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しおりを挟むいよいよ日曜日、約束の時間よりだいぶ早く待ち合わせ場所の公園入り口に着いた。
待ってる間つい今日のいでたちを体をのぞき込んで確認したり髪をいじったりしてしまう。
お母さんは金曜日に髪を切って帰った後に目を丸くして、「アマネ君へのサプライズ?」なんてとんちんかんな事を言っていた。
確かに、お母さんが知ってる俺の交流関係はアマネだけだけどさ。
訂正のために日曜日にデートすると言えば、「貴方がわざわざそんな風に言うのは珍しいわね」なんて言って臨時のお小遣いをくれた。
言うのが珍しいんじゃなくて、デート自体が初めてなのは格好悪いから黙っていた。
しばらくしたら、もうすぐ着くと上東さんからメッセージが来て、間もなく姿が見えた。
カジュアルなGパンに俺が知らないキャラクターのプリントが入ったトレーナー、足元はスニーカーだ。
これはこれでラフで可愛いけど、デートなんだからもっとこう、女の子らしい服とか。シートに座るからスカートは難しいにしても。
ちょっと残念に思っていると、目の前まできた彼女が目を丸くする。
「え、佐竹君?その格好、なんか、いつもと違うね。えっと、髪も切った?」
「あ、まぁ……」
上東さんからは、それ以上の言及がない。変な見た目なのかな。ちょっと焦る。
「えっと、似合ってるけど、……まさか今日の為じゃ、ない、よね?」
「え、いや………」
「あっ、だよねぇ!ふふ、よかった。」
よかったってどういう意味なんだろう。
ちょっと引っかかりながらも、入園チケットを買って入り口ゲートをくぐる。
上東さんが広場に行こうというので一緒に向かった。
歩きながら、お昼はサンドイッチを買ったよと報告を受ける。
上東さんの練習に付き合うからって、ランチは用意してくれる事になっていた。少しだけ手作りを期待していたけど、料理は苦手なのかもしれない。
俺は、お返しのプリンを駅ビルに入っている人気洋菓子店で買っておいた。
チャットAIに今日のことを相談したら、手土産持参をおすすめされたからだ。
話しながら歩いていたら、程なくして芝生が広がる広場まできた。
家族連れが遊んでいたり、俺たちみたいなカップルがシートでくつろいでいる。
その中で少し木陰のあるスペースに、上東さんが持ってきてくれたレジャーシートを広げた。
そこに座り、まずは昼食にする。
上東さんが麦茶のボトルをくれて、コンビニのサンドイッチパックを差し出してきた。
「エビカツと、アボカドチキンどっちが良い?」
「あ、エビカツで……」
「はい。」
「ありがとう。あの、俺プリン買ってきたから……。」
「え、お昼は今日のお礼だし、気を遣わなくてよかったのに。」
「いや、まぁ。」
俯きながらサンドイッチを包んでいるフィルムを開けて一つ食べ始める。
「あー、あのね。」
上東さんが話し始めたので、顔をそちらに向けた。
「私がポムカ始めたいと思ったのはね、好きな子がはまってるゲームだからなの。一緒に遊びたくて。」
え、それって、俺じゃ……。
「本当はその子に色々教えてもらいたいんだけど、私に興味ない子だから言っても断られると思うんだよね。だから、佐竹くんに教えてもらえて助かってる。」
なかった。上東さんの好きな人、俺じゃない。
衝撃だった。
散々思わせぶりにしておいて、この仕打ち。
やっぱり女なんてろくなもんじゃない。
「そ、そう。」
俺はそれ以上何も言えなくて、大口でサンドイッチをかじった。
口のなかに甘辛いソースの味が広がる。噛みしめることに集中していると、少し頭が落ち着いてきた。
じゃあ、上東さんの好きな人は誰だ?ポムカにはまっていて、そっけないって。
……アマネじゃないか?
「ごっごほっ」
自分の予想にびっくりしてのどが詰まった。慌てて麦茶を飲み込む。
「ノリちゃん!」
予想だにしない声が聞こえて、麦茶すら喉に詰まらせそうになる。
呼ばれた方を見れば、広場の周りを囲む歩道からこちらに足早で向かってくる……
アマネの姿があった。
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