【R18BL】稀代の龍葬騎士長がコブ付き令息に捧げる必死の求婚

ナイトウ

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その子は下降する僕たちを静かに見つめた。
攻撃したり拒絶する様子が無いので、ゆっくりと巣の淵に降り立ってみる。

顔立ちや鱗の若々しさから子供とわかるが、近付いて比べてみるとゾックの1.5倍は体高があった。
きっと大人になったら相当な大型になるだろう。
その首を、興味深そうに僕に向かって突き出して見つめてくる。

「あ、あの、ひょっとして君のお母さんは黒炎のドラゴンだったの?」

龍の王はまんまるな目で見つめ返してくる。
殺してしまったドラゴンが最後に僕に託したものは、きっとこの子だという確信があった。

「まさか、私は龍の王の親を屠ったのか……」

ゾックの呆然とした声。
親を殺されたとしたら、どれほどこのドラゴンは人間を恨むだろう。そう言外に言っていた。

その様子を見て、何とかしなくてはと目の前の若龍に話しかける。

「ごめんなさい。僕たちは君達の住処を荒らしてしまって、君のお母さんは君を守るために僕たちの住処を襲ったんだ。それを知らずに、僕たちは君のお母さんを殺してしまった。」

僕が告げると龍の王の瞳が悲しげに陰った。

「取り返しのつかないことをしてしまった。けれど、どうか僕が償う方法があれば教えて欲しいんだ。それがきっと、お母さんが僕をここに導いた理由だと思うから……」

僕が言うとのそりとドラゴンが近寄ってきた。
僕を庇って間に入ろうとしてくるゾックをいなしてドラゴンを迎え受ける。

緩やかに頭を下げて近づけてきたので、思わずなでた。
とたんに、僕の手から青白い光が溢れてドラゴンに流れ込む。

「これ、龍気……?」

子ドラゴンを育てるために親ドラゴンが与える気の力を龍気という。
それが、何故か僕から出て龍の王に流れ込んでゆく。

龍の王が心地よさげにそれを受け止めると、次の瞬間みるみる姿が縮んでいった。

「えっ?」

あっという間に、その体は人間の赤ちゃんになりぽてんと巣の中に座り込んだ。
青い髪と瞳の、柔らかそうな可愛い赤ちゃん。

「うー、あー。まん、まんまぁ。」

赤ちゃん特有のおしゃべりをしながらのっそり、足場が悪い巣の中を立ち上がりこちらに歩こうとする。

「あっ、危ない!」

よたつく姿に思わず抱き上げた。
柔らかくて暖かい。
見た目もさわり心地も人間の赤ちゃん。
でも、頭からちょこんと小さい角が生えて
お尻からもぷりんと鱗に覆われた短いしっぽが生えている。

「きゃーあ!」

僕が指先でほっぺにふれると赤ちゃんは嬉しそうに笑った。
龍の王が赤ちゃんになっちゃった。
しかも、僕はこの子に龍気を与えられるらしい。

ねぇ、黒炎のドラゴンさん。
まさか、僕に龍の王を育てて欲しいの?
自分で考えて、なんだかすごいしっくりきた。

「ま、マル、これはいったい……」

戸惑ったようなゾックの声に我に返る。
そういえばゾックがいたんだ。
くるりと振り返れば、大きな体をビクッと震わせた。
赤ちゃんを見せるようにすると何だかオロオロしている。
ちょっと面白い。

「僕、この子育てなきゃ。」

そう告げるとゾックがあんぐりと口を開けた。

「本気なのか?」

「だって、この子まだ龍気が必要なんだ。たぶん、黒炎のドラゴンは僕がそれを与えられるようにして死んだ。それって僕にこの子を託したってことだよ。」

「し、しかし成長した龍の王が私の行いを理解して人を憎むようになれば……」

ゾックが言葉を濁した。
つまり、そうなる前に龍気を絶って殺してしまえば、と思ったんだろう。

「本気で言ってる?」

「嫌に決まっているだろう。まだ無垢な子ドラゴンだ。」

「僕もだよ。だから、人を憎まないように僕が育てる。」

「しかし……」

険しい顔のゾック。でも僕はもう決めた。

「責任感じてるなら共犯になって。この子をきちんと育てるために、必要な時は手伝って欲しい。」

「マルと、この赤ん坊を一緒に育てる?」

噛みしめるように言ってる。
確かに僕1人よりは困った時に頼れる相手はいたほうがいい。
でも一緒に育てるまでは言ってないんだけど。まずは自分の仕事してよ。

「出来ることだけでいいよ。」

「いや、分かった。俺は全てを捧げてマルと赤ん坊を守る。」

ぎゅっと拳を握るゾック。
いや、大げさだな?
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