事より、行かなきゃ。」
「行く?」
「あっちの方。連れて行ってくれる?」
僕がゾックを見上げると、ゾックの少し息を呑んだ気配が分かった。
すぐに軽く頷くと、やっと追いついてきた隊の副長と手短に会話した後、僕を連れて再び飛び立ってくれた。
僕の中に沸いた直感に従って飛んでもらったら、龍郷の麓に行き着いた。
「マル、行くのか?」
ゾックがいつになく真面目に聞いてくるのに頷く。
龍郷は、人間が足を踏み入れてはいけないとされる。
そこは世界でただドラゴンのための聖域とされるだからだ。
「大丈夫。ゾックが入りたくないなら、ここで待ってて。」
「マルだけ行かせるわけが無いだろう。どちらに進めばいい?」
「……あ、りがと。こっち。」
小飛竜で慎重に進むと、直ぐに異常に気づいた。
麓近隣エリアの木々が伐採されて切り株だらけになっている。
「酷いな。人間が龍郷を侵して資源を奪ったのか。黒炎のドラゴンが怒って村を襲うはずだ。」
「前の冬にこの辺は大きな山火事で森林の大半が燃え落ちてたよね。それで、木材が足りなくて冬の準備のためにここから切り出していたのかも。」
まだ実家にいた頃、父さんがそんな話をしていた。
国からもだいぶ国庫から支援を送ったはずだけど、届いていなかったのかな。
「それにしても、中央に無断でこんな無謀な……。人を襲った以上他に道は無かったとはいえ、あのドラゴンには申し訳ないことをした。」
「うん……」
更に奥深くに入っていくと、強く惹かれる方向を感じ取った。
「あっち。あっちだ!」
指差せばゾックがそこに向かってくれる。
「……嘘だろ。」
見えてきたものにゾックが思わず呟いた。
広葉樹の葉っぱで作られた巣の真ん中に座しているのが、夏の晴れた日の空のように美しい青の鱗を持った子ドラゴンだったからだ。
「龍の王……」
言葉にしてみても信じ難かった。
数あるドラゴンで唯一青い鱗を持つ伝説上の存在。
それは龍郷が生み出す人への試練と伝えられている。
龍の王が人を愛せばその世は栄え、憎めば大いなる受難となる、らしい。
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