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第八章
透明になった後の日
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「死んだの…?私、死んだの…?」と思い出した彼女は、ただひたすら混乱し、透明な彼女は、思わず顔を上げた。目の前には、ぼやけていたはずの仏壇に、初デートの時に彼が撮ってくれた写真が、何枚も飾られていた。
「そんなわけないよね…?」と彼女は彼の方へ振り向く。目の前の彼は、彼女が憑いて初めて、声を上げ子供のように、下を向いたまま泣いていた。
「泣かないで…。」
その声も彼には届かない。
「泣かないでよ…。」といくら手を伸ばしても、彼に触れることさえできない。どうしても彼の名前が喉元から出てこない彼女は苦しくて仕方なくなり、体を小さく抱え込み苦しさに耐える。
「ごめん、ごめん、ごめん」と絞り出す声だって、届かない。
「俺、ずっとついてるって、一緒にいるって約束したじゃん…!お前と…ユキとっ!」
ユキ…?そうだ、私の名前は雪…
彼の名前は―――
「陽太。」
「雪?」今までどこか遠くを見つめていた目は、彼女を正確に捉えていた。あまりにも綺麗な目が、大好きな目が、自分を捉えていることが嬉しくて、思わず目を見つめ返した。陽太の綺麗な目には、雪が今にも消えそうなほど薄く淡く映っていた。
「陽太、私のこと分かるの?」
「雪、なんで…。」
「陽太、ごめん。ずっと謝りたかった。喧嘩してごめん。勝手に怒って好きって素直に言えなくてごめん。…独りにして…ごめん。」一気に視界が滲み、頬を水滴がとめどなく流れ、雪はごめんを繰り返した。
「雪こそ、泣かないで、謝らないでよ…って無理か。」
雪は悲しいだけではない。どこかで、ずっとこの日を待っていたかのような、何かふわりとした感情が心を包んでいるのも感じていた。
「私泣いているのは、悲しいからだけじゃないよ。」
「そうなの?」と不思議そうな顔をする陽太を見て、雪は笑みが零れた。
「やっと会えたのに…。」そんな心の声さえ漏らしてしまう雪は、どこかで分かっていた。やっと全て思い出せたのに、思い出が思い出せる度に、だんだん自分の体が透けていくこと、だんだん上に引っ張られるような感覚があること…。きっと長くは話していられないっていうこと。
「雪、好きだよ、大好きだよ、愛してる。…ごめん、本当はずっと言いたかったのに、上手く言えないや。ありきたりな言い方しかできないけど、雪がいなくなって、初めて、世界がつまらなくて、色がなくなって、早くとにかく雪に会いたいって…ごめん、うまく言えない。」
「大丈夫だよ、陽太。言いたいこと、わかるよ。ずっと一緒にいたから。…でもね、多分もう行かなきゃいけないみたいなんだ。」
陽太の目が開き、そして下を向く。陽太の目は未だに涙を抑えきれず、それを隠そうと陽太は手で何度も目をこする。
「陽太、幸せになってね。ちゃんといい人見つけなきゃ。」
「雪、そんなこと言うなよ。雪じゃなきゃ…。いや、雪と過ごした思い出忘れない。死ぬまで忘れない。」
「…ありがとう。」
「だから…来世で待ってて!どんな姿でも、どこにいても、絶対に探し出すから!」勢いで言った後、恥ずかしそうに、
「どっかのドラマのセリフみたいだね。」と笑う陽太につられ雪も笑っていた。
「分かった。来世で待ってる。」
だんだん雪の視界は白く薄くなり、陽太も1年間陽太に憑いて過ごした部屋も白くキラキラとして見えなくなった。
「そんなわけないよね…?」と彼女は彼の方へ振り向く。目の前の彼は、彼女が憑いて初めて、声を上げ子供のように、下を向いたまま泣いていた。
「泣かないで…。」
その声も彼には届かない。
「泣かないでよ…。」といくら手を伸ばしても、彼に触れることさえできない。どうしても彼の名前が喉元から出てこない彼女は苦しくて仕方なくなり、体を小さく抱え込み苦しさに耐える。
「ごめん、ごめん、ごめん」と絞り出す声だって、届かない。
「俺、ずっとついてるって、一緒にいるって約束したじゃん…!お前と…ユキとっ!」
ユキ…?そうだ、私の名前は雪…
彼の名前は―――
「陽太。」
「雪?」今までどこか遠くを見つめていた目は、彼女を正確に捉えていた。あまりにも綺麗な目が、大好きな目が、自分を捉えていることが嬉しくて、思わず目を見つめ返した。陽太の綺麗な目には、雪が今にも消えそうなほど薄く淡く映っていた。
「陽太、私のこと分かるの?」
「雪、なんで…。」
「陽太、ごめん。ずっと謝りたかった。喧嘩してごめん。勝手に怒って好きって素直に言えなくてごめん。…独りにして…ごめん。」一気に視界が滲み、頬を水滴がとめどなく流れ、雪はごめんを繰り返した。
「雪こそ、泣かないで、謝らないでよ…って無理か。」
雪は悲しいだけではない。どこかで、ずっとこの日を待っていたかのような、何かふわりとした感情が心を包んでいるのも感じていた。
「私泣いているのは、悲しいからだけじゃないよ。」
「そうなの?」と不思議そうな顔をする陽太を見て、雪は笑みが零れた。
「やっと会えたのに…。」そんな心の声さえ漏らしてしまう雪は、どこかで分かっていた。やっと全て思い出せたのに、思い出が思い出せる度に、だんだん自分の体が透けていくこと、だんだん上に引っ張られるような感覚があること…。きっと長くは話していられないっていうこと。
「雪、好きだよ、大好きだよ、愛してる。…ごめん、本当はずっと言いたかったのに、上手く言えないや。ありきたりな言い方しかできないけど、雪がいなくなって、初めて、世界がつまらなくて、色がなくなって、早くとにかく雪に会いたいって…ごめん、うまく言えない。」
「大丈夫だよ、陽太。言いたいこと、わかるよ。ずっと一緒にいたから。…でもね、多分もう行かなきゃいけないみたいなんだ。」
陽太の目が開き、そして下を向く。陽太の目は未だに涙を抑えきれず、それを隠そうと陽太は手で何度も目をこする。
「陽太、幸せになってね。ちゃんといい人見つけなきゃ。」
「雪、そんなこと言うなよ。雪じゃなきゃ…。いや、雪と過ごした思い出忘れない。死ぬまで忘れない。」
「…ありがとう。」
「だから…来世で待ってて!どんな姿でも、どこにいても、絶対に探し出すから!」勢いで言った後、恥ずかしそうに、
「どっかのドラマのセリフみたいだね。」と笑う陽太につられ雪も笑っていた。
「分かった。来世で待ってる。」
だんだん雪の視界は白く薄くなり、陽太も1年間陽太に憑いて過ごした部屋も白くキラキラとして見えなくなった。
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