14 / 19
14.そして婚約者候補はいなくなった
とりあえずお腹が空いたので夜会で出されていたケーキを全種類こっそりとバルコニーへと持っていき、そこでパクパクと美味しいケーキを食べながら私はトナに愚痴を聞いてもらっていた。
「別にあの二人に好意があったわけではないからこの結果は受け入れるわよ。
あの二人だってきっと私と同じように家の事情とかで無理矢理婚約者候補にされた被害者だと思うしね。
でもね、お祖父様は絶対に彼らが同性愛者だって知っていたはずだと思うの。
そのうえで天使のひ孫誕生の確率重視で勧めてきたのよ。
きっと私が何も気が付かずにどちらかと婚約していたら初夜の時に媚薬を渡して『ほらこれを飲ませて新郎を朦朧とさせて全力で頑張れ』って笑いながら言うつもりだったんだわ」
私は怒りながらトナに今までの祖父の暴走行動も含めすべてを話していた。普通の祖父は孫にそんなことはしないものである。だから信じてもらえなくても仕方がない、聞き流してくれても構わないと思っていたけれども、彼は『うん、うん。やりそうだな』とやけに納得しながら相槌を打ってくれる。
「あら、トナはお祖父様と面識があるの?」
「いや…面識というほどのものでもないが、ちょっとは知っているかな…」
世間とは狭いものである。まさか彼があの祖父を知っていたなんて。途端に祖父が祖母絡みで彼に迷惑を掛けたのではないかと不安になる。
「もしかしてお祖父様が迷惑を掛けていたのかしら?ごめんなさい、祖母絡みだと暴走しちゃうことがあるの」
とりあえず先に謝っておくと、彼は『大丈夫だ』と言いながら苦笑いしていた。やっぱり何か祖父はやらかしていたようだ。
う、うう…お祖父様め。
何をやったんですか!
許しませんよ…、トナに迷惑をかけるのは。
何年掛かろうとも祖父の頭にフサフサな毛を生やさせて藁人形作戦に再び挑戦しようと心のなかで誓っていると、トナは話しかけてきた。
「それでこれからどうするともりだ?婚約者を決めなければ修道院行きだと言われてるんだろう」
「・・・・・」
良い考えが浮かんでないから答えられない。
あの二人は無理と祖父に言っても『それなら次だ!』と新たな候補者達を嬉々として提示するだろう。そしてそれらは絶対に顔重視の訳あり物件に間違い。
祖父の目は曇っているのではなく、完全に腐っている。
「はあ…、いい案が浮かばないわ。どうしよう…」
思わず弱音を吐いてしまうと、トナが真剣な表情で訊ねてきた。
「エミリア、どんな奴と結婚したいんだ?」
「うーん、とりあえず犯罪者ではなくて同性愛者じゃない人かな??」
「……おい、世の中の男の殆どは犯罪者でも同性愛者でもねーぞ。求めるものが低すぎるだろうがっ。
もっと具体的に絞ってみろ」
おっと、そうだった。立て続けに大当たりくじ?に当たっていたから感覚が麻痺してしまっていた。
危ない危ない、これでは祖父に熊を差し出されても『犯罪者でも同性愛でもないわ!』と喜んで飛びついてしまうところだ。
気を取り直して自分の理想を思い浮かべてそれを素直に言葉にしてみる。
「そうね…。特別に美男子でなくてもいいから優しい人がいいわ。つまらないお世辞を言わなくて、お互いに笑い合いながら話せる人だと最高ね。
他の人の前では猫を被っていても私の前では素でいてくれるの。それに以心伝心なんて出来たら凄く嬉しいな。
うーん、あと照れ隠しでちょっと乱暴でもいいかも」
不思議と自分でも驚くほど具体的に言葉が出てきた。
どうしてだろうか、特に結婚相手について具体的な理想像は持っていなかったはずなのに。
むむっ、私ったらどうした???
その言葉を聞いてトナは口元を手で隠している。よく見ると顔も真っ赤になっているように見える。
まさかケーキが喉に詰まったんだろうか。
私も経験したことがあるのでその辛さは分かる。そういう時はまずは何かを飲まなければ。
『ほら、これで流し込んで。楽になるからね』と急いで飲み物を差し出した。
彼は『…違うから』と小声で呟きながらも一口水を飲んだ。
その後はまた質問を続けてきた。
「なあエミリア、もし自分が好きになった相手が訳ありならどうする?諦めるか、それとも嫌いになるか…」
「ふふふ、変なことを聞くのね。諦めないし嫌いにもならないわ。
自分が好きになった人にどんな事情があろうともその事情を抱えているその人自身を好きになったんだから好きなままよ」
「例えば、その訳でお前が危険に晒されるとしたら…」
まだ質問を続けてくる彼の表情はとても辛そうだった。
彼にはそんな顔をして欲しくないなと思った。
でもどんな答えが正解か分からないから、偽りのない思いを伝える。
「危険なら二人で乗り越えたい。危険だからといって諦めたら、私きっと幸せにならないと思うわ。
私って儚げで守ってあげたいとか言われるけど、実はいろいろと凄く強いのよ。
ふふふ、知らなかったでしょう、驚いた?」
「はっはっは、ああ…驚いたな。本当にお前には驚かされる、エミリア」
そう言った彼の顔はもう辛そうではなかった。
そして二人でまた笑いながら夜会が終わるまで話し続けていた。
「別にあの二人に好意があったわけではないからこの結果は受け入れるわよ。
あの二人だってきっと私と同じように家の事情とかで無理矢理婚約者候補にされた被害者だと思うしね。
でもね、お祖父様は絶対に彼らが同性愛者だって知っていたはずだと思うの。
そのうえで天使のひ孫誕生の確率重視で勧めてきたのよ。
きっと私が何も気が付かずにどちらかと婚約していたら初夜の時に媚薬を渡して『ほらこれを飲ませて新郎を朦朧とさせて全力で頑張れ』って笑いながら言うつもりだったんだわ」
私は怒りながらトナに今までの祖父の暴走行動も含めすべてを話していた。普通の祖父は孫にそんなことはしないものである。だから信じてもらえなくても仕方がない、聞き流してくれても構わないと思っていたけれども、彼は『うん、うん。やりそうだな』とやけに納得しながら相槌を打ってくれる。
「あら、トナはお祖父様と面識があるの?」
「いや…面識というほどのものでもないが、ちょっとは知っているかな…」
世間とは狭いものである。まさか彼があの祖父を知っていたなんて。途端に祖父が祖母絡みで彼に迷惑を掛けたのではないかと不安になる。
「もしかしてお祖父様が迷惑を掛けていたのかしら?ごめんなさい、祖母絡みだと暴走しちゃうことがあるの」
とりあえず先に謝っておくと、彼は『大丈夫だ』と言いながら苦笑いしていた。やっぱり何か祖父はやらかしていたようだ。
う、うう…お祖父様め。
何をやったんですか!
許しませんよ…、トナに迷惑をかけるのは。
何年掛かろうとも祖父の頭にフサフサな毛を生やさせて藁人形作戦に再び挑戦しようと心のなかで誓っていると、トナは話しかけてきた。
「それでこれからどうするともりだ?婚約者を決めなければ修道院行きだと言われてるんだろう」
「・・・・・」
良い考えが浮かんでないから答えられない。
あの二人は無理と祖父に言っても『それなら次だ!』と新たな候補者達を嬉々として提示するだろう。そしてそれらは絶対に顔重視の訳あり物件に間違い。
祖父の目は曇っているのではなく、完全に腐っている。
「はあ…、いい案が浮かばないわ。どうしよう…」
思わず弱音を吐いてしまうと、トナが真剣な表情で訊ねてきた。
「エミリア、どんな奴と結婚したいんだ?」
「うーん、とりあえず犯罪者ではなくて同性愛者じゃない人かな??」
「……おい、世の中の男の殆どは犯罪者でも同性愛者でもねーぞ。求めるものが低すぎるだろうがっ。
もっと具体的に絞ってみろ」
おっと、そうだった。立て続けに大当たりくじ?に当たっていたから感覚が麻痺してしまっていた。
危ない危ない、これでは祖父に熊を差し出されても『犯罪者でも同性愛でもないわ!』と喜んで飛びついてしまうところだ。
気を取り直して自分の理想を思い浮かべてそれを素直に言葉にしてみる。
「そうね…。特別に美男子でなくてもいいから優しい人がいいわ。つまらないお世辞を言わなくて、お互いに笑い合いながら話せる人だと最高ね。
他の人の前では猫を被っていても私の前では素でいてくれるの。それに以心伝心なんて出来たら凄く嬉しいな。
うーん、あと照れ隠しでちょっと乱暴でもいいかも」
不思議と自分でも驚くほど具体的に言葉が出てきた。
どうしてだろうか、特に結婚相手について具体的な理想像は持っていなかったはずなのに。
むむっ、私ったらどうした???
その言葉を聞いてトナは口元を手で隠している。よく見ると顔も真っ赤になっているように見える。
まさかケーキが喉に詰まったんだろうか。
私も経験したことがあるのでその辛さは分かる。そういう時はまずは何かを飲まなければ。
『ほら、これで流し込んで。楽になるからね』と急いで飲み物を差し出した。
彼は『…違うから』と小声で呟きながらも一口水を飲んだ。
その後はまた質問を続けてきた。
「なあエミリア、もし自分が好きになった相手が訳ありならどうする?諦めるか、それとも嫌いになるか…」
「ふふふ、変なことを聞くのね。諦めないし嫌いにもならないわ。
自分が好きになった人にどんな事情があろうともその事情を抱えているその人自身を好きになったんだから好きなままよ」
「例えば、その訳でお前が危険に晒されるとしたら…」
まだ質問を続けてくる彼の表情はとても辛そうだった。
彼にはそんな顔をして欲しくないなと思った。
でもどんな答えが正解か分からないから、偽りのない思いを伝える。
「危険なら二人で乗り越えたい。危険だからといって諦めたら、私きっと幸せにならないと思うわ。
私って儚げで守ってあげたいとか言われるけど、実はいろいろと凄く強いのよ。
ふふふ、知らなかったでしょう、驚いた?」
「はっはっは、ああ…驚いたな。本当にお前には驚かされる、エミリア」
そう言った彼の顔はもう辛そうではなかった。
そして二人でまた笑いながら夜会が終わるまで話し続けていた。
あなたにおすすめの小説
王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?
ねーさん
恋愛
公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。
なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。
王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!
【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから
よどら文鳥
恋愛
私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。
五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。
私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。
だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。
「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」
この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。
あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。
婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。
両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。
だが、それでも私の心の中には……。
※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。
※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。
(完)婚約破棄ですか? なぜ関係のない貴女がそれを言うのですか? それからそこの貴方は私の婚約者ではありません。
青空一夏
恋愛
グレイスは大商人リッチモンド家の娘である。アシュリー・バラノ侯爵はグレイスよりずっと年上で熊のように大きな体に顎髭が風格を添える騎士団長様。ベースはこの二人の恋物語です。
アシュリー・バラノ侯爵領は3年前から作物の不作続きで農民はすっかり疲弊していた。領民思いのアシュリー・バラノ侯爵の為にお金を融通したのがグレイスの父親である。ところがお金の返済日にアシュリー・バラノ侯爵は満額返せなかった。そこで娘の好みのタイプを知っていた父親はアシュリー・バラノ侯爵にある提案をするのだった。それはグレイスを妻に迎えることだった。
年上のアシュリー・バラノ侯爵のようなタイプが大好きなグレイスはこの婚約話をとても喜んだ。ところがその三日後のこと、一人の若い女性が怒鳴り込んできたのだ。
「あなたね? 私の愛おしい殿方を横からさらっていったのは・・・・・・婚約破棄です!」
そうしてさらには見知らぬ若者までやって来てグレイスに婚約破棄を告げるのだった。
ざまぁするつもりもないのにざまぁになってしまうコメディー。中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。途中からざまぁというより更生物語になってしまいました。
異なった登場人物視点から物語が展開していくスタイルです。
私の婚約者は誰?
しゃーりん
恋愛
伯爵令嬢ライラは、2歳年上の伯爵令息ケントと婚約していた。
ところが、ケントが失踪(駆け落ち)してしまう。
その情報を聞き、ライラは意識を失ってしまった。
翌日ライラが目覚めるとケントのことはすっかり忘れており、自分の婚約者がケントの父、伯爵だと思っていた。
婚約者との結婚に向けて突き進むライラと、勘違いを正したい両親&伯爵のお話です。
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
【完結】私より優先している相手が仮病だと、いい加減に気がついたらどうですか?〜病弱を訴えている婚約者の義妹は超が付くほど健康ですよ〜
よどら文鳥
恋愛
ジュリエル=ディラウは、生まれながらに婚約者が決まっていた。
ハーベスト=ドルチャと正式に結婚する前に、一度彼の実家で同居をすることも決まっている。
同居生活が始まり、最初は順調かとジュリエルは思っていたが、ハーベストの義理の妹、シャロン=ドルチャは病弱だった。
ドルチャ家の人間はシャロンのことを溺愛しているため、折角のデートも病気を理由に断られてしまう。それが例え僅かな微熱でもだ。
あることがキッカケでシャロンの病気は実は仮病だとわかり、ジュリエルは真実を訴えようとする。
だが、シャロンを溺愛しているドルチャ家の人間は聞く耳持たず、更にジュリエルを苦しめるようになってしまった。
ハーベストは、ジュリエルが意図的に苦しめられていることを知らなかった。
ポンコツ娘は初恋を諦める代わりに彼の子どもを所望する
キムラましゅろう
恋愛
辺境の田舎から聖騎士となった大好きな幼馴染フェイト(20)を追って聖女教会のメイドとして働くルゥカ(20)。
叱られながらもフェイトの側にいられるならとポンコツなりに頑張ってきた。
だけど王都で暮らして四年。そろそろこの先のない初恋にルゥカはケリをつける事にした。
初恋を諦める。諦めるけど彼の子供が欲しい。
そうしたらきっと一生ハッピーに生きてゆけるから。
そう決心したその日から、フェイトの“コダネ”を狙うルゥカだが……。
「でも子供ってどうやって作るのかしら?」
……果たしてルゥカの願いは叶うのか。
表紙は読者様CさんがAIにて作成してくださいました。
完全ご都合主義、作者独自の世界観、ノーリアリティノークオリティのお話です。
そして作者は元サヤハピエン至上主義者でございます。
ハピエンはともかく元サヤはなぁ…という方は見なかった事にしていただけますと助かります。
不治の誤字脱字病患者が書くお話です。ところどころこうかな?とご自分で脳内変換しながら読むというスキルを必要とします。
そこのところをご了承くださいませ。
性描写はありませんが、それを連想させるワードがいくつか出てまいります。
地雷の方は自衛をお願いいたします。
小説家になろうさんにも時差投稿します。