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しおりを挟む「もしもし?アマネ?どうかした?」
周りの男がチラチラと上東さんを見ている中離れるのも憚られ、席で小声で対応する。
「こっちのセリフだよ。やっと時間できたから電話したのに、なんで出てくれないの?今日のコマは終わってるよね?俺、ノリちゃんと話したいのに。」
アマネがしおしおの声で抗議してくる。疲れが溜まってるんだろう。ちょっと申し訳ない気持ちになった。
「ごめんって。お疲れ様。でも今用事してて。」
「用事ってなに?今外にいるよね?」
なんで分かるんだ。エスパーか?
「外だよ。トレカショップに遊びに来てる。」
「……」
「アマネ?」
「デュエルしたのか、俺以外のやつと……」
やたら低い迫真に迫った声で馬鹿みたいなこと言い出した。ちょっと同情して損したな。
「ばか。ミームが古いって。ふざけたいだけで用事がないなら今手が放せないし切るぞ。終わったら連絡するから。じゃあな。」
「あっ、やだ、ノリちゃんまっ……」
通話を終わらせて、マナーモードにした後にアマネの更なる着信を無視して電源を切った。
「大丈夫?今の鷹槻(たかつき)君だよね?」
上東さんが心配そうに尋ねてくる。
「うん。ここで通話するのもよくないから。続きしよう。」
俺が促しても、上東さんは手札を束ねて持ったまま動かない。
「……前から思ってたこと、失礼かもしれないけど、聞いてもいい?」
こちらを窺うような眼差しにドキドキする。
「なに?」
「佐竹君と鷹槻君って、本当は付き合ってないんじゃないかなって。」
まっすぐ目を見て言われて、とっさに反応ができなかった。
「え、なんで……」
「いや、佐竹君見てて、何となく……」
俺を見てて?付き合ってないって分かった?
……ってことは、上東さんこそがアマネが言っていた嘘を見抜いて俺だけを好きになってくれる女の子なんじゃないか?
「……あ、えっ……」
どうしようどうしようどうしよう。顔が熱くなってきた。
「ごめん、私なんかが口はさんで良いことじゃなかったね。つづき、しよう?」
俺はふぐふぐ言いながら頷くしかできなくて、しどろもどろで上東さんにゲームのルールを何とか教えた。
「今日はありがとう。助かっちゃった。佐竹君がいて良かったよ。」
ショップから駅に向かう帰り道、上東さんが笑顔で言う。可愛い。やっぱこれ、俺に気があるよな。
「いや、またいつでも教えるし、聞いて。」
俯きながらボソボソ答える。ここでスマートにまた遊ぼうって誘えたらな。
「鷹槻君が落ち着いたら、三人でデュエルするのも楽しそう。」
プレイの合間にいつもはアマネとばかり遊んでいることやアマネが今家の事情で忙しいことを話したからか、上東さんがそんな風に言った。
「うーん、アマネはいいよ……」
あいつ、本当俺以外とデュエルしたがらないからな。弱いくせに負けるの嫌なんだろうから、万一初心者の上東さんに負けた日には面倒くさいことになるのが目に見えてる。
「そう?でも、鷹槻君がいた方が佐竹君はいいのかなって……」
上東さん、なんて気が遣える子なんだ……。俺なんていつも周りにアマネのおまけみたいな扱いされてるのに。
「大丈夫。あっ……と、アマネと俺……その、付き合って、ない、から。」
おれは思い切ってそう言ってみた。
上東さんのくりくりした丸い目が更に丸くなる。
「あ、そうなんだ。やっぱり。」
上東さんがあっさりと受け入れてくれる。
「うん。そうしとかないと、女……の人が、アマネにしつこいから。」
俺の説明に納得したのか、上東さんは小さく頷いた。
「佐竹君、嫌じゃなかったら連絡先教えてもらってもいい?また今度ポムカの練習付き合って欲しい。」
「え、あ、は……うん。」
慌ててスマホを取り出す。
電源を入れたらアマネからの着信歴が100件以上残ってた。
「ひえ。」
「どうしたの?」
「あ、いや。」
「ウィンスタでいい?」
上東さんが提案してきたアプリは、大学生が使うものの中では一番陽キャ系のSNSだった。
そんなもののアカウントを俺が持ってるわけ無い。
「使ってない。あ、えと……Wは?」
唯一持っている治安悪めのオタクご用達SNSを代案として出してみる。
「WってSNSがあるの?ごめん、分からなくて。」
「ううん。」
この世にWを使わないルートって、あるんだ……。
「じゃあ……」
上東さんが挙げてきたのはSNSではなく大手メッセージアプリで、俺は人生で初めてクラスのグループトーク以外で女の子とトークのやりとりをした。
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