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「もどせぇ……」
微かに呻きを漏らした所で、自分の意識が戻っている事に気付いた。
「フェン!!」
ぼやけた視界に人の影が映り込む。だんだん輪郭がはっきりしてそれが王子だとわかった。
「おぅ……じ……」
掠れた声しか出なくて、喉がカラカラだと気付く。
同じく気付いたらしい王子が召使いに水を持ってくるように指示した。
「よかった……よかっ、た……」
王子が俺の頬をさすりながらポロポロ涙をこぼしている。
その様子にあのキラキラした華やかさはない。
鼻の頭は赤いし髪は乱れてる。シャツは披露宴用の特注品を着たままだが、その襟や袖はヨレヨレだ。
でも、そんな事はどうでもよかった。
「好き……です。」
泣きっ面の王子にガラガラ声で伝える。
すると、ぶつかるようにキスをされた。
うお、びっくりした。
けどまあ、この国は挨拶でキスするからな。
王子とするのは初めてだけど。
な、何か舌、入ってきたけど。
親愛のキス、だよな……?
それから俺の回復は奇跡と言われ、国に衝撃を与えた。
一度は死んだと言う話まで広がり、死後に復活した神の子ではという噂まで立ってるらしい。
実際、神様のおかげで1日で傷は塞がってたからね。
俺の最初で最期のチートかも。
結果神の子を妻に迎えたとして王子の人気はうなぎ登りだけど、俺は中継ぎな訳で後でちゃんと離婚できるか心配になってきた。
俺としてはずっと王子といられたらいいなって思ってるけどさ。
「和平調印が無事済んでよかったですね。」
いつもの木の下で膝枕しながら王子に話しかける。
俺が刺されたことを王子は相当気に病んでしまい、ロイと王弟を殺すとまで言い切った。
その様子はマジで震えるほど怖かった。普段温厚な人は絶対怒らせちゃいけない。
そんな王子をどうにか説得して、ロイには恩赦、王弟勢力とは和平を約束してもらった俺、人生で割と上位に入るグッジョブだ。
和平交渉の場には俺も同席したけど、10歳上の王弟は何か王子に構われたくて仕方なくて敵対していた感じだった。王子のカリスマもここまでくると弊害な気がしなくもない。
王弟は王子が和解か絶縁して徹底抗戦と申し出たら涙目で和解を選んでて何だか微妙な気分。
俺めちゃくちゃ睨まれたし。
くそ、負けない。
「君のおかげだよ。」
先日の出来事を思い返していると、王子がより磨きのかかったキラキラスマイルで見上げてくる。
「そんな、俺は何も……」
「君さえいればどんな世界でも独りじゃないから。」
うん、ちょっと勘違いしそうになるからやめてほしい。
真っ赤になっていると、王子がぎゅっと俺の腰に抱きついてきた。
しかもか、顔が、俺の股間にっ!
やば、今勃ったら……
「あっ……」
「ふふ、ちょっと反応してる。何で?」
王子があろうことか唇で俺のナニを服の上からハムハムしだした。
ちょちょちょ、王子!?!?
好きな人に刺激されて耐えられる訳もなく素直にムクムクしだす俺の息子。
「っあぁっ……おぅ……じ!?」
「ヴァーノだろう?ほら何で?」
うん。最近そう呼ばれたがるよね。
「ヴ、ヴァーノが好きだから……」
「ふふ、かわいい。」
王子が起き上がって俺の肩を掴み芝生に押し倒した。
「はあ、駄目だ。もう刺客が来ないと思うと我慢できない……」
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