ギリシャ神話

創作

デメテールの祝祭

『デメテールの祝祭』

それは、冥界の女王ペルセポネが母デメテールの元へ帰還する日、春の訪れを告げる特別な季節の始まりだった。

デメテールは大地の豊穣を司る女神。彼女の一息が草を育て、一滴の涙が大地を潤す。だが、ペルセポネが冥界に閉ざされている間、彼女の心は枯れ果て、草原は荒れ果てていた。

しかし、その日は違った。空には薄い春の雲が漂い、地平線には陽光が揺らめいている。デメテールは、長い間失っていた笑みを浮かべて、大地に足を踏み入れた。

「さあ、目覚めよ、我が愛しき命たちよ！」

彼女はその広大な草原に水差しを手に立ち、ゆっくりと歩み始めた。その足元からは次々と新しい生命が芽吹き、大地を覆うように緑が広がっていく。だが、よく見るとその緑の草は、単なる草ではなかった。

それは、すべて男根だった。

太く、たくましく、地面からにょきにょきと生え出した男根たちは、まるで春の訪れを祝うかのように、デメテールの足元に群がっていた。太陽の光を浴びて、その艶やかな表面は露をまとい、時折、そよ風に揺れている。

「さあ、もっと伸びるのよ」

デメテールはにこやかに笑いながら、その男根たちに水を注ぎ続けた。その水はただの水ではない。女神の手から注がれるそれは、生命の息吹そのものであり、触れたものに無限の成長を与える聖なる液体だった。

一滴、また一滴。水が男根たちの根元に染み込むたびに、彼らはさらに力強く、さらに高く天に向かって伸びていく。その様子は、まるで大地そのものが彼女の喜びに共鳴しているかのようだった。

やがて、草原は見渡す限りの男根畑に変わり、その先には彼らの総決起集会が広がっていた。立ち並ぶ男根たちは、互いに肩を組むように密集し、その存在感はまるで古の戦士たちのように威圧的でありながら、どこか愛らしさも感じさせた。

「これで、また大地が喜びに満ちるわ」

デメテールはそう呟き、空を見上げた。すると、遠くから鳥のさえずりが聞こえ始め、小川が再び流れ出し、風が木々を揺らし始めた。

その草原の一角で、デメテールは足を止めた。そして、彼女はひとつの男根にそっと手を伸ばし、その頭を優しく撫でた。

「おかえりなさい、私の愛しき命たち」

その瞬間、草原全体が震え、地面が微かに揺れた。まるでその一言が彼らにとって最高の褒美であるかのように。

こうして、春の訪れはデメテールの手によって祝われ、その大地は再び命の息吹に満ち溢れた。ペルセポネの帰還と共に、新しい命の季節が始まったのだった。

終わり