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13.それぞれの決断②
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~侍女長視点~
宰相様から竜王様と番様の状況が説明された。
なんという悲劇でしょうか。獣人にとって番と巡り合うことは約束された幸せのはずなのに…。
人間である番様と竜王様が『番』なのにすれ違っていることを考えると涙が出てきてしまう。
「宰相様、私は何をすれば宜しいでしょうか?」
「君には番様付きの侍女を選んで欲しい。優秀でかつ信頼が置ける、優しい者を選んでくれ。人間である番様に寄り添うことが出来るようにな。
番様は竜王様の番だが人間なので獣人の本能はないから、無条件に竜王様に引きつけられることがないだろう。
だから婚姻を結ぶその日までにさり気なく竜王様の素晴らしさを番様にお伝えして、まだ見ぬ婚約者に愛情を抱くように仕向けて欲しい」
優秀な侍女達はたくさんいるので問題はない。けれども宰相様からの要望の後半部分は難しいものだ。
人の気持ちはその人のもの、こちらの思うように気持ちを動かしてくれるか分からない。
それに番様はまだ幼い、信頼する親の言葉などに影響されやすいはずだ。
「番様はまだ六歳とお聞きしました。ご家族と頻繁に会っていたら、どんなに竜王様が素晴らしい方だとお話ししていても、自分に寄り添ってくれるご家族の方に関心がいってしまうのでないでしょうか?
ご家族から聞く外の世界に戻りたくなって、離宮に連れて来た竜王様を恨むようになってしまうやもしれません。
…はぁ、難しいかもしれませんね」
おもわず思っている事を正直に口に出してしまった。
『家族』に対して思うところがあった訳ではない。ただ、まだ見ぬ婚約者に気持ちを向けさせる難しさを伝えたかっただけだった。
宰相様は腕を組みながら『うむ、そうか…』と黙り込んでしまう。
暫くすると宰相様から追加の指示が話された。
「ご家族との面会は当分の間控えてもらおう。確かに幼い番様にとって家族の言葉や存在は重いはずだ。
もし家族が娘と一緒に暮らせぬ不満などを番様の耳に入れたら、竜王様の印象も悪くなり、婚姻後も愛を育めんかもしれん。そうなれば竜王様の狂気は誰にも止められなくなる」
宰相様から出た言葉に素直に頷くことは出来なかった。
そこまでしなくても…と思ってしまい、やんわりと反対意見を告げる。
「ですが番様はまだ六歳です、ご家族と会えないなど耐えられないかもしれません。
ご家族にしっかりと言い含めてから番様と会うようにすれば良いのではないでしょうか?」
「万が一にも失敗など許されんのだ!これは竜王様の為だけではない、番様のお命も掛かっているのだぞ。
それを決して忘れぬでないぞ。
我々は番様と竜王様に番としての幸せな人生を歩んでもらうのが使命なのだ」
宰相様の言葉が胸に突き刺さる。
私だって竜王様と番様の幸せを望んでいる。ただ…少しだけ幼い番様のお心を心配しただけだ。
子を持つ親として…。
だがその心配に蓋をすることにする。
それは揺らぐことのない忠誠心を優先させた結果だった。
一番大切なのはお二人が番としてお幸せになることだわ。
その為には心を鬼にして僅かな不安要素も取り除きましょう。
その代わりに番様がお淋しいと感じないように誠心誠意お仕えしましょう。
自分に任せられた仕事の重圧に身が引き締まる思いがする。
「承知いたしました。侍女達にもしかっりと宰相様のお考えを言い含め、番様のお世話にあたらせましょう。
お任せください、番様が10年後に竜王様のお隣に立てるようにいたします」
私の気迫に満ちた返事を聞き、宰相様は満足げにその場を後にした。
これから忙しくなるが、可愛らしい番様に仕える幸運に気分は高揚していた。
宰相様から竜王様と番様の状況が説明された。
なんという悲劇でしょうか。獣人にとって番と巡り合うことは約束された幸せのはずなのに…。
人間である番様と竜王様が『番』なのにすれ違っていることを考えると涙が出てきてしまう。
「宰相様、私は何をすれば宜しいでしょうか?」
「君には番様付きの侍女を選んで欲しい。優秀でかつ信頼が置ける、優しい者を選んでくれ。人間である番様に寄り添うことが出来るようにな。
番様は竜王様の番だが人間なので獣人の本能はないから、無条件に竜王様に引きつけられることがないだろう。
だから婚姻を結ぶその日までにさり気なく竜王様の素晴らしさを番様にお伝えして、まだ見ぬ婚約者に愛情を抱くように仕向けて欲しい」
優秀な侍女達はたくさんいるので問題はない。けれども宰相様からの要望の後半部分は難しいものだ。
人の気持ちはその人のもの、こちらの思うように気持ちを動かしてくれるか分からない。
それに番様はまだ幼い、信頼する親の言葉などに影響されやすいはずだ。
「番様はまだ六歳とお聞きしました。ご家族と頻繁に会っていたら、どんなに竜王様が素晴らしい方だとお話ししていても、自分に寄り添ってくれるご家族の方に関心がいってしまうのでないでしょうか?
ご家族から聞く外の世界に戻りたくなって、離宮に連れて来た竜王様を恨むようになってしまうやもしれません。
…はぁ、難しいかもしれませんね」
おもわず思っている事を正直に口に出してしまった。
『家族』に対して思うところがあった訳ではない。ただ、まだ見ぬ婚約者に気持ちを向けさせる難しさを伝えたかっただけだった。
宰相様は腕を組みながら『うむ、そうか…』と黙り込んでしまう。
暫くすると宰相様から追加の指示が話された。
「ご家族との面会は当分の間控えてもらおう。確かに幼い番様にとって家族の言葉や存在は重いはずだ。
もし家族が娘と一緒に暮らせぬ不満などを番様の耳に入れたら、竜王様の印象も悪くなり、婚姻後も愛を育めんかもしれん。そうなれば竜王様の狂気は誰にも止められなくなる」
宰相様から出た言葉に素直に頷くことは出来なかった。
そこまでしなくても…と思ってしまい、やんわりと反対意見を告げる。
「ですが番様はまだ六歳です、ご家族と会えないなど耐えられないかもしれません。
ご家族にしっかりと言い含めてから番様と会うようにすれば良いのではないでしょうか?」
「万が一にも失敗など許されんのだ!これは竜王様の為だけではない、番様のお命も掛かっているのだぞ。
それを決して忘れぬでないぞ。
我々は番様と竜王様に番としての幸せな人生を歩んでもらうのが使命なのだ」
宰相様の言葉が胸に突き刺さる。
私だって竜王様と番様の幸せを望んでいる。ただ…少しだけ幼い番様のお心を心配しただけだ。
子を持つ親として…。
だがその心配に蓋をすることにする。
それは揺らぐことのない忠誠心を優先させた結果だった。
一番大切なのはお二人が番としてお幸せになることだわ。
その為には心を鬼にして僅かな不安要素も取り除きましょう。
その代わりに番様がお淋しいと感じないように誠心誠意お仕えしましょう。
自分に任せられた仕事の重圧に身が引き締まる思いがする。
「承知いたしました。侍女達にもしかっりと宰相様のお考えを言い含め、番様のお世話にあたらせましょう。
お任せください、番様が10年後に竜王様のお隣に立てるようにいたします」
私の気迫に満ちた返事を聞き、宰相様は満足げにその場を後にした。
これから忙しくなるが、可愛らしい番様に仕える幸運に気分は高揚していた。
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