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しおりを挟むお姉さんは本当に親切で、最初に見たシャツの半分くらいの値段でセンスの良さげなシャツを選んでくれた。
しかも、それに組み合わせて着るズボンと靴を、もっと安い別のファストファッションブランドのオンラインカタログから選んでくれて、商品の写真まで見せてくれたのだ。
「ありがとうございます。予算よりだいぶ安く揃います。」
俺がお礼を言えば、お姉さんはずいっと身を乗り出してきた。
「それでですね、その残りのお金で髪切りませんか?私の知り合いがやってる美容室のカットモデルなら、予算足りるので紹介します!」
「え、そんな……申し訳ないです。」
「いえ、絶対ヘアセットも必要です。日曜日までに予約の空きがあるか、電話だけでもしてみませんか?」
「あ、じゃあ……お願いします。」
押しに負けて承諾したら、お姉さんが素早く電話をかけた。少しの通話の後、「ちょっと遅いけど明日の18時はどうですか?」と言われて頷く。
美容室の詳細を聞いて、お会計して、最後に頑張って下さいね!とガッツポーズされて送り出される。
すごく、いい人だった……。
最初勝手に苦手に思って申し訳なかったな。
思えば俺をチー牛呼ばわりした子も、根は良い子だったと思う。
けど、彼女はアマネが好きで、何とかアマネと仲良くなろうとしたけどアマネの態度は冷たくて、その挫折感でアマネと仲がいい俺に当たってしまったんじゃないかと今なら想像できた。
「俺ってアマネと一緒にいすぎるのかもな。」
思わず小さな声に出ていた。
ずっと二人だけで連んで、好きなことだけして、狭い世界で他人を勝手に悪者にして憂さ晴らししている。それってアマネにも良いことじゃない気がした。
スマホの電源を入れたらまたアマネから鬼のように着歴が残っていたけど、俺は折り返さなかった。
『アマネ、俺たちちょっと距離をおいた方がいいと思うんだ。』
思い切って目の前のアマネに言ってみる。
『何で?恋人の振りはどうするの?』
アマネが不安そうに返してきたので、安心させるように笑った。
『もう俺たちも周りも中学生じゃないんだし、アマネがひどい目に遭わないもっといい方法があると思う。』
『無理だよ。嫌だ。』
首を横に振りながらアマネが抱きついてくる。
『でも、アマネの為にもなると思うし。』
そう言ってもアマネは首を横に降るばかりだ。
「ノリちゃん、俺から離れないで。」
ぎゅうっと腹を腕で締め上げられて苦しい。
ぐ、ぐるし……
そこで目が覚めたら、案の定アマネが抱きついていた。
俺のあか抜けない部屋に場違いなまでの洗練された顔と目があう。
「ノリちゃん、おはよう。今日も会いに来ちゃった。」
呑気に俺にしがみついてふにゃふにゃ笑っている。
こいつ、一昨日から仙台にいるんじゃなかったか……?
「おはよう。今回もすぐに戻るのか?」
「うん、今日も仙台で予定があるから。何で?」
「少しアマネと話したいから。」
「なになに?まだ出なくて大丈夫だから話そ、ノリちゃん。」
アマネが嬉しそうに顔をのぞき込んでくるから、あやすように頭をなでた。
「俺さ、最近アマネが忙しくて帰って来ないから、結構1人になる事多くてぼっちなんだよね。」
「それは……ごめん。寂しい思いさせて。」
「いや、家のことだから仕方ないし、応援もしてるからそれは気にしないでいいよ。でも、今の俺の生活アマネばっかりだからやっぱりもっと他に色々な繋がり作ろうかなって。」
「え……」
アマネが俺の顔を見つめてきた。
その表情は引き攣っていて、少し青ざめている。
「あのさ、本当すぐ、あとちょっとで落ち着くから大丈夫だよ。」
「そしたらアマネも一緒にもっと世界広げようぜ。少し遅いけど、サークルとかバイトとかさ。今のうちにしっかり友達作るのはありじゃないか?きっと大学出たらアマネもっと忙しくなるだろ?」
頭をなでていた手を背中に回して励ますようにさする。
何か言いたげに見つめてくる顔を見つめ返せば、はぁ、と息をはいた。
「……分かった。ノリちゃんがそう言うなら、一緒にやる。だから始めるのは絶対俺が戻ってからにしてね。」
分かったよと約束をしたあと、アマネは早々に戻って行った。
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