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26.ちょっとした変化
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戦闘訓練は終わったがこの後も騎士団の地獄の訓練は続く。ムキマッチョ騎士達は体力があるので大丈夫だが、ララルーアは体が弱いため体力も人並み以下である。姫役で張り切り過ぎてしまいもう体力の限界が近い。それに今日はまだ一回も水槽で泳いでいないので皮膚も乾燥してきている。竜人は竜体になると全身硬い鱗で覆われるが、ララは竜体でも硬い鱗はない。キラキラ光る薄い鱗はあるが、それは脆く乾燥し続けるとヒビが入ってしまうのだ。
「にんにん、私そろそろ部屋に帰って水槽で休む時間になったの。みんなに挨拶して帰ろう」
「ウッキー」
「なんだララ最後までいないのか。二人だと危ないからカイに送らせる」
「大丈夫だよ、トカは心配し過ぎ~。そんなんだと早くに老けちゃうよ。トカとカイは最後まで訓練頑張ってね」
「ああ、分かった。じゃあまた夜にな」
「いや~ん、その言い方エッチ!誤解されちゃうよ、お世話係さん!」
「けっ、なに言ってんだ、ませガキが」
「あっ、ガキて言ったな。罰金、罰金!」
「罰金は『ちび』だけだったよな、ララしっかり覚えとけ」
プンスカ、プンスカとララは膨れているが、意外にもトカタオとのくだらない会話は以前と違って心地よく感じていた。トカタオのぞんざいな口調も態度も前と同じなのだが、何かが違っていたのだ。それが何かは分からなかったが、兎に角、ララは夜トカタオとまた会えるのも嬉しく思っていた。
一方のトカタオもララとの気安い会話になぜか心が弾んでしまう自分を認め始めていた。あんなに最初は鬱陶しいと思っていたのに、今はそんな感情は見事に霧散していた。だが自分の変化の理由が分からないトカタオはちょっとずれた心配をしていた。『俺と叔父さんてやっぱり血が繋がっているのか…、だがあっちは変態だが俺は違う、大丈夫だ…よな』---大丈夫ゴリさんは変態かもしれないが王子は正真正銘ノーマルだ。
ララはトカタオとくだらないやり取りをした後、騎士達にちゃんとお礼の挨拶をしてムキマッチョパラダイスを後にした。
「お邪魔しましたー♪」
「ウッキッキー」
「「「また来いよー。勝利の姫と王子!」」」
ピンクの尻尾とくるりん赤毛の尻尾が手の代わりにフルフルと別れの挨拶をしていた。そんな二人を騎士達は『やっぱり癒される二人だな~』と優し気に見送っていた。
けれども観覧席にいる令嬢達がララを見る目は殺気立つものがあった。
自分達が決して立ち入りを許されない場所の立ち入りを許され、かつ姫役で騎士達と戯れていたララに怒り心頭であった。
『あの子豚いったい誰よ!調べてやるわ』『お父さまに言つけて、潰してやる』『ちんくしゃが身の程を思い知らせてやるわ』と勝手なことをララに聞こえる様に大きな声で叫んでいた。ララが南の辺境地を治めるミファン領主の長女で、竜王の後ろ盾があると知らない令嬢達の言動は酷いものだった。
だがララだってやられっぱなしは性に合わない。ちょっと待ってと立ち止まり、愛用の鞄から観察ノートを取り出し、まだ書いてないページを一枚破ると何やら書き込み始めた。
【恨み晴らさでおくべきかリスト】
・赤毛の天然パーマ、黒目、犬獣人、身長170cm、小太り
・金髪碧眼美女、貧乳、ガリガリ、人族?
etc.
悪口を言っている令嬢達の特徴を片っ端からメモしていた。それも悪口の酷い順に並べて書いてある『やり返す順番を間違えたら悪いもんね~』
さっさと10分で書き終え、メモを丁寧に畳んで失くさないように大切に鞄にしまった。やり返す気満々なのが良く分かるが、ドラマに影響され過ぎではなかろうか…。『今度は百倍返しだもん~♪』
「にんにん、お待たせ。帰っておやつ食べようね」
「ウッキウキキー」
二人は仲良く王族専用棟にあるララの部屋へと戻っていった、…はずだった。
だがララとにんにんはここでの姿を最後に王宮から消えてしまっていた。
「にんにん、私そろそろ部屋に帰って水槽で休む時間になったの。みんなに挨拶して帰ろう」
「ウッキー」
「なんだララ最後までいないのか。二人だと危ないからカイに送らせる」
「大丈夫だよ、トカは心配し過ぎ~。そんなんだと早くに老けちゃうよ。トカとカイは最後まで訓練頑張ってね」
「ああ、分かった。じゃあまた夜にな」
「いや~ん、その言い方エッチ!誤解されちゃうよ、お世話係さん!」
「けっ、なに言ってんだ、ませガキが」
「あっ、ガキて言ったな。罰金、罰金!」
「罰金は『ちび』だけだったよな、ララしっかり覚えとけ」
プンスカ、プンスカとララは膨れているが、意外にもトカタオとのくだらない会話は以前と違って心地よく感じていた。トカタオのぞんざいな口調も態度も前と同じなのだが、何かが違っていたのだ。それが何かは分からなかったが、兎に角、ララは夜トカタオとまた会えるのも嬉しく思っていた。
一方のトカタオもララとの気安い会話になぜか心が弾んでしまう自分を認め始めていた。あんなに最初は鬱陶しいと思っていたのに、今はそんな感情は見事に霧散していた。だが自分の変化の理由が分からないトカタオはちょっとずれた心配をしていた。『俺と叔父さんてやっぱり血が繋がっているのか…、だがあっちは変態だが俺は違う、大丈夫だ…よな』---大丈夫ゴリさんは変態かもしれないが王子は正真正銘ノーマルだ。
ララはトカタオとくだらないやり取りをした後、騎士達にちゃんとお礼の挨拶をしてムキマッチョパラダイスを後にした。
「お邪魔しましたー♪」
「ウッキッキー」
「「「また来いよー。勝利の姫と王子!」」」
ピンクの尻尾とくるりん赤毛の尻尾が手の代わりにフルフルと別れの挨拶をしていた。そんな二人を騎士達は『やっぱり癒される二人だな~』と優し気に見送っていた。
けれども観覧席にいる令嬢達がララを見る目は殺気立つものがあった。
自分達が決して立ち入りを許されない場所の立ち入りを許され、かつ姫役で騎士達と戯れていたララに怒り心頭であった。
『あの子豚いったい誰よ!調べてやるわ』『お父さまに言つけて、潰してやる』『ちんくしゃが身の程を思い知らせてやるわ』と勝手なことをララに聞こえる様に大きな声で叫んでいた。ララが南の辺境地を治めるミファン領主の長女で、竜王の後ろ盾があると知らない令嬢達の言動は酷いものだった。
だがララだってやられっぱなしは性に合わない。ちょっと待ってと立ち止まり、愛用の鞄から観察ノートを取り出し、まだ書いてないページを一枚破ると何やら書き込み始めた。
【恨み晴らさでおくべきかリスト】
・赤毛の天然パーマ、黒目、犬獣人、身長170cm、小太り
・金髪碧眼美女、貧乳、ガリガリ、人族?
etc.
悪口を言っている令嬢達の特徴を片っ端からメモしていた。それも悪口の酷い順に並べて書いてある『やり返す順番を間違えたら悪いもんね~』
さっさと10分で書き終え、メモを丁寧に畳んで失くさないように大切に鞄にしまった。やり返す気満々なのが良く分かるが、ドラマに影響され過ぎではなかろうか…。『今度は百倍返しだもん~♪』
「にんにん、お待たせ。帰っておやつ食べようね」
「ウッキウキキー」
二人は仲良く王族専用棟にあるララの部屋へと戻っていった、…はずだった。
だがララとにんにんはここでの姿を最後に王宮から消えてしまっていた。
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