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しおりを挟む果たして、本当にしばらくアマネと会えなくなった。
どうも、療養するお祖父さんの見舞いだけでなく、色々と家や家業のことまでやることが出てきたらしい。
身内が倒れる中やることも多くて心労が重なっているだろうと思い、ねぎらいの気持ちで頼まれたとおり毎日メッセージだけは送る。
いつもは俺が送るとすぐに返信してくるまめな性格のアマネが、ぽつぽつとしか返してこないので相当慌ただしいんだと分かる。
俺の方はと言えば、普段アマネとしか一緒にいないし部活やサークルにも入っていないので完全に暇なぼっち生活になった。
このままではガクチカ皆無で就職に困るぞと言われそうな状況なのは分かっている。でもどこかに一緒に入ろうと誘ってもアマネが嫌がるし、かと言ってアマネを一人置いていくわけにもいかない。
入学直後サークル活動について相談した時、俺の将来はアマネが責任を取るから何もしないで大丈夫と言っていたので、グループ内の子会社で人手が足りないところにコネ入社でもさせてくれるんだろう。
ならいいか、と思って怠惰な方に流されてしまった。
しかし、1人だ。
1人って、こんなに時間を持て余すんだな。
今日の講義は三限までしかなくて、おやつの時間にはもう何もすることが無くなってしまった。
アマネに電話してみようかな、と思い、すぐに忙しいのに迷惑だろうと思い直す。
図書館で気になっている本を読むという手もあるけど、読んでも内容をアマネと議論できないのは味気ない。
いや、俺まじで、アマネがいないと何もできなくなってないか?
ちょっと危機感を覚える。
「よし、超久々にアマネ以外と対戦でもするか。」
焦燥感を打ち消すように呟いて、キャンパス近くの対戦スペースがあるトレカショップを検索して向かった。
アマネ以外と対戦するなんて、中学以来だ。
アマネと中二の時クラスが同じになって仲良くなるまでは行きつけのショップに入り浸って、割とそこではハイランクのプレイヤーだった。
けれど、誘ってもアマネは行きたがらなくて自然と足が遠のいて今に至る。
まあ気持ちは分かる。たまに汗くさいときあるし。
それにアマネはコレクションとしてはともかくトレカをプレイするのはそこまで好きではないのかもと思っている。あれだけ頭がいいのに全然上達しないのもそのせいじゃないかなって。
だってそもそもの発端は、俺がアマネに無理矢理やらせたのだ。いつも女子に付きまとわれてまともな友達も出来ず、盗撮とか尾行とかされて顔色が悪かったたので、オタクになればちょっとは幻滅されて被害が減るんじゃないかと思って。
結局アマネのことを考えながら目当てのショップに着いた。
見た感じ、なかなか悪くなさそうな店だ。
「あれ。」
入る気配もなく店の前で様子をうかがっているような女性に見覚えがあって、思わず声が出た。
相手も俺の声に反応してこちらを振り向く。
さっきまで同じ講義を受けていた同回生だ。
上東まゆさん。
彼女の友達が学期始めに何度か果敢にもアマネに話しかけに来て、その横にいたから見知っている。
アマネが俺と付き合っているといつもの嘘を吐いてからは同じ講義を受けるだけになったけど。
透明感があって顔立ちは派手な感じではないのに華があって、端的に言ってすっごく俺のタイプなんだ。
アマネに興味がなさそうなのも、アマネのおまけとみなされがちな俺にもちゃんと挨拶してくれたまともさも印象が良い。
こんな所で会えるなんて。少しうれしい。けど、どうしたらいいか分からない。女子となんて、中学以来まともに話してないし。
「あ、えっと……店、入るから……」
下を向いて目をあわさないようにボソボソと喋る。
最悪だ。せめて挨拶しろ俺。
「こんにちは。佐竹君だよね?私、同じ大学の上東です。さっきの講義、私も受けてるの。」
「あ、うぁ、う………ん。」
視界の隅で彼女が笑いかけてくれてるのがわかる。知っている、と言いたいのに言えなくてもごもごしてしまった。
普通に会話しろよ、俺。まじでキモいやつじゃん。
「入るの邪魔してごめんね?ここよく来るの?」
「あ、いや、違う。初めて。」
1人でトレカショップに入り浸る陰キャとか思われたくなくてきっぱり否定する。
「そうなの?私ポムカってのをやってみたくて来たんだけど、1人だとちょっと入りづらくて。」
「そう。」
「佐竹君よく講義室で触ってるやつ、ポムカだよね。」
「うん。」
って、誘えよ俺。これ、一緒に遊べる流れじゃん。つか向こう誘い待ちじゃん。
俺のこと大学で見てたんだろ。超脈ありじゃん。
でも、違ったら?俺から誘ってキモがられたら?
「……あのー、よかったら、一緒に入っていい?」
「うん、まぁ。」
向こうから言われて、ちょっと頭がパニックになる。え、誘ってくるってことはやっぱり俺に気があるの?
「えと、それって大丈夫ってことだよね?」
すこし強めに確認されて、更に慌てる。変な返事をして引かれたのかもしれない。
「はい、大丈夫です。」
急いで中に入り、内側からドアを押さえて上東さんが入ってくるのを待つ。
「ありがとう。」
上東さんは俺の前に来ると、目を見てにこっと笑ってくれた。か、かわいい……。
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