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75.アン戻る
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王宮は突然のアンの出奔に大騒ぎになっていた。
王宮で働いている人々はいつも元気に笑いながらお菓子をモグモグと頬張っていたアンの姿を思い浮かべ、『あの子はいったい何を悩んでいたんだ??』と頭を抱え悩みつつ、アンの不在を嘆き悲しんでいた。
王宮からはアンの実家に早馬で連絡を送ったが、遥か遠い地にあるためまだ折り返しの連絡は来ていない。王宮全体がたった一人の新人侍女の不在により暗い雰囲気に覆われていた。
みな上の空で業務も滞り始めてきた頃、突然アンが大荷物を抱えて元気に戻ってきたのだ。
「あれー、なんか雰囲気悪くありませんか?
なんていうか暗いっていうか重苦しいですよ。
どうしました?私が有給休暇を取っている間になにか大きな事件でもあったんですか、侍女長様?」
そう言いながら私は『お土産です、お休みをいただき有り難うございました』と郷里で有名なつぶあんのお菓子をみんなに手渡していく。
なぜかみんな一様にポカーンとした表情をしている。そんなにこのお土産は誰もが驚くぐらい王都でも有名だったんだろうか。
むむむ、田舎のお菓子も侮れないな。
「えっ…、ゆ、有給休暇…です、か…」
いつもテキパキと話す侍女長様が口籠っているけど、そこは気にしないでおく。誰だって疲れている時はある、完璧なんてありえないのだからこういう時は指摘してはいけないのだ。
とりあえず好物のつぶあんのお菓子を食べて疲れを癒して欲しいから、そっと侍女長様の手にお菓子を手渡しておく。
「はい、有り難うございました。実家に帰ってモヤモヤがすべて解決しました。急に有給休暇を取ってしまったのでご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。仕事の調整は大丈夫でしたか?」
「あっ…ええ、もちろん大丈夫です。気にしなくていいですよ。そうですかご家族と会えて良かった…ですね」
「はい!」
私と侍女長様が話している間にみんな無言でつぶあんのお菓子を食べ始めている。良かった、どうやらみんな気に入ってくれたようだ。
帰ってきたばかりなのに申し訳ないが、私は侍女長様に有給休暇の延長を申し出た。勝手なのは分かっているけど、どうしてもあと少しだけ私には時間が必要だった。
「侍女長様大変申し訳ございませんが、有給休暇をあと一日貰ってもいいでしょうか…?」
もし駄目だと言われたら辞職するつもりだった、もう記入済みの辞職願も持ってきている。素敵な職場だけれども今はそれより優先したいことがあるから、そうなっても後悔はしない。
「いいですよアン。今まで働き過ぎだったのですからゆっくりしなさい」
侍女長様は微笑みながら私の我が儘を許してくれる。そして『頼ってくれて有り難う』と私の両手を優しく握り締めて目に涙を浮かべている。
そうか、この人も苦しんでいたんだな…。
「侍女長様、有り難うございます!お言葉に甘えさせて頂きます」
丁寧に頭を下げてから、私は王宮の中心部にあるあの人の執務室へと駆けっていった。
王宮で働いている人々はいつも元気に笑いながらお菓子をモグモグと頬張っていたアンの姿を思い浮かべ、『あの子はいったい何を悩んでいたんだ??』と頭を抱え悩みつつ、アンの不在を嘆き悲しんでいた。
王宮からはアンの実家に早馬で連絡を送ったが、遥か遠い地にあるためまだ折り返しの連絡は来ていない。王宮全体がたった一人の新人侍女の不在により暗い雰囲気に覆われていた。
みな上の空で業務も滞り始めてきた頃、突然アンが大荷物を抱えて元気に戻ってきたのだ。
「あれー、なんか雰囲気悪くありませんか?
なんていうか暗いっていうか重苦しいですよ。
どうしました?私が有給休暇を取っている間になにか大きな事件でもあったんですか、侍女長様?」
そう言いながら私は『お土産です、お休みをいただき有り難うございました』と郷里で有名なつぶあんのお菓子をみんなに手渡していく。
なぜかみんな一様にポカーンとした表情をしている。そんなにこのお土産は誰もが驚くぐらい王都でも有名だったんだろうか。
むむむ、田舎のお菓子も侮れないな。
「えっ…、ゆ、有給休暇…です、か…」
いつもテキパキと話す侍女長様が口籠っているけど、そこは気にしないでおく。誰だって疲れている時はある、完璧なんてありえないのだからこういう時は指摘してはいけないのだ。
とりあえず好物のつぶあんのお菓子を食べて疲れを癒して欲しいから、そっと侍女長様の手にお菓子を手渡しておく。
「はい、有り難うございました。実家に帰ってモヤモヤがすべて解決しました。急に有給休暇を取ってしまったのでご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。仕事の調整は大丈夫でしたか?」
「あっ…ええ、もちろん大丈夫です。気にしなくていいですよ。そうですかご家族と会えて良かった…ですね」
「はい!」
私と侍女長様が話している間にみんな無言でつぶあんのお菓子を食べ始めている。良かった、どうやらみんな気に入ってくれたようだ。
帰ってきたばかりなのに申し訳ないが、私は侍女長様に有給休暇の延長を申し出た。勝手なのは分かっているけど、どうしてもあと少しだけ私には時間が必要だった。
「侍女長様大変申し訳ございませんが、有給休暇をあと一日貰ってもいいでしょうか…?」
もし駄目だと言われたら辞職するつもりだった、もう記入済みの辞職願も持ってきている。素敵な職場だけれども今はそれより優先したいことがあるから、そうなっても後悔はしない。
「いいですよアン。今まで働き過ぎだったのですからゆっくりしなさい」
侍女長様は微笑みながら私の我が儘を許してくれる。そして『頼ってくれて有り難う』と私の両手を優しく握り締めて目に涙を浮かべている。
そうか、この人も苦しんでいたんだな…。
「侍女長様、有り難うございます!お言葉に甘えさせて頂きます」
丁寧に頭を下げてから、私は王宮の中心部にあるあの人の執務室へと駆けっていった。
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