R18短編/転生したら親の顔より見てきた追放イベが目の前で始まった!(もっと親の顔を見ろ)

ナイトウ

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「もう我慢ならん!役立たずな貴様なんか俺のパーティから追放だ!イスバル・アルムスード!!」

ギルドのホールに響く、Sランクパーティリーダーの声。

とうとうきたか、と追放を言い渡されているなろう主人公のスバル君を少し遠目に見守りながら思った。




僕は前世の記憶と意識を持って今の世界に生まれてきた。
農耕で暮らしてる一般的な家庭の三男、ミント・ジョイスとして。
この世界は、僕が大好きだったなろう小説そのものだ。
多分、物語内転生というやつ。
僕にとっては転生ガチャ大当たりといったところだ。

残念なのは、ここが僕の大好きな『○職転生』とか『Re:○○』とかじゃなくて、多分全然知らない作品の中ってこと。
それでもここがまるきりどテンプレナーロッパなので、早々に僕はそれに気付いた。そしてこれから待ってるのは「俺ツエェェ」展開かな?「ハーレム」展開かな?とワクワクしてきた。

しかし、いつか自分が、という勘違いは年を重ねると共に解けた。

僕は多分主人公じゃない。

まず僕には神様に能力を与えられたり賢者に育てられたり、魔法やフィジカルで特にスペックが高いということが無かった。
つまり、僕は最強主人公じゃない。

そうしたら追放モノかな?と適性のあった遠距離攻撃のスキルを活かして弓使いになり冒険者パーティに所属したけど、それが中々いいパーティだった。

パーティはBランクで単独で中堅のクエストを受けたり、上級パーティから外注を受けて高難易度クエストの後方支援をしたりしている。

昔から弓の腕は磨いてきたので、クエストでは手堅い立ち回りが出来て実績も積めた。所属して3年、パーティメンバーからもしっかり評価され信頼されてしまっているので追放の兆しもない。

更に自分が主人公じゃないと確信したのは、1年くらい前から新しく外注をくれるようになったSランクパーティにイスバル・アルムスード君がいたことだ。

彼はもうまさにテンプレもテンプレ。
パーティリーダーの勇者の幼馴染で、荷物持ちのサポーター。無能、役立たずと勇者を筆頭にパーティメンバーからはハラスメントの嵐だけど、黙って耐えている。
外見は黒髪細身の塩顔イケメン。
うーーーん、何度でも言っちゃう。どテンプレ!そう!そういうのでいいんだよ!
あ、スバル君てのは僕が勝手に呼んでる。その方が僕には呼びやすいし。

スバル君に会ってやっと僕は自分がこの世界のモブだって理解した。
そして多分主人公である彼が、いつか追放されてしまうことも。

しかし、その時に自分は無事だろうか?
出会ってまもなくふとした不安がよぎった。

追放ものと言えば「ざまぁ」だからだ。
絶対無くてはならない、追い出したパーティ側の悲惨な没落。

外注をくれるSランクパーティとうちのパーティは仲が良いわけだから、今の僕は下手したら追放サイドのざまぁ対象になりかねない。

没落側が一生の深傷を負ったり命を落とすことすらあるのが「ざまぁ展開」である。
読者をスカッとさせるためなら慈悲はない。

特に僕や僕のいるパーティは物語的にモブだ。
この先スバル君が抜けた後Sランクパーティから外注を受けたクエストでさくっと全滅したっておかしくない。

まずい。どうにかざまぁ回避をしなくては。
そう考えた僕はこの1年しっかり僕なりに対策してきた。

そして今である。
息を呑んでスバル君を見ていると、彼も一瞬僕の顔を見た。
そしてふいっと目を逸らしてしまう。

落ち着け。
大事だぞここから。

まずは、せめて僕たちパーティが追放側だってレッテルを剥がさなくては。
それには今のタイミングで彼を庇うのがいいだろう。

「まっ……!?」

黙ったままのスバル君の代わりに割って入ろうとしたら、僕が所属してるパーティのリーダーに腕を引かれた。
彼の顔を見ると、止めろと目で訴えて首を横に振ってくる。


何でだよ!
なるべくざまぁされポイントが増えないように、今まで自分のパーティにはスバル君の良さを伝えてきたし彼を馬鹿にするような言動は厳しくチェックきてきた。
元々話のわかる人たちだから、きっとスバル君の味方になると思ったのに!

「離してよリーダー……!」

小声で話しかける。

「ミント、頼むから冷静になれ。ここで俺たちが勇者の反感を買うわけにはいかない。」

「っ……!」

リーダーの主張も仕方がないものだ。
現実問題冒険者パーティの仕事は縁故主義な所があり、割りのいい仕事は富裕層や権力者から直受けするか、コネのあるパーティの横や縦の繋がりで受けていかないと中抜きのせいで収益性が低いギルドのクエストばかりになってたちまち困窮する。

腐っても貴族出身の勇者が率いるSランクパーティには高額報酬の依頼が日々寄せられ、僕たちのパーティも助かっている面は否めない。

だからこそリーダーにはスバル君のことを良くフォローしていたし、何だかんだ正義感があるから賛同してくれるんじゃないかって思ってた。

分かってる。彼はリーダーとして、スバル君を見殺しにしてパーティを守る判断をしたんだ。
でも、僕だって3年一緒に頑張ってきたパーティがざまぁに巻き込まれるのは嫌だ。

「出来れば、このままパーティにいさせて下さい。駄目ですか?」

リーダーと無言の押し問答をしていると、スバル君が口を開いた。
ちょっと意外だ。
スバル君は古き良きなろう主人公って感じの、無気力やれやれ系なキャラだから(だがそれがいい)。

いいぞ!今こそ自分がどれだけパーティに貢献してきたか主張するんだ!
頑張れ!無駄かもだけど!

「ふん、今までお前を入れてやっていたのは、俺の乳母の息子だったからだ。義理だ義理。けど、乳母のサリーが死んだ今お前がいる理由は無い。もうお前より料理が上手い後任のサポーターも決まってる。」

「……そうですか。わかりました。」

判断が早い!!!!
Whyなろうピーポーあっさり追放されるの!?

って、追放後に大成功が待ってるからだよな。
そういう物語の都合だよなわかる。
前世の僕だってここで主人公がパーティにしつこく縋り付いたら即ブラウザバックしてる。
流石スバル君お手本のようななろう主人公ムーブ。

……でもこのままじゃ僕たちがざまぁされちゃうよ!

スバル君がギルドから出ていくのを、リーダーの制止を振り切って慌てて追った。

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