15 / 59
13.観察準備その①
しおりを挟む
美味しい朝食を食べ終わったララルーアは何もすることがない。兄であるマオは今日から学園に通うので日中は会う事が出来ないのだ。
虚弱体質で竜体のままのララは学園に通う事も出来ないし、竜人としては幼い部類に入るのでやるべき仕事など存在しない。
一日中ゴロゴロしていても誰にも叱られない夢のような立場なのだが、ララはそれを良しとしない。
『働かざる者食うべからず』をこの世で一番いい言葉だと教わっていたので、『ゴロゴロ』は敵なのである。
部屋にある机の引き出しをゴソゴソと探し一冊の新しいノートとペンを取り出した、それを机の上にポンと放り投げてから、ララはヨイショッと高めの椅子に器用によじ登り、机に向かって何やら書き始める。
「えーっと、タイトルは何にしようかな?」
ああでもないこうでもないと悩むララ、何度も書いては消しを繰り返していたが、暫くしてからノートの表紙にサラサラとペンを走らせる。
【トカタオ王子観察日記vol.1】
ララは王宮滞在中の仕事にトカタオの観察をすることにしたのだ。
『だって敵を知ってこそ、ドンピシャな呪いが掛けられるもん♪』かなり楽し気だ、それに観察する前から【vol.1】って書いている、どんだけ熱心に観察するつもりなんだ…。
満足したタイトルを考えられたララはノートとペンを愛用の肩掛け鞄に入れて準備を始めた。
観察というが簡単にはいかない。朝顔の観察なら間近でジロジロと見ても大丈夫だが、残念なことにトカタオは竜人なので勝手に動くし、気づいたら逃げてしまう可能性もある。---当然だ、動かず逃げず観察される人は誰もいない。
上手に観察をするには、一人でこっそりとやる必要がある。だがララルーアは専属侍女がつく有り難い待遇なので、一人にはなれない。竜王がララルーアを心配して付けた侍女なので、ドウリアも基本ララから離れる事はしないのである。
『観察のためにドウリアを撒かなくてわ!』ピンクの可愛い天使がピンクの悪だくみ小悪魔に変身する、ニヤリ。
「ドウリア、なんか眠くなっちゃった。王子の相手を朝からしたから疲れたのかも。ふぁぁ~少し寝るね」
「まぁ、大変。ララ様はお身体が弱いと聞いてます、無理はしないでくださいね」
「ありがとう。人がいると眠れないからドウリアは出て行ってくれる?」
「分かりました。隣にある侍女の控室にいますので、何かありましたらベルを鳴らしてくださいね」
ララの迫真の演技に騙されたドウリアは心配そうな表情を浮かべて部屋を後にした。優しいドウリアを騙したことにララの胸はチクッと痛んだが、『働かざる者食うべからず』という教えを胸に、仕事に取り掛かることにした。
まずはベットのなかにクッションを詰めて丸みを出し偽装工作をする。これで、ドウリアが様子を見に来てもララが寝ていると思って大丈夫なはずだ。
『私って頭いい~!』と自画自賛しているララだが、その偽装工作は40点の出来だった。
最初はたくさんクッションを詰めて、まるでララが本当に寝ているように見える膨らみを再現していた。けれども『私こんなに丸くないはず~』と見栄を張ってクッションを三個抜いてしまったのだ。
『これこれ、完璧!」といって出来上がった膨らみはララが入っているとは思えないほどほっそりとした山だった…。
---完璧な偽装工作より見栄を優先したララ、乙女心は何とも複雑なのである。
偽装工作終了、いざ出発!ララは肩掛け鞄を持って、隠し扉から外に出ようとする。
この隠し扉は部屋の改造の時に竜王が作らせたもので、『スズからのお願い』の賜物であり、竜王とララしか存在を知らない。
水槽で隠れている隠し扉に抜き足差し足で静かに近づき、こっそりと部屋から抜け出そうとする。
いざ隠し扉をくぐろうとするが、なかなか抜けられない…。
ピンクの可愛い竜体には触り心地のいいプニプニがついていて、それが邪魔をしている。この隠し扉はララ専用なので、寸法を事前に測りかなり小さく作られていた、だが子供は成長するものである、ララもしっかり育っていた…。
グイグイと力ずくで抜けようとするが、進まない…。それどころか扉とお肉がジャストフィットしている。前にも後ろにも動けなくなった。
(マズイ、ヤバイ、どうしよう!)
尻尾をビタン、ビタンと扉の枠に叩きつけるが壊れてくれない。
ララルーア絶体絶命!哀れな叫びが部屋にこだまする。
「いや~ん!誰か、助けてーーー!」
虚弱体質で竜体のままのララは学園に通う事も出来ないし、竜人としては幼い部類に入るのでやるべき仕事など存在しない。
一日中ゴロゴロしていても誰にも叱られない夢のような立場なのだが、ララはそれを良しとしない。
『働かざる者食うべからず』をこの世で一番いい言葉だと教わっていたので、『ゴロゴロ』は敵なのである。
部屋にある机の引き出しをゴソゴソと探し一冊の新しいノートとペンを取り出した、それを机の上にポンと放り投げてから、ララはヨイショッと高めの椅子に器用によじ登り、机に向かって何やら書き始める。
「えーっと、タイトルは何にしようかな?」
ああでもないこうでもないと悩むララ、何度も書いては消しを繰り返していたが、暫くしてからノートの表紙にサラサラとペンを走らせる。
【トカタオ王子観察日記vol.1】
ララは王宮滞在中の仕事にトカタオの観察をすることにしたのだ。
『だって敵を知ってこそ、ドンピシャな呪いが掛けられるもん♪』かなり楽し気だ、それに観察する前から【vol.1】って書いている、どんだけ熱心に観察するつもりなんだ…。
満足したタイトルを考えられたララはノートとペンを愛用の肩掛け鞄に入れて準備を始めた。
観察というが簡単にはいかない。朝顔の観察なら間近でジロジロと見ても大丈夫だが、残念なことにトカタオは竜人なので勝手に動くし、気づいたら逃げてしまう可能性もある。---当然だ、動かず逃げず観察される人は誰もいない。
上手に観察をするには、一人でこっそりとやる必要がある。だがララルーアは専属侍女がつく有り難い待遇なので、一人にはなれない。竜王がララルーアを心配して付けた侍女なので、ドウリアも基本ララから離れる事はしないのである。
『観察のためにドウリアを撒かなくてわ!』ピンクの可愛い天使がピンクの悪だくみ小悪魔に変身する、ニヤリ。
「ドウリア、なんか眠くなっちゃった。王子の相手を朝からしたから疲れたのかも。ふぁぁ~少し寝るね」
「まぁ、大変。ララ様はお身体が弱いと聞いてます、無理はしないでくださいね」
「ありがとう。人がいると眠れないからドウリアは出て行ってくれる?」
「分かりました。隣にある侍女の控室にいますので、何かありましたらベルを鳴らしてくださいね」
ララの迫真の演技に騙されたドウリアは心配そうな表情を浮かべて部屋を後にした。優しいドウリアを騙したことにララの胸はチクッと痛んだが、『働かざる者食うべからず』という教えを胸に、仕事に取り掛かることにした。
まずはベットのなかにクッションを詰めて丸みを出し偽装工作をする。これで、ドウリアが様子を見に来てもララが寝ていると思って大丈夫なはずだ。
『私って頭いい~!』と自画自賛しているララだが、その偽装工作は40点の出来だった。
最初はたくさんクッションを詰めて、まるでララが本当に寝ているように見える膨らみを再現していた。けれども『私こんなに丸くないはず~』と見栄を張ってクッションを三個抜いてしまったのだ。
『これこれ、完璧!」といって出来上がった膨らみはララが入っているとは思えないほどほっそりとした山だった…。
---完璧な偽装工作より見栄を優先したララ、乙女心は何とも複雑なのである。
偽装工作終了、いざ出発!ララは肩掛け鞄を持って、隠し扉から外に出ようとする。
この隠し扉は部屋の改造の時に竜王が作らせたもので、『スズからのお願い』の賜物であり、竜王とララしか存在を知らない。
水槽で隠れている隠し扉に抜き足差し足で静かに近づき、こっそりと部屋から抜け出そうとする。
いざ隠し扉をくぐろうとするが、なかなか抜けられない…。
ピンクの可愛い竜体には触り心地のいいプニプニがついていて、それが邪魔をしている。この隠し扉はララ専用なので、寸法を事前に測りかなり小さく作られていた、だが子供は成長するものである、ララもしっかり育っていた…。
グイグイと力ずくで抜けようとするが、進まない…。それどころか扉とお肉がジャストフィットしている。前にも後ろにも動けなくなった。
(マズイ、ヤバイ、どうしよう!)
尻尾をビタン、ビタンと扉の枠に叩きつけるが壊れてくれない。
ララルーア絶体絶命!哀れな叫びが部屋にこだまする。
「いや~ん!誰か、助けてーーー!」
85
あなたにおすすめの小説
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい
鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。
家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。
そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。
いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。
そんなふうに優しくしたってダメですよ?
ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて――
……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか?
※タイトル変更しました。
旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる