英雄の平凡な妻

矢野りと

文字の大きさ
6 / 36

5.話しあい①

しおりを挟む
真夜中であったが数日ぶりにエディが屋敷に帰って来てくれた。

私はそれだけで嬉しくて仕方がなかった。これであの噂のことを聞けて、全てが解決すると信じていたから。

疲れている様子の彼に気を遣いつつも夫婦間の問題を先送りにしないために勇気を出してについて聞いてみることにした。

「あのね、ちょっと聞きたい事があるのだけどいいかしら?」

「なんだいキャッシー」

いつもと何ら変わりない様子の夫に安堵し、さり気なく話を切り出してみる。

「最近お茶会などでアイラ王女と貴方の噂を耳にするの。本当にね、馬鹿げた噂なんだけどエディが王女の新しい恋人だと言うのよ。可笑しいでしょう?
あっ、でも私はそんな噂を信じていないわよ。でも最近の貴方は帰宅も真夜中だし、帰らない事もあるでしょう…。ちょっとだけ気になってしまって…何しているのかなって…」

「ただの仕事だよ」

エディはそれしか言わず、私と目も合わせない。これまでの彼ならどんなつまらない話でも目を見て答えていてくれたのに…。それは結婚して初めて感じた違和感でもあった。
彼の返事に納得が出来なくて更に質問を続けた。

「では騎士団の副団長である貴方がアイラ王女の護衛だけをしているのは本当なの?
その為に王宮に私室まで与えられて、帰宅しない日はそこで寝泊まりしているのも事実なの?」

「…それは事実だ」

彼はこれ以上訊かれたくないようで、話を終わらせようとするかのように私を抱き締めようとする。

「もうつまらない話は止めよう。久しぶりに会えたのだからキャッシーとの時間を大切にしたい」

---誤魔化そうとしないで!
私は彼の逞しい胸を両手で押しやり、あれほど求めていたはずの抱擁を拒絶してしまう。そんな私の態度に彼も驚いたような表情をする。

「でもそれはおかしいわよね…。エディは騎士団の副団長で王女の専属護衛ではないのになぜ?それに当番制ならいざ知らず、24時間付きっきりの護衛なんて有り得ないでしょう!」

「今回はそういう仕事なんだ」

エディは下を向いてそれしか言ってくれない。

「それを信じろと言うの…。
奔放なアイラ王女の噂は私でも以前から知っているわ。お気に入りの騎士や文官を自分付きにして逢瀬を楽しんでいるって。その噂は事実よね?」

「…ああ」

エディは嘘を吐かない、その彼が以前からある王女の噂を認めた。
それならと私は恐る恐る新しい噂についても訊ねてみる。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元妻からの手紙

きんのたまご
恋愛
家族との幸せな日常を過ごす私にある日別れた元妻から一通の手紙が届く。

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

騎士の妻ではいられない

Rj
恋愛
騎士の娘として育ったリンダは騎士とは結婚しないと決めていた。しかし幼馴染みで騎士のイーサンと結婚したリンダ。結婚した日に新郎は非常召集され、新婦のリンダは結婚を祝う宴に一人残された。二年目の結婚記念日に戻らない夫を待つリンダはもう騎士の妻ではいられないと心を決める。 全23話。 2024/1/29 全体的な加筆修正をしました。話の内容に変わりはありません。 イーサンが主人公の続編『騎士の妻でいてほしい 』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/96163257/36727666)があります。

おしどり夫婦の茶番

Rj
恋愛
夫がまた口紅をつけて帰ってきた。お互い初恋の相手でおしどり夫婦として知られるナタリアとブライアン。 おしどり夫婦にも人にはいえない事情がある。 一話完結。『一番でなくとも』に登場したナタリアの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

貴方の知る私はもういない

藍田ひびき
恋愛
「ローゼマリー。婚約を解消して欲しい」 ファインベルグ公爵令嬢ローゼマリーは、婚約者のヘンリック王子から婚約解消を言い渡される。 表向きはエルヴィラ・ボーデ子爵令嬢を愛してしまったからという理由だが、彼には別の目的があった。 ローゼマリーが承諾したことで速やかに婚約は解消されたが、事態はヘンリック王子の想定しない方向へと進んでいく――。 ※ 他サイトにも投稿しています。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

処理中です...