【短編】その騎士は隣国に囚われてメス堕ちするか

ナイトウ

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「会議は大丈夫だろうか……」

王は和平案を突っぱねているというし、諭す立場のナタンもいつもより冷静じゃない様子だしで思わず閉まる扉に呟いてしまった。

「悪いようにはしない。あんたとの契約だからな。」

まだ私の腰を抱いているアルドリッヒが機嫌悪そうに言った。

「そ、そうか。すまないな。」

「はぁ……あんた何なんだよ。次から次って周りに目障りなのが沸いてくる。」

「目障り?まさか我が王のことかっ……」

聞き捨てならない暴言に反論する直前、顎を掴まれて唇にキスをされた。こんな風に正面から強引にされるのは、先日射撃訓練を見学した時に小部屋でされて以来だ。
条件反射で相手の体を両手で押し返そうとした所をアルドリッヒの両手に絡め取られて後ろに押される。
ドンッとさっき閉まった扉に両手ごと押し付けられた。
後ろに下がれなくなったせいで更に口付けが深くなり、合わせた口から舌が伸びてきて私の唇を掻き分け歯列をこじ開けてくる。

慣れない事態に頭が追いつかなかったがかろうじて契約のことを思い出し、舌が促すままに口を開けた。

ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぢゅっ……

はしたない水の音が耳に響く。
小説を読んで想定していたよりずっと恥ずかしい音だ。
これがアルドリッヒと私が舌をぐちゃぐちゃに絡めて貪り合っている音か。

胸が苦しくなって、でも口は自由にならないから鼻で浅く息をした。
そうすると鼻腔にアルドリッヒの匂いが広がる。

その中に微かに、女性の香水の匂いもした。

「っ……やめっ……!」

その瞬間思わず指が絡んでいた両手を突っぱねてアルドリッヒを突き飛ばしていた。
自分でも何をしたのか一瞬理解が追いつかなくて、目を丸くしてこちらを見ているアルドリッヒの姿に我に帰る。

これはまずいな。初めてまともに抵抗してしまった。
ワローナ伯爵の仕打ちに抵抗すると、ジャックはいくら懇願しても許してもらえず気絶するまで何度も絶頂させられてしまうのだ。

こちらを見るアルドリッヒがくっと口を引き結んだのを見て、私の胸が期待で跳ねた。

……違う。期待なわけあるか。今のは無し、無し。

「あー……。今日従姉妹と踊る約束してたんだった。俺、戻るから、先寝てて。」

息を呑んで見つめていると、アルドリッヒはぱっと私から目を逸らして言い、扉の前に立つ私を避けて部屋を出て行こうとした。

「おっおい!」

咄嗟にドアノブを隠すように体をずらしてアルドリッヒの進路を塞ぐ。



「貴様は私の乳首をモロ感メスイき乳首にするつもりがあるのか!?」



アルドリッヒが私の言葉にぽかんと口を半開きにしてこちらを見た。
多分私は言葉選びを間違えたのだろうが、口にしたものはもう戻せない。

「俺は、あんたが嫌だと思って……」

「私は誇り高い帝国の騎士だ。どのような事だろうと、一度立てた誓いを違えるつもりはない。見くびるな!」

こちらに問題があるとでも言いたいのか?私はいつだって受け入れるつもりでいたが!?むしろ途中からは待っていたが!?

……いや、今のも無しだ。無し。

「違う。単に俺が、あんたに嫌われたくないだけなんだ。ずっと好きでやっと手に入れた人だから……。」

アルドリッヒが顔をくしゃっと泣きそうに歪めて扉に張り付いている私の頬を指で撫でた。その態度に私の胸もきゅうっと締め付けられるような苦しさを覚える。

「で、ではあのような破廉恥な本を持ち出さなければ良かったではないか!」

恥ずかしさを誤魔化すためにアルドリッヒの行動を責めた。実際変な小説さえ読まされなければ私がこんなにヤキモキすることもなかったに違いない。

「あの時はするつもりだった。本の騎士みたいに気持ちよさそうにしてるところが見たかったから。でも、いざ手に入れてみたら、あんたが好きすぎて怖くなった。俺が触るたびに嫌そうにしてたし。」

「あ、あれは緊張していたんだっ。私だってそんなに慣れているわけではない。」

「そんなに?」

「……実のところ、全く慣れていない。だから触れられてもどうしたら良いか分からなかっただけで、嫌だったわけではない。」

「はははっ、そっか。……ふふ……そっか。」

「何だ。笑うな。」

「ごめん、でも、嬉しいから。」

アルドリッヒが私の肩口に顔を埋めて首と襟の境目に吸い付いた。

「あっ……」

私の上着の胸元をはだけさせながら、現れた首筋に舌を這わせていく。
それがくすぐったいようなゾワゾワするような感覚で思わずアルドリッヒの肩を掴んだ。
またふわりと香水の匂いを感じて手に力が籠る。

「嫌だったら言ってくれ。」

そう耳元で囁いてくるけど、服を脱がせる手は止まらない。

「続けて構わない。」

私はそう言って胸を突き出すようにした。

「駄目だ。何か気にしてる?」

「貴方から……女性の香水の香りがする。」

しつこく食い下がられて、私は躊躇いながら白状した。
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