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34.首謀者として…
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私は襲撃事件の目撃者として聞き取り調査に協力はしていたけれども、調査そのものには関与はしていなかった。それは王妃に限ったことではなく側妃も同じだった。
だから調査の結果はまだ知らない。
でも周りの視線から予想はできる。
――たぶん…、私は何らかの形で関与していると判断された。
「ランダ第一王子殺害計画の首謀者として身柄を拘束させていただきます」
「事実無根です、身に覚えはありません」
アンレイと共にやって来た宰相の言葉を私ははっきりと否定する。
犯罪に関与していたかどうかなんて私自身が一番良く分かっている。
――後ろめたいことは一切ない。
認めない私に宰相がなにかを言おうとしたが、それをアンレイが手で制す。
「……調査の結果辿り着いた答えは君だった、ジュンリヤ。愛しているからと言って庇うことは出来ないんだ、…すまない。私は国王として臣下と民を守らなければならないが、夫としてはできる限りのことをするつもりだ」
彼の声音には苦しさが滲み出ていた。
彼は嘘はついていないし、心からそう思っているのだろう。
だから謝っているのだ『君が本当に関与したのか?』と当たり前のことを愛する王妃に尋ねもせずに…。
ねえ、愛しているってあなたにとって何なのかしら…。
信じていないのに愛せるのだろうか。
愛しているのに信じようともしないのだろうか。
人の感情は複雑だから愛する形もそれぞれ違うのは分かっている。
でも彼の愛は私には到底理解できない。
――理解したくもない。
私はきつい眼差しをアンレイに向ける。
そんな私を見て彼は更に苦しそうな表情になる。
彼は私を思って苦しんでいるのではないのだろう、ただ自分が苦しいだけ。
宰相は私にこれからのことを説明し始める。
「明日の午後には隣国側に今回の調査結果を報告し、我が国の対応を説明する予定です。王妃様にはそれまであの離宮で過ごしていただきます」
あの離宮とは罪を犯した王族を捕られておく場所だ。
それなりに豪華な部屋だが、逃げ出せないようになっている王族専用の牢獄。
つまり私は完全に黒だと思われている。
「分かりました。でも私は事件に一切関与はしていません。だから隣国側にもそう主張するつもりです」
この場では無駄な抵抗はしない。
でも黙っていたら王妃は罪を認めたと周囲は都合よく解釈するのだろう。
そうなったら領地にいる弟も白い目で見られることになる。
――そんなこと受け入れられない。
それにクローナとも約束した。何かあった被っている猫とさよならすると。
だから毅然とした態度でいた。
あなた達が間違っていようとも私には関係はない。
流されるつもりも、ただ俯いているつもりもないと示すために。
「王妃を離宮に連れていけ。だが決して乱暴な真似はするな、丁重に扱うんだ」
「承知しました、国王陛下」
アンレイの命によって正式に首謀者として捕らえられたのは王妃である私だった。
離宮に向かう途中で私は様々な視線にさらされる。
戸惑い、侮蔑、嫌悪、憐れみ…。
今のところ戸惑いが一番多いようだ。
厳しい表情の近衛騎士に王妃が連れられている理由は分からないが、その様子からただ事ではないと察しての戸惑いだろう。
侮蔑や嫌悪を示している者達は近衛騎士のように私が離宮に向かう理由を知っているからだ。
そして憐れみは理由を知っていて、かつ『隣国に復讐しようとした可哀想な王妃』に同情しているというところだろうか。
歩いていく私の耳にコソコソと話す声が聞こえてくる。それと比例して戸惑いの視線が違うものへと変化していくのを痛いほど感じる。
明日には戸惑いの視線は完全に消えているかもしれない。
…大丈夫よ、こんなの平気だわ。
隣国で敗戦国の王妃に向けるきつい視線、そして帰国してかは丁寧だが壁を感じてしまう態度。
私はそれらを乗り越えて今ここにいる。
その自信と私のことを本当に案じてくれている人達への想いが私を凛とさせてくれた。
離宮に着くと私は詳細な説明を要求した。明日無実だと主張しても、何も知らないままだと十分な反論が出来ないからだ。
この要求は通らないかもと危惧していたけれど、暫く経ってから宰相が自ら私のもとに足を運んでくれた。
明日には断罪が始まってしまうので時間がない。
だから無駄な会話をすることなく、どうして私が首謀者とされたのかと率直に尋ねた。
「王妃様、私は事実のみをお伝えします」
真っ直ぐに見つめる私から宰相は目を逸らすことなくそう告げてきた。
だから調査の結果はまだ知らない。
でも周りの視線から予想はできる。
――たぶん…、私は何らかの形で関与していると判断された。
「ランダ第一王子殺害計画の首謀者として身柄を拘束させていただきます」
「事実無根です、身に覚えはありません」
アンレイと共にやって来た宰相の言葉を私ははっきりと否定する。
犯罪に関与していたかどうかなんて私自身が一番良く分かっている。
――後ろめたいことは一切ない。
認めない私に宰相がなにかを言おうとしたが、それをアンレイが手で制す。
「……調査の結果辿り着いた答えは君だった、ジュンリヤ。愛しているからと言って庇うことは出来ないんだ、…すまない。私は国王として臣下と民を守らなければならないが、夫としてはできる限りのことをするつもりだ」
彼の声音には苦しさが滲み出ていた。
彼は嘘はついていないし、心からそう思っているのだろう。
だから謝っているのだ『君が本当に関与したのか?』と当たり前のことを愛する王妃に尋ねもせずに…。
ねえ、愛しているってあなたにとって何なのかしら…。
信じていないのに愛せるのだろうか。
愛しているのに信じようともしないのだろうか。
人の感情は複雑だから愛する形もそれぞれ違うのは分かっている。
でも彼の愛は私には到底理解できない。
――理解したくもない。
私はきつい眼差しをアンレイに向ける。
そんな私を見て彼は更に苦しそうな表情になる。
彼は私を思って苦しんでいるのではないのだろう、ただ自分が苦しいだけ。
宰相は私にこれからのことを説明し始める。
「明日の午後には隣国側に今回の調査結果を報告し、我が国の対応を説明する予定です。王妃様にはそれまであの離宮で過ごしていただきます」
あの離宮とは罪を犯した王族を捕られておく場所だ。
それなりに豪華な部屋だが、逃げ出せないようになっている王族専用の牢獄。
つまり私は完全に黒だと思われている。
「分かりました。でも私は事件に一切関与はしていません。だから隣国側にもそう主張するつもりです」
この場では無駄な抵抗はしない。
でも黙っていたら王妃は罪を認めたと周囲は都合よく解釈するのだろう。
そうなったら領地にいる弟も白い目で見られることになる。
――そんなこと受け入れられない。
それにクローナとも約束した。何かあった被っている猫とさよならすると。
だから毅然とした態度でいた。
あなた達が間違っていようとも私には関係はない。
流されるつもりも、ただ俯いているつもりもないと示すために。
「王妃を離宮に連れていけ。だが決して乱暴な真似はするな、丁重に扱うんだ」
「承知しました、国王陛下」
アンレイの命によって正式に首謀者として捕らえられたのは王妃である私だった。
離宮に向かう途中で私は様々な視線にさらされる。
戸惑い、侮蔑、嫌悪、憐れみ…。
今のところ戸惑いが一番多いようだ。
厳しい表情の近衛騎士に王妃が連れられている理由は分からないが、その様子からただ事ではないと察しての戸惑いだろう。
侮蔑や嫌悪を示している者達は近衛騎士のように私が離宮に向かう理由を知っているからだ。
そして憐れみは理由を知っていて、かつ『隣国に復讐しようとした可哀想な王妃』に同情しているというところだろうか。
歩いていく私の耳にコソコソと話す声が聞こえてくる。それと比例して戸惑いの視線が違うものへと変化していくのを痛いほど感じる。
明日には戸惑いの視線は完全に消えているかもしれない。
…大丈夫よ、こんなの平気だわ。
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私はそれらを乗り越えて今ここにいる。
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この要求は通らないかもと危惧していたけれど、暫く経ってから宰相が自ら私のもとに足を運んでくれた。
明日には断罪が始まってしまうので時間がない。
だから無駄な会話をすることなく、どうして私が首謀者とされたのかと率直に尋ねた。
「王妃様、私は事実のみをお伝えします」
真っ直ぐに見つめる私から宰相は目を逸らすことなくそう告げてきた。
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