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27.なにかが違う…〜ガイアロス視点〜①
「‥ロ…様、‥ガイアロス様、聞こえていますか?」
私の袖を引きながら、心配そうな表情を浮かべている私の婚約者。
どうやらずっと俺の名を呼んでいたようだ。
婚約者と一緒にお茶を飲んでいたのに、上の空だったなんて失態だった。
「申し訳ない、ルーシー」
「いいえ、気にしてません。きっとガイアロス様はお疲れなんですわ」
ルーシーは微笑みながらそう言ってくれた。
彼女は昔から誰に対しても怒り見せることはない。
大人しい性格で家族以外の人に感情を見せたりすることが苦手らしい。
会話する時も自分から話すことは殆どなく聞き役に徹していた、以前は…。
だが姉の件があってからは、自分から積極的に話そうと頑張ってくれている。
その姿は健気だと思う。
だが婚約者というよりもまだ妹のような存在にしか思えない。
嫌いではないし、ブラック伯爵家とゲート伯爵家の繋がりを考えて、元婚約者と婚約解消したあとすぐに新たな婚約を結んだ。
不満はない、ルーシーは一生懸命に私を支えようとしてくれている。
愛はなくてもそのうちに芽生えるかもしれないし、もしこのままでも良い関係は築いていける。
そもそも政略結婚で相思相愛が珍しいのだ。
…ああそうだ。
それなのにどうして私はあんな女と…。
なんで見抜けなかったんだ?!
昔の自分が信じられない。
愛していたことは覚えているが、どうして愛せていたのか不思議でならない。
それほどまでに今は強い憎しみと嫌悪しか感じられない。
顔を見るだけでも許せない。
婚約を解消できた時は心から安堵したものだ。
婚約者でなくなった今はもう無関係な相手だ。
新たな婚約者の姉ではあったが、ゲート伯爵夫妻とルーシーもあの女のことはいないものとしている。
だから私が関わることはないしゲート伯爵家を訪ねても会うことはない。
それなのに…なぜか怒りが治まらない。
どうしたんだっ!
なにを引きずっているんだ?
もうあんな女のことなんて考えたくもないっ!
ルーシーと婚約を結んだので将来の予定も変わらないまま、なにもかも順調にいっている。
なのにどうして怒りが湧いてくる?
まだあの女に振り回されているのか…。
自分の感情をコントロール出来ないのが苦しい。
こんな私にいつも寄り添い続けてくれる新たな婚約者ルーシー。
彼女は政略で結ばれた私のことを『愛している』と言う。
シシリアに怒りを向け続ける私の話しも嫌な顔ひとつせず、聞き続けてくれる。
彼女が私のすべてを受け入れてくれているのは有り難かった、心から感謝していた。
だから私も婚約者として彼女に歩み寄ろうと思っていた。
「いつも有り難う、ルーシー。君の献身には感謝しているよ。なにか欲しいものがあったら言ってくれ、贈りたいんだ。婚約者となったのだから遠慮はいらない」
嘘ではなかった、珍しい花だって宝石だって請われれば贈るつもりだった。
「ガイアロス様、嬉しいです。欲しい物はないです、でも一つだけお願いしたいことがあるのですが……」
恥ずかしがっているのか、なかなかその願い事を言おうとはしない。
「遠慮はいらないといっただろう。さあ言ってごらん、ルーシー」
「…あの…私もガイアロス様のことを『ガイア』と呼んでもいいですか…」
はにかみながらルーシーが願いを口にした。
それは簡単に叶えることが出来る願いだった。
欲がないな、それが願いなんて。
ルーシーは性格だけでなく願い事も控えめだった。そんなところが好ましいとも思った。
『もちろんだ』とそれだけ言えば、私は彼女の願いを叶えたことになる。
断る理由なんてない、だから彼女を喜ばせようと思っていた。
でもその一言がなぜか言えなかった。
私の袖を引きながら、心配そうな表情を浮かべている私の婚約者。
どうやらずっと俺の名を呼んでいたようだ。
婚約者と一緒にお茶を飲んでいたのに、上の空だったなんて失態だった。
「申し訳ない、ルーシー」
「いいえ、気にしてません。きっとガイアロス様はお疲れなんですわ」
ルーシーは微笑みながらそう言ってくれた。
彼女は昔から誰に対しても怒り見せることはない。
大人しい性格で家族以外の人に感情を見せたりすることが苦手らしい。
会話する時も自分から話すことは殆どなく聞き役に徹していた、以前は…。
だが姉の件があってからは、自分から積極的に話そうと頑張ってくれている。
その姿は健気だと思う。
だが婚約者というよりもまだ妹のような存在にしか思えない。
嫌いではないし、ブラック伯爵家とゲート伯爵家の繋がりを考えて、元婚約者と婚約解消したあとすぐに新たな婚約を結んだ。
不満はない、ルーシーは一生懸命に私を支えようとしてくれている。
愛はなくてもそのうちに芽生えるかもしれないし、もしこのままでも良い関係は築いていける。
そもそも政略結婚で相思相愛が珍しいのだ。
…ああそうだ。
それなのにどうして私はあんな女と…。
なんで見抜けなかったんだ?!
昔の自分が信じられない。
愛していたことは覚えているが、どうして愛せていたのか不思議でならない。
それほどまでに今は強い憎しみと嫌悪しか感じられない。
顔を見るだけでも許せない。
婚約を解消できた時は心から安堵したものだ。
婚約者でなくなった今はもう無関係な相手だ。
新たな婚約者の姉ではあったが、ゲート伯爵夫妻とルーシーもあの女のことはいないものとしている。
だから私が関わることはないしゲート伯爵家を訪ねても会うことはない。
それなのに…なぜか怒りが治まらない。
どうしたんだっ!
なにを引きずっているんだ?
もうあんな女のことなんて考えたくもないっ!
ルーシーと婚約を結んだので将来の予定も変わらないまま、なにもかも順調にいっている。
なのにどうして怒りが湧いてくる?
まだあの女に振り回されているのか…。
自分の感情をコントロール出来ないのが苦しい。
こんな私にいつも寄り添い続けてくれる新たな婚約者ルーシー。
彼女は政略で結ばれた私のことを『愛している』と言う。
シシリアに怒りを向け続ける私の話しも嫌な顔ひとつせず、聞き続けてくれる。
彼女が私のすべてを受け入れてくれているのは有り難かった、心から感謝していた。
だから私も婚約者として彼女に歩み寄ろうと思っていた。
「いつも有り難う、ルーシー。君の献身には感謝しているよ。なにか欲しいものがあったら言ってくれ、贈りたいんだ。婚約者となったのだから遠慮はいらない」
嘘ではなかった、珍しい花だって宝石だって請われれば贈るつもりだった。
「ガイアロス様、嬉しいです。欲しい物はないです、でも一つだけお願いしたいことがあるのですが……」
恥ずかしがっているのか、なかなかその願い事を言おうとはしない。
「遠慮はいらないといっただろう。さあ言ってごらん、ルーシー」
「…あの…私もガイアロス様のことを『ガイア』と呼んでもいいですか…」
はにかみながらルーシーが願いを口にした。
それは簡単に叶えることが出来る願いだった。
欲がないな、それが願いなんて。
ルーシーは性格だけでなく願い事も控えめだった。そんなところが好ましいとも思った。
『もちろんだ』とそれだけ言えば、私は彼女の願いを叶えたことになる。
断る理由なんてない、だから彼女を喜ばせようと思っていた。
でもその一言がなぜか言えなかった。
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