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2.隣国への出張
翌日からトーマスは一週間の出張の予定が入っていた。新しい商品の販路拡大の為に隣国へと従業員四人を伴って売り込みに行くのだ。
いつもならどんなに早朝の出発でもイザベラは見送ってくれるのだが、今朝は見送りに来ることはなかった。
いつも笑顔で送り出してくれるベラがいなくて俺は淋しかったが、今回に限っては『丁度良かったのかもしれないな』と前向きに考えていた。なぜなら一緒に出張する従業員の中にあの浮気相手のミーシャも入っていたからだ。
あの話し合いの後、ミーシャと一緒に出張なのはさすがに不味いだろうと思い、父に彼女を今回の出張から外すように進言した。
「父さん、明日の出張のメンバーからミーシャを外してくれないか」
「トーマス、公私混同するな。これは仕事なんだから堂々としていればいいんだ。もしイザベラがなにか言ってきたら、夫としてガツンと言ってやれ。
元貴族だがもうお前の嫁なんだから遠慮なんてする事はない」
まだそんな事を言う父に呆れたが、急にミーシャを外すとなると他の従業員から理由を聞かれる事になる、もちろん本当の理由を話すわけにはいかないので予定通りに同行させることに決めた。
ミーシャとは数回の軽い遊びだったので、バレなくても浮気はそろそろやめるつもりだった。ベラにバレた今となっては二度と過ちを繰り返す気などなかった。なので『従業員として接するんだから同行も問題もないのかもしれないな』と俺も徐々に思い始めるようになっていた。
この時の俺は、【浮気がばれた翌日に浮気相手と一緒に出張に行く夫】のことを妻であるベラがどう感じるかなんて考えもしなかった。もう疚しい気持ちなど微塵もなかったので、ただ早く出張を終わらせて抉れたベラとの関係を修復したいと思っていた、それが出来ると信じていたのだ。
俺はあの話し合い後、気まずくてベラと会うことなく、隣国へと出発した。そして出張中の俺は販路拡大に忙しくてイザベラに手紙を出す事さえしなかった。
出張中にミーシャがあの手この手で俺とまた関係を持とうと誘ってきたのは本当に鬱陶しかった。
「ねぇ、せっかくの出張なんだから前みたいに2人で楽しみましょうよ」
「煩い、もう遊びは終わりだと言っただろう」
ミーシャにいくら誘われても二度と浮気する気は起きなかった、逆に『やっぱり愛しているのはベラだけなんだ』と俺はベラへの愛情を再確認していた。
いくら言い寄っても靡かない俺に痺れを切らしたミーシャは他の従業員の前でもあからさまな態度を取ろうとした。だが『仕事に集中しないならクビにするがいいか』と凄んだら、大人しくなった。
これでミーシャの件は片付いたと思っていたし、後はベラの機嫌を取れば万事解決だった。
ベラは普段あまり装飾品を身に付けない。もったいないからと言って、商会の若奥様なのに強請ることもしなかった。だが今回の出張ではちょっと奮発して誕生石の付いたネックレスをお土産に買って帰ることにした。
(口に出さなくても、これで俺の謝罪の意思を分かってくれるよな。10年間も夫婦をやっているんだから)
俺は隣国一の宝石店でベラに似合う深紅のガーネットのネックレスを見つけた。これを手に取った瞬間、ネックレスを首にかけ喜んでいるベラの顔しか思い浮かばなかった。
(うん、これだ!これならきっと喜んでくれるぞ)
俺はそのネックレスと家族へのお土産を手に一週間の出張を終え、我が家へと戻っていった。
販路拡大も上手くいき素晴らしい土産まで見つかったので、行きと違い帰りは足取り軽く従業員たちと雑談を楽しみながら馬車に揺られていた。
いつもならどんなに早朝の出発でもイザベラは見送ってくれるのだが、今朝は見送りに来ることはなかった。
いつも笑顔で送り出してくれるベラがいなくて俺は淋しかったが、今回に限っては『丁度良かったのかもしれないな』と前向きに考えていた。なぜなら一緒に出張する従業員の中にあの浮気相手のミーシャも入っていたからだ。
あの話し合いの後、ミーシャと一緒に出張なのはさすがに不味いだろうと思い、父に彼女を今回の出張から外すように進言した。
「父さん、明日の出張のメンバーからミーシャを外してくれないか」
「トーマス、公私混同するな。これは仕事なんだから堂々としていればいいんだ。もしイザベラがなにか言ってきたら、夫としてガツンと言ってやれ。
元貴族だがもうお前の嫁なんだから遠慮なんてする事はない」
まだそんな事を言う父に呆れたが、急にミーシャを外すとなると他の従業員から理由を聞かれる事になる、もちろん本当の理由を話すわけにはいかないので予定通りに同行させることに決めた。
ミーシャとは数回の軽い遊びだったので、バレなくても浮気はそろそろやめるつもりだった。ベラにバレた今となっては二度と過ちを繰り返す気などなかった。なので『従業員として接するんだから同行も問題もないのかもしれないな』と俺も徐々に思い始めるようになっていた。
この時の俺は、【浮気がばれた翌日に浮気相手と一緒に出張に行く夫】のことを妻であるベラがどう感じるかなんて考えもしなかった。もう疚しい気持ちなど微塵もなかったので、ただ早く出張を終わらせて抉れたベラとの関係を修復したいと思っていた、それが出来ると信じていたのだ。
俺はあの話し合い後、気まずくてベラと会うことなく、隣国へと出発した。そして出張中の俺は販路拡大に忙しくてイザベラに手紙を出す事さえしなかった。
出張中にミーシャがあの手この手で俺とまた関係を持とうと誘ってきたのは本当に鬱陶しかった。
「ねぇ、せっかくの出張なんだから前みたいに2人で楽しみましょうよ」
「煩い、もう遊びは終わりだと言っただろう」
ミーシャにいくら誘われても二度と浮気する気は起きなかった、逆に『やっぱり愛しているのはベラだけなんだ』と俺はベラへの愛情を再確認していた。
いくら言い寄っても靡かない俺に痺れを切らしたミーシャは他の従業員の前でもあからさまな態度を取ろうとした。だが『仕事に集中しないならクビにするがいいか』と凄んだら、大人しくなった。
これでミーシャの件は片付いたと思っていたし、後はベラの機嫌を取れば万事解決だった。
ベラは普段あまり装飾品を身に付けない。もったいないからと言って、商会の若奥様なのに強請ることもしなかった。だが今回の出張ではちょっと奮発して誕生石の付いたネックレスをお土産に買って帰ることにした。
(口に出さなくても、これで俺の謝罪の意思を分かってくれるよな。10年間も夫婦をやっているんだから)
俺は隣国一の宝石店でベラに似合う深紅のガーネットのネックレスを見つけた。これを手に取った瞬間、ネックレスを首にかけ喜んでいるベラの顔しか思い浮かばなかった。
(うん、これだ!これならきっと喜んでくれるぞ)
俺はそのネックレスと家族へのお土産を手に一週間の出張を終え、我が家へと戻っていった。
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