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7.怪しい令嬢②〜第三王子視点〜
クックク、面白れぇ奴を見つけちまったな。
ほら今度はなにをやらかしてくれるんだ?
もう彼女の一挙一動を見逃すわけにはいかないと目で追い続ける。
今度は給仕を行っている屋敷の使用人に近づいていき何やら小声で話しかけている。
『お仕事中に申し訳ありませんがよろしいですか?』
『はい、なんでしょうか?』
『あちらのテーブルのお料理が残り少しになっておりますよ』
『あっ!教えて頂きありがとうございます。気づかずにいたら主人に叱られてしまうところでした。本当にご親切に教えて頂き感謝いたします』
年若い使用人は親切な令嬢に何度も頭を下げ丁寧にお礼を伝えている。
確かに客人である貴族は使用人にそんなことを親切に教えなどしない。
彼女の態度に感謝するのも当然だろう。
…裏を知らなければな。
おいおい、そこの使用人!見た目に騙されるな。
あのテーブルのほとんどはその親切な令嬢が食っていたんだ…。
信じられないかもしれないがな…本当だ。
俺は見ていた、間違いない。
つまりその会話は親切心半分、この後の食料確保半分といったところだ。
礼は無用だぞ!
使用人に心のなかで全力でつこんでいるが勿論伝わるわけはない。
すると柱の陰に隠れて今度は早業でメモ用紙を仕舞い込み、金髪碧眼の見目麗しい男とにこやかに踊り始めた。
その様はまさにつまらない貴族女に成り下がったようで興味が引くかと思いきや、期待通りに面白いことをしてくれる。
その姿勢と優雅な動きから一見すると上手いように見えるが…。
ステップを踏むにつれ相手の男の顔が歪んでいく。
足元を凝視するとその理由は簡単に分かった。
彼女は迷うことなく相手の足を踏みながら踊り続けているのだ。相手を見て微笑んでいるようにも見えるがなにか考え事をしているようで実際には目の前の相手の表情には気がついていない。だから足を踏まれて眉を寄せているのにも気が付かないのだろう。
おいつ!止めてやれ。
その男が可哀想すぎるだろう。
お前何回踏んでいると思ってるんだ、もう32回も踏んでいるぞ。
これは下手とか言うレベルじゃねからな。
…もう犯罪だ。
お前…捕まるぞ、明日の一面飾る気か?!
きっとその優男は明日には足のサイズは2倍になっている。
可哀想に、お前は…鬼だな…。
相手の様子に気づきもせず淑女の仮面を被り続ける彼女はある意味凄い女だった。
誰も真似できないし、きっと誰も真似をしたくない。
はっはっは、なんだあれは!
面白いっ、あんな珍妙な令嬢が地方にはいるなんて知らなかったぞ。
儚げな見た目に珍獣が入ってるのか…。
後ろのチャックはどこだよ!
クックック、いいぞ。最高だ!
可憐な見た目と素早い動きで彼女のおかしさに周りは一切気がついていないみたいだ。
いや、そもそも貴族の令嬢とはあんな振る舞いをする人種ではないという固定観念からみな気が付かないのだろう。
この夜会で気がついているのはきっと俺くらいなものだ。
普段なら自分から令嬢に近寄ることはない。だが彼女のことをもっと知りたいと思った。
こんなことは初めてだった。
俺は女だけではなく人自体に興味はない。
それなのになぜか彼女には惹きつけられる。
どうしたんだ…。
第一印象は…良くはないし、その後も同じだったのに。
どうして、俺は彼女と知り合いになろうとしてるんだ…?
訳が分からないまま、彼女がいるバルコニーへと歩いていく。
自分が何を期待しているのかもわからない、彼女の身分も知らない。
自分らしくない打算がない行動だった。
バルコニーに設置してある椅子に座り一心不乱になにかを書き留めている彼女に普通に声を掛けてみる。
もちろん素の自分は出さず、第三王子の仮面を被ってだ。
「ちょっとよろしいですか、ダートン子爵令嬢?」
令嬢の名は多分これで合っているはずだ、あの憐れな優男がエミリア・ダートンと呼んでいたのは聞こえていた。
「ぎゃっー!!」
えっ…、空耳か?
『ぎゃっー!!』ってそれはないだろう…。
それとも俺の耳が悪いのか?
頭の中で答えを見つけようとするが、俺のまともな思考回路では正解に辿り着けない。
どうするべきかと考えるまもなく、彼女がまたも変な行動に出た。
「コッホン…、きゃっ!」
咳払いをしてからいま初めて驚きましたという表情を浮かべるているのだ。
まさに淑女の正しい反応をしている。
…最初がなければだが。
おいおい、どうすりゃいいんだよ。
最初のはなかったことにすればいいのか…。
本気か…、俺も付き合うのか?
誰か…時間は巻き戻せないことを教えてやってくれ。
期待に満ちた眼差しを向けられ、俺もやけくそでやり直しに付き合うことにする。
「あ、ええっ!!なにを…あー、そういうことか…。
申し訳ありません。驚かせてしまったようですね」
「いいえ、大丈夫ですわ。お気になさらないでください、ほっほほ」
俺の言葉に珍獣ぶりを見事に隠して『これぞ令嬢の見本』という言動で返してくる。
なるほど、そう来るか…。
まあ、お手並み拝見といったところだな。
俺も第三王子の器と評される可もなく不可もなくの態度で接することにした。
***********************
コメディが無性に書きたくなり挑戦してしまうけど…現実は厳しいです(-_-;)
ほら今度はなにをやらかしてくれるんだ?
もう彼女の一挙一動を見逃すわけにはいかないと目で追い続ける。
今度は給仕を行っている屋敷の使用人に近づいていき何やら小声で話しかけている。
『お仕事中に申し訳ありませんがよろしいですか?』
『はい、なんでしょうか?』
『あちらのテーブルのお料理が残り少しになっておりますよ』
『あっ!教えて頂きありがとうございます。気づかずにいたら主人に叱られてしまうところでした。本当にご親切に教えて頂き感謝いたします』
年若い使用人は親切な令嬢に何度も頭を下げ丁寧にお礼を伝えている。
確かに客人である貴族は使用人にそんなことを親切に教えなどしない。
彼女の態度に感謝するのも当然だろう。
…裏を知らなければな。
おいおい、そこの使用人!見た目に騙されるな。
あのテーブルのほとんどはその親切な令嬢が食っていたんだ…。
信じられないかもしれないがな…本当だ。
俺は見ていた、間違いない。
つまりその会話は親切心半分、この後の食料確保半分といったところだ。
礼は無用だぞ!
使用人に心のなかで全力でつこんでいるが勿論伝わるわけはない。
すると柱の陰に隠れて今度は早業でメモ用紙を仕舞い込み、金髪碧眼の見目麗しい男とにこやかに踊り始めた。
その様はまさにつまらない貴族女に成り下がったようで興味が引くかと思いきや、期待通りに面白いことをしてくれる。
その姿勢と優雅な動きから一見すると上手いように見えるが…。
ステップを踏むにつれ相手の男の顔が歪んでいく。
足元を凝視するとその理由は簡単に分かった。
彼女は迷うことなく相手の足を踏みながら踊り続けているのだ。相手を見て微笑んでいるようにも見えるがなにか考え事をしているようで実際には目の前の相手の表情には気がついていない。だから足を踏まれて眉を寄せているのにも気が付かないのだろう。
おいつ!止めてやれ。
その男が可哀想すぎるだろう。
お前何回踏んでいると思ってるんだ、もう32回も踏んでいるぞ。
これは下手とか言うレベルじゃねからな。
…もう犯罪だ。
お前…捕まるぞ、明日の一面飾る気か?!
きっとその優男は明日には足のサイズは2倍になっている。
可哀想に、お前は…鬼だな…。
相手の様子に気づきもせず淑女の仮面を被り続ける彼女はある意味凄い女だった。
誰も真似できないし、きっと誰も真似をしたくない。
はっはっは、なんだあれは!
面白いっ、あんな珍妙な令嬢が地方にはいるなんて知らなかったぞ。
儚げな見た目に珍獣が入ってるのか…。
後ろのチャックはどこだよ!
クックック、いいぞ。最高だ!
可憐な見た目と素早い動きで彼女のおかしさに周りは一切気がついていないみたいだ。
いや、そもそも貴族の令嬢とはあんな振る舞いをする人種ではないという固定観念からみな気が付かないのだろう。
この夜会で気がついているのはきっと俺くらいなものだ。
普段なら自分から令嬢に近寄ることはない。だが彼女のことをもっと知りたいと思った。
こんなことは初めてだった。
俺は女だけではなく人自体に興味はない。
それなのになぜか彼女には惹きつけられる。
どうしたんだ…。
第一印象は…良くはないし、その後も同じだったのに。
どうして、俺は彼女と知り合いになろうとしてるんだ…?
訳が分からないまま、彼女がいるバルコニーへと歩いていく。
自分が何を期待しているのかもわからない、彼女の身分も知らない。
自分らしくない打算がない行動だった。
バルコニーに設置してある椅子に座り一心不乱になにかを書き留めている彼女に普通に声を掛けてみる。
もちろん素の自分は出さず、第三王子の仮面を被ってだ。
「ちょっとよろしいですか、ダートン子爵令嬢?」
令嬢の名は多分これで合っているはずだ、あの憐れな優男がエミリア・ダートンと呼んでいたのは聞こえていた。
「ぎゃっー!!」
えっ…、空耳か?
『ぎゃっー!!』ってそれはないだろう…。
それとも俺の耳が悪いのか?
頭の中で答えを見つけようとするが、俺のまともな思考回路では正解に辿り着けない。
どうするべきかと考えるまもなく、彼女がまたも変な行動に出た。
「コッホン…、きゃっ!」
咳払いをしてからいま初めて驚きましたという表情を浮かべるているのだ。
まさに淑女の正しい反応をしている。
…最初がなければだが。
おいおい、どうすりゃいいんだよ。
最初のはなかったことにすればいいのか…。
本気か…、俺も付き合うのか?
誰か…時間は巻き戻せないことを教えてやってくれ。
期待に満ちた眼差しを向けられ、俺もやけくそでやり直しに付き合うことにする。
「あ、ええっ!!なにを…あー、そういうことか…。
申し訳ありません。驚かせてしまったようですね」
「いいえ、大丈夫ですわ。お気になさらないでください、ほっほほ」
俺の言葉に珍獣ぶりを見事に隠して『これぞ令嬢の見本』という言動で返してくる。
なるほど、そう来るか…。
まあ、お手並み拝見といったところだな。
俺も第三王子の器と評される可もなく不可もなくの態度で接することにした。
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