私の大好きな騎士さま

ひなのさくらこ

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番外編

夫婦というもの⑤

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躊躇ためらいながら持ち上げられたドレスの裾を、ウィリアムはさらにたくし上げた。現れたのは、光を放って見えるほど真っ白なレオノアの下半身だ。
ハート型のかわいいヒップを撫でて、そのすべすべとした感触を楽しむ。ほっそりとした脚は、細かな糸で編んだ靴下で太ももまで覆われていた。履き口は伸縮性のあるレース地だ。

激しすぎる夜のせいで起き上がれないレオノアを助け、身支度を手伝ったことがある。繊細なレースの履き口を広げ、なめらかな脚をなぞり上げるようにして靴下を履かせるのは、何度やっても楽しい仕事だった。それを思い出しながら、半透明の薄いレースを指先でなぞる。ぶるりと身を震わせたのは、くすぐったさからか、それとも快楽への期待か。
小さく笑んで、濡れてほころんだ亀裂を眺めた。いつも行儀よくぴったりと閉じているそこは、既に花開き蜜を垂らしている。

「あっ……」
「慣らす必要もないほど濡れているね。俺のをしゃぶって、そんなに感じた?」

雄の先端で、ほんの少し入り口をつつく。とたんに粘膜が物欲しげにうねり、奥へと誘いこもうとした。
頭の芯に、発火しそうなほど強い欲望と快感が居座っている。一気に突き入れたい衝動を逃がしてちらりと時計を見た。時間がないのは分かっているが、あと少しだけ焦らしていたぶりたい。ウィリアムは唇をなめた。

「ん?返事をして、レオノア」
「あ……ぁあんっ、は……、ウィルの、舐めて、んっ、感じちゃったの……」

入り口をぬちぬちと音をさせながら擦る。レオノアのヒップがそれを追いかけて動いた。

「そうなんだね。今日はまだ乳首しかいじってないけれど、このまま挿れていいの?それとも、この」
「はぁあんんっ!」
「コリコリした、一番感じるところを先にこすったほうがいい?」
「あっ、あっ、あっ、あんっ!」

腰の動きに合わせて声を上げるレオノアの、ぷりぷりと腫れた芽をつつくようにこする。

「ねえ、どうしようか。ああでも、このままこすってるとまた一人でイっちゃうね。レオノアは俺を癒したいはずなのに、自分だけ気持ちよくなっちゃうの?」
「や、いやっ、一人じゃ、いやなの!あぁん」

強請ねだられたが、わざと狙いを外して芽を軽くつつく。と、今度はぴたりと動きを止め、ゆっくりと腰を引いた。

「俺を気持ちよくするためだけなら、無理しなくていいよ」
「え……?」
「もう、十分癒してもらった。だから、俺の為だけに無理をすることはないんだ」

触れるか触れないか、ギリギリのところまで身体を離した。レオノアの濡れた花びらと、ウィリアムの雄の先端だけが、ほんのわずかに接している。

「ほら、レオノア。どうする?」

レオノアの腰はウィリアムの両手でしっかりと掴まれ、固定されていた。手のひらに力が加わる。レオノアが自らの意志で腰を動かしたいのだろう。分かっていながら、それを許さず指にグッと力を込めた。

「ウィル…………」
「うん。なに?」

挿入を求める言葉が続くと思い、口の端を引き上げながらウィリアムが応じる。するとレオノアは机に両手をつき、背を反らして振り向くと、かすかに震える声で言った。

「わたし、ウィルがすき」

思いがけない言葉に、ウィリアムが息をのむ。

「ウィルだけを愛してるの。だから、何もかも全部……ぜんぶウィルの、したいように、して」

言葉の終わりに、ゆっくりとした瞬きが一度。それと同時に頬に転がった、大粒の真珠のような、ふたつぶの涙。

その時胸の内にこみ上げた思いを、どう表現すればいいのか。

挿れてくれと言われたら。それとも、焦らすことをなじられたなら。それならウィリアムはレオノアをあやし、なだめていつものように翻弄しながら互いを満たしただろう。それも、大いなる満足感を感じながら。ところが、ウィリアムにそっと差し出されたのは、あまりにも健気な愛の言葉だった。

後ろを振り返るレオノアは、黄金に輝く巻き毛からのぞく華奢な背中をよじっている。肩と細い二の腕越しにはぷるんとした形の良い胸と、ツンと尖ったピンクの乳首が見え隠れしていた。
ハッとするほど鮮やかな緑の瞳は潤みをたたえてきらきらと輝き、紅い唇は微かにわなないて、甘い吐息を香らせている。

くしゃくしゃになってウエストでまとめられたドレス。それ以外に身に着けているのは、太ももまでの透けた靴下だけ。

その、頼りなく可憐で、それでいて扇情的な姿。そのうえあの愛の言葉に心臓を撃ち抜かれたウィリアムは、押し寄せる愛おしさに目眩を感じながら、身体を前に倒してそっと口づけた。

「……俺もだよ。君のことが好きすぎて、愛しすぎて、もう……死にそうだ」

グチャグチャになるまで焦らして嬲り懇願させたい。そんな獣じみた加虐心は、熱した飴細工よりも容易く変容した。
優しくしたい。望みを叶えたい。ただその思いだけで、ウィリアムはレオノアの中に入っていく。願ったのはひたすらに妻を慈しむこと。それだけを念じてぬかるんだ花びらの中へ身を進めた。その先には、苦痛にも似た強い快感が待つと知りながら。

「あ、あぁ、あぁっ……」

上体をのけ反らせたレオノアは、ため息のような声を上げる。肩から背中、ヒップへとさざ波のように身を震わせ、ギュウっと肉壁を絞った後、くたくたと力なく机に突っ伏した。

「ぅ…………ぐっ、」

ウィリアムは息を詰め全身を強張らせ、呻きながら天を仰いだ。花壺はうねうねと絶え間なく雄を締め付け、絞り、精を吸い上げようとする。挿入した途端の遂情などあってはならない。断固として身体の訴えを拒否し、喘ぎながらウィリアムは態勢を立て直そうとする。

「……ウィル」

ゆっくりとした挿入で深い絶頂に達したレオノアは、まだ身体に力が入らないようだ。机に伏せていた上半身を少しだけ起こし、ふらふらしながら首を後ろに向けると、小さな声で言った。

「ぎゅっ、て、して」

快感に蕩けた顔の、その果実のように熟れた唇からもれた願いは、必ず叶えてもらえるという揺るぎない信頼に裏打ちされていた。正面からの抱擁。それには体位を変える必要がある。しかし、繋がったままでは……。
常ならば苦もなくできることだが、今の自分にとっては難題だ。ウィリアムはそう思い、ぬめる花壷から猛りを抜こうとする。すると、離したくないとばかりに襞が懸命にすがりついてきた。

「ぅあ……っ!」

気が遠くなるほどの快感。喉を晒し、強く目を瞑って引き抜いた。濡れた昂りがピシャリと下腹を打つ。貪欲な襞から解放された雄は、充血しすぎてズキズキと痛み、脈打っている。ウィリアムは肩で息をして、額に張り付いた髪をかき上げた。

レオノアを抱き寄せ、この上なく優しい仕草で机に腰かけさせた。できれば時間を稼ぎ、猛りを落ち着かせたい。そう思いながら髪を撫でて口づけていると、レオノアが首に両腕を回し、耳元で「きて……」と囁いた。

前をはだけ纏ったままの上着までが汗で湿っている。ウィリアムは腹を決めると、一番狭い入り口の肉輪をゆっくりとくぐった。レオノアが「あん…」と可愛らしく声を上げたことにも気づかない。歯を剥き出しにして食いしばり、浅く呼吸しながら狭い入り口を潜り抜けた先の、柔らかな肉の締め付け。

ああ、もうだめだ。
耐えに耐え、こらえに堪えた果てにきゅうきゅうと絞り込まれ、ウィリアムはついに屈した。レオノアが机で擦れ傷つくことのないよう、手のひらの上に乗せたヒップに指を食い込ませ揺さぶる。長い射精。思考は完全に停止し、それでも身体は快を求めて挿送を続けた。

雄の本能が剥き出しになり、愛しい雌の首筋に噛みつきながら腰を振る。傘の部分でかき出された体液が足を伝った。

孕ませる。原始の欲求に従い何度も子宮を突き上げ、一番奥で再び達する。目の前が白く光り、足下がふらついた。耳をろうするのは、勢いよく流れる血液の音だ。
死を身近に感じるほどの強い快感に虚脱し、しなる身体を抱きしめる。ウィリアムは荒く息を吐きながら、レオノアの首から顎にかけて、隙間も無いほど細かく口づけた。

やわく小さな存在が愛しくて、可愛すぎてたまらない。このまま抱き上げて邸に戻り、思うさま抱けたならどんなによかったか。

だが、妻と思いがけず執務室で愛を交わせたことで、より一層仕事への意欲が湧いたのは確かだ。何が何でも最短で終わらせる。改めて決意するウィリアムの腕の中で、たおやかな身体が小さく震えた。

散々揺さぶった時、嬌声を上げて何度も達していたことを思い出す。まだ余韻に浸っているのだろうか。微笑みながらほんの少し身体を離し、レオノアの顔を覗きこんだウィリアムはギョッとした。

「レオニー!どうしたの?」

レオノアは泣いていた。頬にいく筋も涙が伝い、跡を残している。

しまった、やりすぎたか。慌てて男を引き抜き、近くに置いてあった布で互いをザッと拭う。下着を履かせてドレスの裾を整え、袖を通し背中のボタンまできっちりと留めてから膝に乗せた。皺の残りづらい生地だったのが幸いし、余程じっくりと見なければ、淫靡なひと時に気づかれることはないだろう。片やウィリアムはズボンこそ履いたものの、上は相変わらずはだけて胸を露わにしたままだ。

「レオニー、どうした?どこか痛くしちゃった?」

矢継ぎ早の問いにも首を横に振るばかり。ウィリアムは焦った。

「もしかして、声が外に聞こえたか心配なの?大丈夫だよ。途中で結界を張ったから、中の音は漏れていない」

ふるふる、と、また首を振られた。どうすればいいのか分からず、レオノアの頭を顎下に抱き寄せる。すると、素直に身体を預けながらひっく、としゃくり上げた。

「わ、わたし…っ、ごめ、なさ…」
「なぜ謝るの?レオニーが謝ることなんか何一つないよ」

髪や額に繰り返し口づけて宥めるが、一向に治まる気配がない。

「だ、って、ぅうっ、ふ、っく。わ、わたしまた、ひっく、お、おしごと、の、じ、じゃま、っう、し、しちゃ、て」
「何を言うんだ!そんなことある訳がないだろう。君が来てくれたからこそやる気が出たんだ。邪魔なはずがない!」
「だ、て、ふぅっ、ぅ………、えっ、ぅぇ…………っ」
「レオニー、どうしてそんな…………」

ほろほろほろ、と涙がこぼれる。ウィリアムが何度唇で拭っても止まらない。レオノアは両手で口を覆ったが、嗚咽を堪えることができず、とうとう声を上げて泣き始めた。

「レオニー、何も心配しなくていいんだ。仕事は大丈夫だから。ね?だから泣かないで」
「ふぇっ、えっ、えっ、ふぅうっ、うぅ、え、えっ、」
「好きだよ。大好き。愛してる。だからもう泣くな。レオニー、お願いだから」

レオノアが毎日用意してくれている手巾を取り出して顔を拭ってやると、それを顔に当てさめざめと泣いている。

これが仕事のことなら。ウィリアムが対処を迷うことはない。相手を見て裏を読み、計算しながら切るべきは切り、残すべきは残す。自らの突出した能力を誇示することなく、下手に恨みを買って後顧の憂いとならぬよう周到に手をまわしたうえで。

もしもレオノアと思いを交わす前なら。あらゆる選択肢を検討し、最も早く無駄のない手段でレオノアを手に入れる。まかり間違って他の男のものになるようなことがあってはならないと、ひそかに王家へ話をつけながら。

では、レオノアを妻とした今はどうだ。
泣く妻を宥めることもできず、慰める方法も分からない。ただ抱きしめ、口づけて愛を囁くだけ。それでも泣き止む気配はないが、愛しい人が悲しむ姿を前にして、手をこまねいてもいられなかった。

「レオニー…………」

レオノアはウィリアムの膝の上で、肩にもたれ涙を流し続けている。

ウィリアムは生涯でおそらく初めて、取るべき方法も分からず、己の無力さを突きつけられて途方に暮れていた。

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