あなたの『番』はご臨終です!

矢野りと

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42.いちゃラブ

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美少女ララルーアと美青年トカタオは【焼きもち作戦】を経て両思いなのを確認し、出来立てほやほやの恋人同士となった。あの作戦が役に立つとは世の中なにが起こるか分からないものである。
二人は竜人同士なのでお似合いかと聞かれると、…正直微妙だろう。
トカタオは見た目も青年で恋愛適齢期真っ盛りだが、ララは美少女と言ってもその容姿は人族で言えば10歳前後の子供のようでかなり幼く、年齢的には恋愛適齢期だが如何せん見た目に問題ありなのである。

『美青年と幼い美少女のカップル』もう犯罪臭がプンプン漂っている。---誰か警察呼んで下さい!
だが二人はそんなことを気にもせず、いちゃラブでお茶を楽しんでいる。トカタオはライバルにんにんがして貰っていた事を自分もして欲しいとララにお願いしている。---いい年して恥ずかしくないのか、王子よ。

「はい、あ~ん♪」

ララがお菓子を手で直接トカタオの口に運んでいく、その先にはだらしない顔をした王子が口を開けて待っている。誰だこいつはと言いたくなるような顔で、優秀な王子要素は完全に行方不明だ。

パクッ、モグモグ。ララの手を一緒に食べそうな勢いでお菓子に食いつき、わざと細い指を舐めてララを困らせている。

「もう、指は食べちゃ駄目よ。美味しくないんだから」
「すまん。でもララの指は美味しかったぞ、お菓子より甘くて柔らかいな」
「エヘヘ、そうかな♪それならもう一回食べ比べてみる?」
「ああ、そうしよう。お菓子とララの指、どっちが甘いか確認しないとな」
「トカ、あ~ん♪」

パクッ、モグモグ、ペロリ。

「やっぱりララの方が甘いな、可愛さと甘さは比例するみたいだ。きっと世界一甘いのはララルーア・ミファンで決まりだぞ」
「や~ん♪恥ずかしいけど、トカがそう言うならそんな事あるかも、うふふ」

甘~い、甘~い馬鹿ップル劇場が上映されている。観客となっているドウリアとカイはその様子に呆れ、にんにんはとっくにこの場から退散している。ドウリア達も本音を言えばさっさとこの場から逃げたいが、専属侍女と専属護衛騎士は側にいるのが仕事なので真面目な二人は職場放棄が出来ずにここにとどまっているのだ。だが二人の我慢は限界に近付いていた。
カイがドウリアの側に近づき小声で囁いている。

「おい、そろそろ止めてくれ。侍女は主人の貞操を守るのも仕事だろう。あれは本当にやばいぞ」
「それを言うなら、護衛騎士は王子の暴走を止めるのも仕事でしょう。あなたが止めて下さい」
「拗らせた童貞は厄介なんだ。見てみろ、傍目からどう見られるか考えるべき頭が行方不明だ」
「なら探し出して来てください。このままではあの馬鹿ップル劇場は永遠に上映されますよ、カイ様耐えられますか」
「……耐えられん。はぁー仕方がない強制的に終わらせるか」

カイはドウリアにせっつかれて、あの二人の馬鹿ップル劇場上映中止を試みることにした。

「トカ様、そろそろ公務に戻ってください。重鎮達との夕方の会議に遅れてしまいます」

カイがもっともな理由を述べ冷静に話し掛けるが、聞こえているはずなのにトカタオは目を向ける事もなく完全にカイを無視して、ララとの甘い時間を続行している。
その様子にムッとするカイだが、『俺は大人だ、童貞トカ様なんか怒らない』と魔法の呪文を心の中で三回唱えて心を落ち着かせる。心が落ち着いた後、再度大人の対応でトカタオを説得することにした。
カイは口角をこれでもかと上げ、般若の笑顔を張り付けて声掛けをする。---これが大人の対応?

「トカ様、もうお腹いっぱいになっていますよね。それ以上食べたら豚王子になります。でもそんな事気にする必要はないですか。愛があればなんでも乗り越えられるものですから。豚でも公務を無視する馬鹿でもこの年まで童貞でも問題なしですね。それに夜ララ様の姿絵を片手に、」
「カ、カイ!止めろ。行くから、行く!それ以上口を開くなー」

トカタオはグアッともの凄い形相で振り返りながら、トカタオの諸事情を暴露しようとしているカイを必死に止めている。…カイが暴露しようとしていた内容が分かるというものである。
ドウリアは手に持っているお盆を真っ二つにへし折り、冷たい眼差しを王子に向け『ケッ、この変態王子が。腐ってもげろ』と呟いている。もはや王子に対する侍女の態度ではない。

幸いな事に耳年増ララルーアはカイが何を言おうとしていたのか分かっていない。『ねえねえ、カイ。絵姿片手にな~に?気になるから言って』とわくわくしながらカイの続きを待っている。ララは完全に良い事を言われると勘違いしている。自分が夜のおかずになっていたとは気づいていない、きっと良い子のララは夜のおかずの意味も知らないのだろうが…。

これ以上自分の行動が暴露されたら一巻の終わりだと分かっているトカタオは慌てて部屋を出て行こうとする。

「ラ、ララ。すまん、急ぎの公務があったんだ。また夜に竜力を与えに来る、じゃあまたな」
「公務なら仕方がないよね。トカ、頑張ってね。でもカイ行く前に続きを教えて、」

ララが続きを催促している途中で、トカタオは無理矢理カイを俵担ぎしてあっという間に出ていってしまった。

「あれ~、どうしたのかな。そんなに時間が迫っていたのかな?」
「ララ様、きっとそうでしょう。気になさらずに水槽で泳がれてはどうですか」
「うん、そうするね。たくさん食べたから運動してカロリー消費をしなくっちゃ」

えい、えい、えい!勢いよく洋服を脱いで、それポヨヨ~ン!愛くるしいプニプニ竜体に変化し、ジャボン!
ララは元気よく水槽に飛び込み、スーイスイと無邪気に泳ぎ始めた。
ドウリアはそんなララを確認すると、扉近くにある棚の引き出しから大きな瓶を持ち出しそれを片手に抱えて先ほど王子が出ていった扉を開けた。

右手を瓶の中に突っ込み中に入っている白い粉を握り、扉の前に何度も撒いている。
バサーー、パラパラ。
バサーー、パラパラ。
『清めの塩を撒かなくては。でも変態に塩は効果があるかしらね。あぁララ様なんで変態王子を好きになったのかしら…。変態退散!』---変態は塩でも清められません。
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