63 / 85
62.両親の想い②
しおりを挟む
「……そうだ、アンの人生を勝手に決めたくない。だが王宮に、あの男の傍に、なんて行かせたくない!分かるだろう、あそこはアンを壊した場所だ。
それにアンは番の感覚はなくてもアイツは違う。またアンを閉じ込め苦しめるかもしれない」
そうだ、アイツなんて信用できない。傍にいなければこの短剣であの子を守ることも出来ないんだ。
アンを尊重したい気持ちと守りたい気持ちがぶつかり合う。
いったいどうすればいいんだ…。
そんな俺の背を優しく撫でながら妻は話しを続ける。
「ねえ、アンはもう21歳だわ。頑張っているし、しっかりもしてきた。いつまでも手元に置いておくのは私達の我が儘かもしれないわ。そりゃ、あの子が心配だし出来たら一生傍に置いておきたい。
でもね、それじゃ今度は私達がアンを鳥籠に閉じ込めることになるわ。
それでアンは幸せになれるの?
それがあの子の幸せだと本当に思える?」
妻が言いたいことは十分すぎるほど分かっている。
分かっているけど…不安なんだ。
あの子がまた傷つかないかと。
「どうすればいいのか分からないんだ」
正直に思ったままの気持ちを妻に伝える。父親として不甲斐ないが、弱い自分こそが今の俺だ。
「そうね、私も分からないわ。5年前のあの時と同じ。だからあの時決めたことを守らない?『アンの人生はアン自身に決めさせる』。
あの子は記憶を失う前とは違うわ、…それに私達もね。そうでしょう?
失敗しても大丈夫よ、今度は私達家族がいるんですもの。
それにね、あの男が何かしたら今度こそこれを使いましょう、ふふふ」
そう言いながら妻は私の腰に差してある竜殺剣を指さして『ねっ?』て微笑んでいる。
その横顔は逞しい母親の顔だった。
可愛い娘達の逞しさはどこからと常々思っていたが…、まさか優しい妻から引き継いだものだったとは。
俺が笑いながら泣いていると妻が抱き締めてきて『信じて見守りましょう』と優しく耳元で囁いてくれた。
アンが決めた道を応援することを決めると夫婦で夜遅くまで話し合った。
そしてアンを王宮に送り出す為の条件を決めた。
その条件はただ一つ。
『困った事があったら一人で我慢せずに家族を頼ること』
この条件を守ることを約束させアンを王宮へと送り出すことにしたのだった。
それにアンは番の感覚はなくてもアイツは違う。またアンを閉じ込め苦しめるかもしれない」
そうだ、アイツなんて信用できない。傍にいなければこの短剣であの子を守ることも出来ないんだ。
アンを尊重したい気持ちと守りたい気持ちがぶつかり合う。
いったいどうすればいいんだ…。
そんな俺の背を優しく撫でながら妻は話しを続ける。
「ねえ、アンはもう21歳だわ。頑張っているし、しっかりもしてきた。いつまでも手元に置いておくのは私達の我が儘かもしれないわ。そりゃ、あの子が心配だし出来たら一生傍に置いておきたい。
でもね、それじゃ今度は私達がアンを鳥籠に閉じ込めることになるわ。
それでアンは幸せになれるの?
それがあの子の幸せだと本当に思える?」
妻が言いたいことは十分すぎるほど分かっている。
分かっているけど…不安なんだ。
あの子がまた傷つかないかと。
「どうすればいいのか分からないんだ」
正直に思ったままの気持ちを妻に伝える。父親として不甲斐ないが、弱い自分こそが今の俺だ。
「そうね、私も分からないわ。5年前のあの時と同じ。だからあの時決めたことを守らない?『アンの人生はアン自身に決めさせる』。
あの子は記憶を失う前とは違うわ、…それに私達もね。そうでしょう?
失敗しても大丈夫よ、今度は私達家族がいるんですもの。
それにね、あの男が何かしたら今度こそこれを使いましょう、ふふふ」
そう言いながら妻は私の腰に差してある竜殺剣を指さして『ねっ?』て微笑んでいる。
その横顔は逞しい母親の顔だった。
可愛い娘達の逞しさはどこからと常々思っていたが…、まさか優しい妻から引き継いだものだったとは。
俺が笑いながら泣いていると妻が抱き締めてきて『信じて見守りましょう』と優しく耳元で囁いてくれた。
アンが決めた道を応援することを決めると夫婦で夜遅くまで話し合った。
そしてアンを王宮に送り出す為の条件を決めた。
その条件はただ一つ。
『困った事があったら一人で我慢せずに家族を頼ること』
この条件を守ることを約束させアンを王宮へと送り出すことにしたのだった。
256
あなたにおすすめの小説
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
好きでした、婚約破棄を受け入れます
たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……?
※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
さようなら、私の愛したあなた。
希猫 ゆうみ
恋愛
オースルンド伯爵家の令嬢カタリーナは、幼馴染であるロヴネル伯爵家の令息ステファンを心から愛していた。いつか結婚するものと信じて生きてきた。
ところが、ステファンは爵位継承と同時にカールシュテイン侯爵家の令嬢ロヴィーサとの婚約を発表。
「君の恋心には気づいていた。だが、私は違うんだ。さようなら、カタリーナ」
ステファンとの未来を失い茫然自失のカタリーナに接近してきたのは、社交界で知り合ったドグラス。
ドグラスは王族に連なるノルディーン公爵の末子でありマルムフォーシュ伯爵でもある超上流貴族だったが、不埒な噂の絶えない人物だった。
「あなたと遊ぶほど落ちぶれてはいません」
凛とした態度を崩さないカタリーナに、ドグラスがある秘密を打ち明ける。
なんとドグラスは王家の密偵であり、偽装として遊び人のように振舞っているのだという。
「俺に協力してくれたら、ロヴィーサ嬢の真実を教えてあげよう」
こうして密偵助手となったカタリーナは、幾つかの真実に触れながら本当の愛に辿り着く。
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる