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しおりを挟む「弟がいるんだ。私が子供のいなかった義両親の元に養子に入った後にフェルデン家に生まれたんだが。」
え、それ中々居心地悪そう。
「へ、へー。それで面倒見てたんだ。偉いね。」
「あの時の私にはそれぐらいしか出来なかったからな。」
「……龍の王、ほら、あの男の名前はゾクレイア・フェルデンだよ。呼べる?」
流れた気まずい空気に思わず話題を逸らす。
「ゾクレイア・フェルデン」
はっきりとした龍の王の口調に、一瞬ゾックと二人で顔を見合わせる。
「マルクザーク・ヴァン・ワイス」
更に、流暢に僕の名前を呼んでにこっと笑った。
さっきまでろくに喋れなかったのに。
「ゾック、この子天才だよ。」
「あぁ、間違いないな。」
確信を持って頷き合う。
「あー、ぼく、は?」
「え?」
「僕の、名前、は?」
「え、えっと……ルクト、なんてどう?ブラウルクト。」
そう答えれば、龍の王は嬉しそうに僕の太股の上でぽんぽん跳ねた。
「僕の名前は、ブラウルクト!」
それからしばらく、僕とゾックでルクトに色々な言葉を教えたらルクトはすぐに覚えていった。
そしてそのうち疲れたのか、ある時本が閉じるみたいにパタっと寝てしまった。
寝てしまったルクトをゾックが寝室に連れて行き、しばらくして戻って来る。
「マルは疲れてないか。」
「あ、うん、まだ大丈夫。あのさ、ゾック。」
1人で考えていたことを切り出す。
「何だ。」
「ゾックが騎士長だから言うけど、僕……しばらく、騎士学校休もうかなって。ルクトの面倒見ながらって無理だと思うし。落ち着いたら、また戻るよ。」
「それは出来ないだろう。」
僕の言葉はすぐに反論された。それにドキっとしながらも、ゾックが僕の事情を知るはずないと思い直す。
「え、で、でも、休学制度あるよね。」
「マルの家が許さないじゃないか。一年で騎士になれなかったら家に戻って文官になる約束だろう。」
「な、何で知って……。」
「……君の家を悪く言いたくはないが、マル、君を騎士にしないように学校に要望がされている。」
それを聞いて頭を殴られた気分だった。
そっか、父さんは僕の夢を認めたんじゃなかったんだ。
「でも、もう一回頼んでみるし……。」
最後の方の声は震えてしまった。
「マル、これは提案なんだが私が後見人になるのはどうだ?そうしたら君は私の庇護下になる。休学も復学も私が認めよう。」
「は?」
突然の提案にびっくりした。
「え、本気?意味わかって言ってる?」
「もちろんだ。私はマルを助けたい。」
いや、これ絶対ゾックは分かってない。
貴族社会でこれだけ歳の近い成人した同性を後見するって、事実上の同性婚宣言だってことを。
社交界にも全然出ないし世間に疎そうだから知らないんだろう。
「私が後見者ってことになれば、2人でルクトも育てやすいだろう?私と住もう。家はもっと広くて立派なところに引っ越すから。」
こいつ、お人よし過ぎないか?悪いやつに騙されない?大丈夫そ?
「ゾックが良いなら、僕はかまわないけど。」
心配になるけど、自分としては願ってもいない提案に乗ることにした。だって、やっぱり僕いつかは龍葬騎士になりたい。ゾックはきっと、ルクトが成長した後に僕が龍葬騎士になって独り立ちしたら後見を解消するつもりなんだろう。
だったらまあ、一時的にゾックと結婚したと思われるくらい構わない。気持ち的にはもちろん嫌だけどね。もちろん。
僕が応じれば、ゾックは安心したような穏やかな顔で微笑んだ。
「では、早速誓約書を作ろう。」
足早に部屋を出て、しばらくして巻いた羊皮紙とペンとインクを持って来る。
それは後見人契約の書面だった。
「へ?何でこんなすぐに?」
「いつか来る日のために用意しておいたんだ。ほら、マルはここにサインしてくれ。」
被後見者の署名欄を指差すゾック。
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