英雄の平凡な妻

矢野りと

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7.黒い噂~エドワード視点~①

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俺が『英雄』として認められてから、キャッシーと俺を取り巻く状況は一変してしまった。それも悪い方に…。

最初の変化は些細なことだったと思う。

アイラ王女が外出する際は護衛に副団長エドワード・キャンベルが指名されようになったのだ。理由は『襲撃事件のトラウマで外出に恐怖を感じている王女の繊細な心を守る為』だった。それなら外出自体を取りやめれば済む問題だが、騎士である俺にそんな権限はない。

仕方なく騎士団の通常任務から外れ外出の際は護衛に就くようになり、暫くすると『トラウマで王宮内でも恐怖を感じるので常に傍にいる様に』と王女直々に言い渡された。これには俺も流石に騎士団長に抗議をした。

「王宮内でも護衛をするように言われましたが、アイラ王女には専属護衛騎士達もおります。私が行うのはおかしいではないですか!」

「分かっている。だが王女は恐怖を拭えるのは恩人であるお前が傍にいる時だけだと言っているのだ」

「そんなのただの我が儘でしょう!襲撃のトラウマを抱えている人が、城外でお忍び視察という遊びを繰り返しますか?あの王女に振り回されるのはごめんです。城内での警護は断固辞退いたします」

アイラ王女は自分の傍にお気に入りの臣下を侍らせるので有名だ。副団長である俺が不自然にも専属護衛のような事をしていたら、囲われたと思われる。きっとやけに馴れ馴れしい態度で接してくる王女はそれを狙っているのだろが、…あの王女の態度には反吐が出る。


騎士団長と俺は無言でにらみ合う。本来、騎士団長は俺や部下に無理難題を押し付けたりせず、上からの圧力に屈せっず守ってくれる人だ。…その騎士団長の歯切れが今回は悪い。

何かある…と感じた。

「受けなければいけない理由が何かあるのですか」

「………」

「理由をおっしゃってくれなければ納得できません」

「そうだよな…理由も分からないまま受け入れられるような仕事でもないな。
分かった…理由を話そう。だが後戻りはできないぞ」

無言で頷き、話の続きを求める。

「アイラ王女が自由奔放な我が儘王女なのは周知の事実だが、みなが知らない黒い噂もあるんだ。
王女は気に入った護衛騎士や文官を自分付きにして侍らせている。これは知っているな?
だが勿論断った奴らもいる…。すると不思議なことに断った相手に不幸な出来事が起こる。この意味が分かるか?」

---つまりあの王女は自分の意のままに動かない相手には後日制裁を加えるということか。
ふん、くだらん!そう来るなら返り討ちにするだけだ。


「分かりました。背後には気をつけますのでお気遣い無用です」

「違う…そんな単純な事ではない。それなら副団長であるお前に無茶なことを言ったりしていない。
…不幸はその相手ではなく周りに起こるんだ。王女の誘いを断ったある文官は後日婚約者がならず者にたまたま襲われた。今は心を壊してその婚約者は修道院で暮らしているらしい。
それに既婚の騎士は断った直後に子供が不自然な状況で馬車に轢かれて事故死している。
つまり受けろという理由はこういうことだ」

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