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しおりを挟むその日は帰ってからも上東さんとのトークルームをながめてはニヤニヤして、気がついたら寝ていた。
『佐竹君、私佐竹君のことが好き。』
目の前の上東さんがはにかみながら告げてくる。
『そうなんだ。じゃあ付き合おうか。』
余裕のある態度で告白を受け入れれば、上東さんが笑顔で抱きついてくる。
やっぱり女の子だな、やわらか……くない。
なんか、固い。
しかも、俺に被さってくるくらい体がデカい。
『ノリちゃん、大好き』
声が太い、っていうか、アマネの声だ。
なんなら今俺に抱きついてきてるのもアマネだ。
「はっ!」
とんでもない夢に目を覚ませば、現実でもアマネが俺に抱きついていた。
「わ、アマネ!?」
俺の部屋にいるはずの無い人物が目の前にいて思わず叫びながら跳ね起きた。
多分お母さんが勝手に招き入れたんだろう。
「ノリちゃんおはよう。昨日何してたの?何で電話くれなかったの?待ってたのにさ。」
そういえば、架け直すって言って忘れてた。
「ごめん。ゲームしてたら忘れた。」
俺が適当に言い訳すれば、アマネがみるみるうちにぷくぅっと頬を膨らませた。
まずい、完全に拗ねてる。こうなると面倒なんだよな。
「本当にごめんってば。家のこと落ち着いたから遊びに来たの?ポムカするか?」
「遊びたいけど、もう戻らないと。」
アマネが残念そうに言う。
そういえば、今週はずっと大阪だって言ってたな。
なんで俺んちいるんだ。
「あれ?今大阪行ってるんだったよな。」
「うん、今日も午後は大阪で会合。ノリちゃんから連絡来ないから、新幹線始発で帰って来た。」
「ええ!?」
「顔見れて嬉しい。」
へへっと笑うアマネに、流石に驚きを隠せない。
「えーっと、ありがとうな、忙しいのにわざわざ来てくれて。」
これはありがとう案件なんだろうか。全然分からない。
「ううん、俺が会いたかっただけ。……ね、ハグしていい?」
「えっ!?……まぁ、いいけど。」
突然のよくわからないリクエストを特に断る理由もないかと受け入れれば、正面に座ったアマネが抱きついてくる。
「あー……癒される。」
俺を抱きしめながら呟くアマネ。
「お前本当に人肌好きよな。」
「うーん……うん。」
「今は色々大変だろうけど、頑張れよ。」
背中をぽんぽん叩いてやる。
「ノリちゃん……キスしていい?」
「ばーか。良いわけないだろ。ふざけんなって。」
そんな冗談を言う元気があるならまぁまだ大丈夫だろ。
玄関まで見送る途中、状況が落ち着くのにまだあと1ヶ月はかかるだろうと聞いて、引き続きのぼっち生活を覚悟した。
それからしばらくして、講義の終わりに上東さんに誘われてポムカをする事になった。
トレカショップだとじろじろ見られて落ち着かないということで、ピクニックを兼ねて公園に行かないかって。いよいよこれはデートだろ。
日にちは次の日曜日って事になった。どうしよう。待ち遠しいけど、どんな準備したらいいんだ。
とりあえず着ていく服か……。
その日の夜クローゼットをあけて持っている服を見る。
アニメのTシャツに、お母さんがセールで買ってきたチェックのシャツ。中学生の頃から履いてる、かかとがほつれたGパン。
うん、これはだめな気がする。
明日講義が終わったら、駅ビルのメンズフロアに行こう。
そう決めた次の日、早速駅ビルに行った。
滅多に訪れない場所をキョロキョロ見回して、マネキンが着ている良さげなシャツにすすっと近寄って値札を見てみる。
は?1万2千8百円?シャツ一枚で?
今俺の財布には、貯めたお年玉を崩した2万円が入っている。
これで全身コーディネートしなくてはいけないのに、シャツだけでこんなにしたら足りるか?
念のためズボンの値札を見ると、案の定そっちは2万円くらいする。
バイトとかしてればお金もっと使えたのにな。
けど、俺がバイトを始めようとすると、遊び相手がいなくなるのを嫌がったアマネが俺の口座に勝手に金を振り込むから無理だったんだよ。
「何かお探しですかぁ?」
「ひっ……」
ショップの店員さんに声をかけられる。
ピカピカな外見の、オシャレなお姉さんだ。
正直言って嫌いなタイプである。
俺のことチー牛って陰で言ってたクラスの女子がこんな感じだったから。
「いや、あの……」
どうする?このまま逃げるか?
「そのシャツ新作なんですよ!私もすっごいかっこいいと思っててぇ、良ければお試しされます?」
たたみかけられて逃げ辛い。ここは正直に話すか。
「あ、いや、高くて、買えないので……。」
こう言えば、ケッ、しょぼい客だって手のひらを返すはずだ。このタイプの女は。
腹が立つが今は逃げるために仕方がない。
「そうだったんですね。確かに、これうちのラインでも高い方なんですよ。ご予算あるんですか?何用の服お求めですかぁ?」
あれ、以外と話聞いてくれそうだ。
「あの、デートで、服欲しくて。全身で2万円くらいって、無理です……よね?」
「えーっ!めっちゃキュンですね!もしかして初めてな感じですか?」
「は、はぁ……。」
「待ってて下さい!予算に合うアイテムお持ちしますね!」
お姉さんがキビキビと店内に入っていった。
これ、断れないやつかな……。
そう観念しながらついて行こうとしたら、着信が入った。
アマネだ。
「ノリちゃん、元気?あれ?今外?」
だから、何で分かるんだ。
「うん、買い物しにユミネに来てる。」
今いる駅ビルの名前を言えば、アマネから「珍しいね」と返ってくる。
「俺もノリちゃんとショッピングしたい。ね、何欲しいの?俺が送っておくから、今すぐ帰ってよ。そんで、今度別の日に俺といこ?」
「ばか言うなって。アマネが欲しいものがあるならその時は付き合うよ。あ、じゃあまたな。」
お姉さんが服を持ってこちらに来るのが見えたので、すぐに通話と電源を切った。
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