英雄の平凡な妻

矢野りと

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28.つかの間の休息②

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「この三ヶ月、辛くて仕方がなかった。仕事とはいえ、キャッシーに何も話さず一方的に傷つけていた。
社交の場でも君が周りから謂れの無い中傷を受けている事も知っていた。
君が辛い思いをしているのを知っていて…でも俺は助けてもあげなかった。
それどころか俺の態度で更に傷つけた。

…すまない。

すべて俺が不甲斐ないばかりに起きた事だ。
そして大切な家族を傷つけ、危険に晒してしまった。

本当にごめん。
こんな目に合わせて…君とルイを守れなくて…。

でも…愛しているんだ、君を失いたくない。
こんな自分勝手な男の言うことは、信じてもらえないかもしれないけど、この気持ちに…嘘は…ないんだ。

もう遅いかい…キャッシー。
俺は君に許してもらえない…のかな……。
このまま君とルイを失ってしまう…のか…。
もう君は俺の事を愛していない…?」

彼が言葉を発するたびに、私の胸元は彼の目から零れ落ちているだろう涙により濡れていった。

そして私の目からも流れる涙が彼の震える肩を濡らしていく。
彼は何を言っているのだろう。自分の非を謝るだけで、一切言い訳をしていない。

---仕事だったって言い訳しなくていいの?
ちゃんと理由があるんでしょう?
きっと王子やお兄様が絡んでいるのなら、断れない状況に追い込まれていたんではないの?
望んで三か月間あんな状況にいたのではないのでしょう?

だって、あなたは王女の傍で辛そうな表情をしていた。

私はまだ何も知らされてなかったけど、今回の件や王子、騎士団長、兄の登場で大きな何かにエディも巻き込まれていたのだろうと想像出来ていた。

きっと彼は後ろめたいことは何もないはずなのに…。自分を責めてばかりいる。


「今回の事、私はとても悲しかったわ。
最初は噂や周りの言葉に振り回されて、あなたを信じることも出来なかった。
本当に馬鹿よね。大切な人の言葉より悪意に満ちた言葉に耳を傾けて…。
私、エディにも酷い態度を取っていたでしょう?
ごめんなさい」

「そんな事はない!キャッシーの態度は当然だ、何も悪くない!悪いのは俺だ」

やっぱり彼は私を一言も責めずに、自分を悪者にする。そう、エディはそういう人だった。

「でもね、お兄様と話したあと少し冷静になれて、あなたのことをちゃんと見ることが出来たのよ。
それが夜会の時なの。
あの夜会の時のこと、ちゃんと覚えている?」

ハッとして顔を上げたエディは眉を寄せ、夜会の事を思い出したくもない顔をしている。
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