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15.王子は自覚する?
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舞踏会が終わり静まり返った王城。
俺は用もないのに昼間いた庭園になぜか足を運んでいた。
人払いはしていたが、護衛騎士であるケイだけは少し離れてついて来ている。
何をするでもなくただ立っている。
自分でも何がしたいのか分からない。
別に考えるつもりなどないのに、あの失礼な令嬢とのやり取りが途切れることなく頭に浮かんでくる。
媚びない態度に無礼な言葉、それと天然なのだろうか、あのとぼけた様子。
腹は立たない、それよりもにやけてしまう。
そして舞踏会で会えなかったことがなぜか辛い。別に会わなくてもいい相手なのに…。
『はあーーー』
もう何度目か分からないため息をつく。
なんでこんなにもため息が出るのだろうか。理由は分からないが、胸の苦しさは増している気がする。
暫くするとケイが静かに近づいてきた。
「スナイル様。どうかなさいましたか?」
その言葉にムッとする。
ケイは訊ねている体を取っているが、俺がどうしてこうなっているのか知っているといった表情をしている。
くっそ、俺自身が分かっていないのに。
なんでケイはお見通しなんだっ。
一年前から護衛騎士を勤めているケイ・ガードナー。
特別に物知りとかではないが、彼は人の機敏に聡い。決してそれを前面に出してくることはないが、さり気ない気遣いや言葉で周囲からの信頼は厚い。俺にとって彼は護衛以上の存在になっていた。
歳は俺と同じだが、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
きっとそれは彼の幼少期の体験も関係しているのだろう。
彼を抜擢する前に経歴等すべて調査したので知っている、穏やかで真っ直ぐな性格からは想像できないが幼少期は少々複雑な環境で育っているのだ。
分かっているのなら敢えて訊ねなくてもいいだろうに。
それが彼なりの気遣いからだと分かっていても、今日はどうしてだか冷静ではいられない。
「はあ……、どうせ分かっているんだろう。
俺はあの令嬢と会ってからなんか調子がおかしいんだ。考えようとしていないのになぜか頭に浮かんでくるし、こうギュッと胸が苦しくて、うまく言えないがもやもやというかイラッとするような…。
あーーー、何がどうなっているのかさっぱり分からん!
ケイ、お前はどうせ分かってるんだろう?はっきり言ってくれ」
俺の言葉にケイはすぐに答える。
「イラッとしているのではありません。それは胸が高鳴っているというのですよ。その理由はリリミア嬢に出逢って恋をしたからでしょう」
ケイのことは信頼しているが、そんなこと信じられなかった。
「な、何を言ってるんだっ、有りえない。
リリミア・ムーアは子爵令嬢だぞ、王子の相手として相応しくない。
俺は王子としての責務を放棄するつもりなんてない。そんな無責任な真似は絶対にしないぞ!」
そうだ、恋に溺れて愚王になるつもりはない。
自分を優先して国民を苦しませるなど愚かなことだ。
反射的にケイの言葉を否定した。
けれどもこの胸の苦しさは、彼の指摘を肯定していた。
そんな、まさか……。
だってそんなことは許されないっ。
国民に尽くすのが王子としての責務なんだから…。
ケイの言葉によって自分の気持ちの意味に気づいてしまった。
それを認めたくない自分と喜んでいる自分がいる。まるで一つの体に二人の心が入ってしまったかのようだった。
俺は用もないのに昼間いた庭園になぜか足を運んでいた。
人払いはしていたが、護衛騎士であるケイだけは少し離れてついて来ている。
何をするでもなくただ立っている。
自分でも何がしたいのか分からない。
別に考えるつもりなどないのに、あの失礼な令嬢とのやり取りが途切れることなく頭に浮かんでくる。
媚びない態度に無礼な言葉、それと天然なのだろうか、あのとぼけた様子。
腹は立たない、それよりもにやけてしまう。
そして舞踏会で会えなかったことがなぜか辛い。別に会わなくてもいい相手なのに…。
『はあーーー』
もう何度目か分からないため息をつく。
なんでこんなにもため息が出るのだろうか。理由は分からないが、胸の苦しさは増している気がする。
暫くするとケイが静かに近づいてきた。
「スナイル様。どうかなさいましたか?」
その言葉にムッとする。
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くっそ、俺自身が分かっていないのに。
なんでケイはお見通しなんだっ。
一年前から護衛騎士を勤めているケイ・ガードナー。
特別に物知りとかではないが、彼は人の機敏に聡い。決してそれを前面に出してくることはないが、さり気ない気遣いや言葉で周囲からの信頼は厚い。俺にとって彼は護衛以上の存在になっていた。
歳は俺と同じだが、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
きっとそれは彼の幼少期の体験も関係しているのだろう。
彼を抜擢する前に経歴等すべて調査したので知っている、穏やかで真っ直ぐな性格からは想像できないが幼少期は少々複雑な環境で育っているのだ。
分かっているのなら敢えて訊ねなくてもいいだろうに。
それが彼なりの気遣いからだと分かっていても、今日はどうしてだか冷静ではいられない。
「はあ……、どうせ分かっているんだろう。
俺はあの令嬢と会ってからなんか調子がおかしいんだ。考えようとしていないのになぜか頭に浮かんでくるし、こうギュッと胸が苦しくて、うまく言えないがもやもやというかイラッとするような…。
あーーー、何がどうなっているのかさっぱり分からん!
ケイ、お前はどうせ分かってるんだろう?はっきり言ってくれ」
俺の言葉にケイはすぐに答える。
「イラッとしているのではありません。それは胸が高鳴っているというのですよ。その理由はリリミア嬢に出逢って恋をしたからでしょう」
ケイのことは信頼しているが、そんなこと信じられなかった。
「な、何を言ってるんだっ、有りえない。
リリミア・ムーアは子爵令嬢だぞ、王子の相手として相応しくない。
俺は王子としての責務を放棄するつもりなんてない。そんな無責任な真似は絶対にしないぞ!」
そうだ、恋に溺れて愚王になるつもりはない。
自分を優先して国民を苦しませるなど愚かなことだ。
反射的にケイの言葉を否定した。
けれどもこの胸の苦しさは、彼の指摘を肯定していた。
そんな、まさか……。
だってそんなことは許されないっ。
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ケイの言葉によって自分の気持ちの意味に気づいてしまった。
それを認めたくない自分と喜んでいる自分がいる。まるで一つの体に二人の心が入ってしまったかのようだった。
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