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2.婚約か修道院か…②
『無理です!』と声を大にして言いたいが…言えない。祖父は父に爵位を譲り隠居しているが、我が家では絶対的な存在なのだ。
隣に立つ兄がおずおずと口を開く。
「お祖父様、私と婚約者の結婚は彼女の年齢を考慮し3年後と決まっております。これは我が家の一存では変更できることではありません。ですから今すぐにひ孫は難しいかと…」
これには祖父も渋々ながら頷き『では3年後全力で頑張れ』と大きなお世話な応援をして、兄は無罪放免となった。
あからさまにホッとした表情を浮かべる兄は、隣でまだ震えている妹の存在を忘れているようだ。
むむむっ、お兄様。
先程まで手と手を取り合って一緒に震えていたくせに!
自分だけ助かればいいんですか?
この裏切者め。
哀れな子羊は私だけになった。
「エミリア、お前は婚約者がまだいなかったな。すぐにこの中から決めなさい。そして学園を卒業と同時に結婚して全力で頑張るんだ」
そう言って3枚の釣書をテーブルに並べ始める。
えっ…、な、なにこの展開は…。
そんなの無理ですから!
私は自由恋愛するって決めてたから、今までお見合いも断ってきたのに…。
それに乙女に全力でって…なにをですか…。
隣りにいる兄に助けを求めようとしたが、なぜか姿がない。さっきまでいたはずなのに、可愛い妹を見捨てたようだ。…この瞬間兄の秘密のお宝の運命は決まった。
うん、燃やそう!
兄よ…ベットの下のお宝が無事で済むと思うなよ…。
お宝を燃やされ泣き叫ぶ兄の姿を想像して、一旦は裏切り者への怒りを抑え込む。今は兄なんか構ってはいられない、目の前の問題に向き合わなければ。
では両親にと助けを求める視線を送るが申し訳無さそうな顔で首を横に振られる。確かに両親は全力を尽くしていた、これ以上は無理だろう。
もう誰にも止められない。
「エミリア、この三人の婚約者候補から一人選びなさい。それが嫌なら修道院行き…かもな」
そう言いながら祖父の目は鋭く光った。
これは本気だ。
孫を脅すえげつなさはまともじゃないけれど…。
この人なら…やる。
愛する妻の為ならなんだって…やってきた。
人には言えない過去の祖父の大暴走を走馬灯のように思い出す。
消えたあの人…、馬車ならぬ豚車…、魚の曲芸…思い込みからどんなことだってやっていた。
まさに悪い意味で有言実行だった。
つ、詰んだ…私の人生が…。
薔薇色の人生を返せー。
私は逃げられないことを悟った。
でも無駄な足掻きと分かっていても人は足掻きたくはなるものだ。
「で、でも…この三人のうち一人を選んでも相手が嫌がったらお終いですよね…」
「大丈夫だ、その心配はない。それぞれの家には恩を売っているから相手は豚でも結婚するはずだ」
「ぶ、豚…?!なら孫ではなく豚を嫁がせてくださいっ!」
抗議の声を上げるが祖父は笑いながら却下した。
「はっはっは、エミリア何を馬鹿なことを言ってるんだ。豚が生んだ子はマリアのひ孫にはならんだろう、それじゃ意味がないんだよ。
豚が生むのは子豚で、孫が生むのがひ孫なんだ。知らなかったのかい?
ちなみにひ孫が生むのは玄孫だぞ」
そんなことは言われなくても分かっていますとも!
心のなかで祖父に回し蹴りをお見舞いする。
脳内ではバッチリ決まっているのに、目の前の祖父はピンピンしている。
…悔しい。
「で、でも…相手の顔がイマイチなら天使のようなひ孫は難しいかもしれませんわ…。そうなるとお祖母様が残念がるのでは…。それは駄目ですわよね、お祖母様を悲しませるなんて!」
最後の切り札『愛妻』を出す。これならお祖父様の暴走も止まるはず。
「安心しろ、顔面偏差値はそこそこの奴を選んでおいた。整形も一切していない。ちゃんと調べたから生まれてくる子の顔が親と違うとはならんぞ。
だがエミリアが浮気をしたら似ていないこともあるか…。
でもそれなら問題ないな、エミリアが生んだなら種がどうであれひ孫には違いないんだから。はっはっは、でも種の顔は重要だぞ」
…甘かった。
止まるどころか更に酷くなっている。
心のなかで祖父を痛めつけるのはもうやめた。
そんなことでは生温い…。
祖父の毛を採取して呪いの藁人形を作ろうと心に誓う。
ちなみに私は良い意味で有言実行だ。
ふふふ…お祖父様、覚悟はよろしくて…。
「エミリア、頑張れ。可愛いひ孫を待っているぞ、はっはっははは」
「おっほほほほ、おっほほほほ…」
部屋には祖父の明るい笑い声と私の不気味な笑い声の二重奏が響いてる。
こうして私は早急なひ孫誕生という期待のもと、三人の婚約者候補達の中から婚約者を選ぶことが決められてしまった。
隣に立つ兄がおずおずと口を開く。
「お祖父様、私と婚約者の結婚は彼女の年齢を考慮し3年後と決まっております。これは我が家の一存では変更できることではありません。ですから今すぐにひ孫は難しいかと…」
これには祖父も渋々ながら頷き『では3年後全力で頑張れ』と大きなお世話な応援をして、兄は無罪放免となった。
あからさまにホッとした表情を浮かべる兄は、隣でまだ震えている妹の存在を忘れているようだ。
むむむっ、お兄様。
先程まで手と手を取り合って一緒に震えていたくせに!
自分だけ助かればいいんですか?
この裏切者め。
哀れな子羊は私だけになった。
「エミリア、お前は婚約者がまだいなかったな。すぐにこの中から決めなさい。そして学園を卒業と同時に結婚して全力で頑張るんだ」
そう言って3枚の釣書をテーブルに並べ始める。
えっ…、な、なにこの展開は…。
そんなの無理ですから!
私は自由恋愛するって決めてたから、今までお見合いも断ってきたのに…。
それに乙女に全力でって…なにをですか…。
隣りにいる兄に助けを求めようとしたが、なぜか姿がない。さっきまでいたはずなのに、可愛い妹を見捨てたようだ。…この瞬間兄の秘密のお宝の運命は決まった。
うん、燃やそう!
兄よ…ベットの下のお宝が無事で済むと思うなよ…。
お宝を燃やされ泣き叫ぶ兄の姿を想像して、一旦は裏切り者への怒りを抑え込む。今は兄なんか構ってはいられない、目の前の問題に向き合わなければ。
では両親にと助けを求める視線を送るが申し訳無さそうな顔で首を横に振られる。確かに両親は全力を尽くしていた、これ以上は無理だろう。
もう誰にも止められない。
「エミリア、この三人の婚約者候補から一人選びなさい。それが嫌なら修道院行き…かもな」
そう言いながら祖父の目は鋭く光った。
これは本気だ。
孫を脅すえげつなさはまともじゃないけれど…。
この人なら…やる。
愛する妻の為ならなんだって…やってきた。
人には言えない過去の祖父の大暴走を走馬灯のように思い出す。
消えたあの人…、馬車ならぬ豚車…、魚の曲芸…思い込みからどんなことだってやっていた。
まさに悪い意味で有言実行だった。
つ、詰んだ…私の人生が…。
薔薇色の人生を返せー。
私は逃げられないことを悟った。
でも無駄な足掻きと分かっていても人は足掻きたくはなるものだ。
「で、でも…この三人のうち一人を選んでも相手が嫌がったらお終いですよね…」
「大丈夫だ、その心配はない。それぞれの家には恩を売っているから相手は豚でも結婚するはずだ」
「ぶ、豚…?!なら孫ではなく豚を嫁がせてくださいっ!」
抗議の声を上げるが祖父は笑いながら却下した。
「はっはっは、エミリア何を馬鹿なことを言ってるんだ。豚が生んだ子はマリアのひ孫にはならんだろう、それじゃ意味がないんだよ。
豚が生むのは子豚で、孫が生むのがひ孫なんだ。知らなかったのかい?
ちなみにひ孫が生むのは玄孫だぞ」
そんなことは言われなくても分かっていますとも!
心のなかで祖父に回し蹴りをお見舞いする。
脳内ではバッチリ決まっているのに、目の前の祖父はピンピンしている。
…悔しい。
「で、でも…相手の顔がイマイチなら天使のようなひ孫は難しいかもしれませんわ…。そうなるとお祖母様が残念がるのでは…。それは駄目ですわよね、お祖母様を悲しませるなんて!」
最後の切り札『愛妻』を出す。これならお祖父様の暴走も止まるはず。
「安心しろ、顔面偏差値はそこそこの奴を選んでおいた。整形も一切していない。ちゃんと調べたから生まれてくる子の顔が親と違うとはならんぞ。
だがエミリアが浮気をしたら似ていないこともあるか…。
でもそれなら問題ないな、エミリアが生んだなら種がどうであれひ孫には違いないんだから。はっはっは、でも種の顔は重要だぞ」
…甘かった。
止まるどころか更に酷くなっている。
心のなかで祖父を痛めつけるのはもうやめた。
そんなことでは生温い…。
祖父の毛を採取して呪いの藁人形を作ろうと心に誓う。
ちなみに私は良い意味で有言実行だ。
ふふふ…お祖父様、覚悟はよろしくて…。
「エミリア、頑張れ。可愛いひ孫を待っているぞ、はっはっははは」
「おっほほほほ、おっほほほほ…」
部屋には祖父の明るい笑い声と私の不気味な笑い声の二重奏が響いてる。
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