19 / 85
19.壊れた番①
視線を宙に彷徨わせながら意図せずに吐き出してしまった心の声。
「……寛大な王でなくて良かったのに。
番である私だけを大切にしてくれる人だったら……、良かったわ。そうしたら私は…」
誰かに聞かせたかったわけではない。ただ一睡もできずに朦朧としている私は望みを言葉という形にしてしまった。
出てしまった言葉はなかったことには出来ない、周りにいる侍女達にしっかりと聞かれてしまったから。
そして次の瞬間、私のささやかな望みは周りから全否定された。
「番様、あんなに寛大な竜王様を否定されてはいけませんわ」
「番に執着し他の人を虫けらのように扱う愚かな獣人も稀にいるのですよ。番様だけでなくすべての民にお優しい竜王様の番になった幸運を喜ばず、『自分だけを』というなんて我が儘というものです」
「どうかそのようなお考えはお捨て下さいませ」
優しい口調だけれども、私の考えを我が儘と決めつけ改めさせようと何度も諭される。
彼女達は私が昨夜なにを知ったのかを知らない。
私が兎獣人の聴力を持ったことを教えてないのだから当然だ。
でも彼女達はきっと昨夜私が知ったことを知っていたはず…、ずっと前から。
知らないわけがない。
知らなかったのは私だけ…、番である私だけ。
『大切な番様』になんの意味があるのかしら?
ふふふ…、何も知らない知らされない。
大切にするって、無知でいさせることなの…。
最初は彼女達の言葉に心の中で反発した。
『私は番が何をしているのか知っているのよ、あれを寛大だと言うの?違うでしょう、あれは裏切りよ』と。
でもたくさんの侍女達に囲まれ繰り返される『番様は間違っておりますわ』という呪詛のような言葉はいつしか私の心の奥底まで沁み込んでいった。
どこまでも竜王側に寄り添った侍女達。正しいことを優しくとても辛抱強く、『番様』である私に教えてくれる。
善良な彼らに囲まれているだけなのに、じわりじわりと心が悲鳴を上げて来る。
何が正しくて、何が間違っているか曖昧になってくる。
…そうね、私が悪かったわ。
自分のことしか考えない醜い私。
心が狭く辛いと嘆くだけの私。
間違っているのは…私だけ。
だって、後宮にいる女性達は竜王様を慰めているじゃない。
竜王様は彼女達には話し掛けていたわ。
私には会った時の一度だけしか話し掛けていないのに。
そうか…竜王様は今幸せなんだわ。
番である私がいなくても…幸せなのね…。
いいえ、いない方が幸せなのね。
嫌な考えがぐるぐると頭の中を占めるようになる。
私は微笑みながら侍女達に『分かったわ、ごめんなさいね』とだけ告げると自室で一人になる事を望んだ。
侍女達は反省した私の言葉は否定せずに、部屋からそっと出ていってくれた。
「……寛大な王でなくて良かったのに。
番である私だけを大切にしてくれる人だったら……、良かったわ。そうしたら私は…」
誰かに聞かせたかったわけではない。ただ一睡もできずに朦朧としている私は望みを言葉という形にしてしまった。
出てしまった言葉はなかったことには出来ない、周りにいる侍女達にしっかりと聞かれてしまったから。
そして次の瞬間、私のささやかな望みは周りから全否定された。
「番様、あんなに寛大な竜王様を否定されてはいけませんわ」
「番に執着し他の人を虫けらのように扱う愚かな獣人も稀にいるのですよ。番様だけでなくすべての民にお優しい竜王様の番になった幸運を喜ばず、『自分だけを』というなんて我が儘というものです」
「どうかそのようなお考えはお捨て下さいませ」
優しい口調だけれども、私の考えを我が儘と決めつけ改めさせようと何度も諭される。
彼女達は私が昨夜なにを知ったのかを知らない。
私が兎獣人の聴力を持ったことを教えてないのだから当然だ。
でも彼女達はきっと昨夜私が知ったことを知っていたはず…、ずっと前から。
知らないわけがない。
知らなかったのは私だけ…、番である私だけ。
『大切な番様』になんの意味があるのかしら?
ふふふ…、何も知らない知らされない。
大切にするって、無知でいさせることなの…。
最初は彼女達の言葉に心の中で反発した。
『私は番が何をしているのか知っているのよ、あれを寛大だと言うの?違うでしょう、あれは裏切りよ』と。
でもたくさんの侍女達に囲まれ繰り返される『番様は間違っておりますわ』という呪詛のような言葉はいつしか私の心の奥底まで沁み込んでいった。
どこまでも竜王側に寄り添った侍女達。正しいことを優しくとても辛抱強く、『番様』である私に教えてくれる。
善良な彼らに囲まれているだけなのに、じわりじわりと心が悲鳴を上げて来る。
何が正しくて、何が間違っているか曖昧になってくる。
…そうね、私が悪かったわ。
自分のことしか考えない醜い私。
心が狭く辛いと嘆くだけの私。
間違っているのは…私だけ。
だって、後宮にいる女性達は竜王様を慰めているじゃない。
竜王様は彼女達には話し掛けていたわ。
私には会った時の一度だけしか話し掛けていないのに。
そうか…竜王様は今幸せなんだわ。
番である私がいなくても…幸せなのね…。
いいえ、いない方が幸せなのね。
嫌な考えがぐるぐると頭の中を占めるようになる。
私は微笑みながら侍女達に『分かったわ、ごめんなさいね』とだけ告げると自室で一人になる事を望んだ。
侍女達は反省した私の言葉は否定せずに、部屋からそっと出ていってくれた。
あなたにおすすめの小説
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚
きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」
新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。
それもそのはず。
2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。
でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。
美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。
だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。
どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。
すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?
焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
嘘つきな貴方を捨てさせていただきます
梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。
「さっさと死んでくれ」
フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。
愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。
嘘つきな貴方なんて、要らない。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
11/27HOTランキング5位ありがとうございます。
※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。
1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。
完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。
私の存在
戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。
何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。
しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。
しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…
いつも隣にいる
はなおくら
恋愛
心の感情を出すのが苦手なリチアには、婚約者がいた。婚約者には幼馴染がおり常にリチアの婚約者の後を追う幼馴染の姿を見ても羨ましいとは思えなかった。しかし次第に婚約者の気持ちを聞くうちに変わる自分がいたのだった。
公爵家の養女は静かに爪を研ぐ 〜元々私のものですので、全て返していただきます〜
しましまにゃんこ
恋愛
リヴィエール公爵家に養女として引き取られた少女、アリサ・リヴィエール。
彼女は華やかな公爵家の嫡子マリアとは対照的に、家でも学園でもひっそりと息を潜めて生きていた。
養女とは言っても、成人と同時に修道院へ入ることが決まっており、アリサに残された時間は僅かだった。
アリサはただ静かに耐えていた。
——すべてを取り戻す、その時まで。
実は彼女こそが、前公爵が遺した真の娘であり、水の加護を持つリヴィエール公爵家の正統なる後継者だった。不当に奪い取られた地位と立場。
アリサは静かに時を待つ。
一方、王太子リュシアン・ルミエールは、傲慢な婚約者マリアに違和感を抱きつつ、公爵家に隠された不正の匂いを嗅ぎ取っていく。
やがて二人の思惑は重なり、運命の卒業パーティーが幕を開ける。
奪われた名前も、地位も、誇りも——
元々、私のものなので。まとめて返してもらいます。
静かに爪を研いできた養女の、逆転ざまぁと溺愛ロマンス。
完結保証&毎日2話もしくは3話更新。
最終話まで予約投稿済み。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
完結 この手からこぼれ落ちるもの
ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。
長かった。。
君は、この家の第一夫人として
最高の女性だよ
全て君に任せるよ
僕は、ベリンダの事で忙しいからね?
全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ
僕が君に触れる事は無いけれど
この家の跡継ぎは、心配要らないよ?
君の父上の姪であるベリンダが
産んでくれるから
心配しないでね
そう、優しく微笑んだオリバー様
今まで優しかったのは?