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34.英雄と平凡な妻②
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「エド、今回の件が公にされず思うところもあるだろう。だがそれは混乱を防ぐためには必要な措置なんだ」
「…それは理解しております。ですがあの王女の『美談と婚姻』はどういうことでしょうか!
罪を犯した者に罰を与えず褒美を与えるのは納得がいきません」
エディが怒りを抑えながらも発言をすると、王子が口角を上げ面白いものを見つけたというような表情を見せる。
「ジェームズが気に入ってるだけの事はあるな。
お前は王子である私を前にして自分の褒美よりも正義を語るのか。
っふ、いいな、面白い。
作られた英雄が本物だったとは嬉しい誤算だ。
どうだお前のような奴には私の背を任せられる、第一王子の専属護衛騎士にならないか?」
王子の専属護衛騎士に任命されるのは、騎士として最高位であり名誉なことだ。それも王子から直接言われて断るなど考えられない。
「大変有り難い事ですがお断りいたします」
しかしエディは躊躇することなく断った。
専属護衛騎士は最高位だが仕事も激務でほぼ王子の傍に控え王宮に泊まり込む。そんな生活を家族を大切にしたい彼が望むとは思えなかった。
---でも断って大丈夫かしら…?
心配でチラッと王子の後ろに控えている兄の方を見てみるが、声を出さずにお腹を抱えて笑っているのでエディの発言は大丈夫なのだろう。
---お兄様、その態度こそ大丈夫なのですか…。
「クックック、期待以上の返事だな。
残念だが仕方がない諦めよう。
ではキャンベル伯爵夫人はどうかな?ドレスや宝飾品、欲しいものがあったら遠慮なく言ってくれ。
そうだ、私の二歳になる王女を将来キャンベル伯爵家に降嫁させるのはどうだ?子息とは年齢も釣り合うし、子息の将来も明るいぞ」
第一王子は名案だとばかりに話してくる。確かに王族と縁を結ぶチャンスは貴族なら喉から手が出るほど欲することだ。だから王子が褒美としてこの話を出してもおかしい事ではない。
きっとこの話には裏はないだろう。
返事をする前に隣にいるエディの顔を見てホッとする。彼も私と同じ考えなのが分かったからだ。だから迷うことなく返事をする。
「有り難いお話ですが、お断りいたします。
息子の将来は息子のものです。親である私達が幸せを決めつけ与えるよりは、自分の手で幸せを見つけて欲しいと考えております」
私の不敬とも言える発言に王子は眉を顰めているが、兄はその後ろで親指を立ててまたもや笑っている。
---お、お兄様、腹心がそんなんで大丈夫なのですか…。
「では…褒美はいらないということか?」
「いいえ、そうではありません。
私と夫は今回の事で学びました。周りが勝手に生み出した虚像では幸せになれないことを。
自分達の手で掴んだ今まで通りの生活を望んでおります。ですから私達は平穏を褒美として頂きたいと思います」
「っふ、平穏か!つまり私が何も与えなくても褒美を与えたという体裁を整えてくれるということか。
ハッハッハッハ!
エドワード・キャンベル、キャサリン・キャンベル。お前達は素晴らしい!この貴族社会で欲に溺れず大切なものを忘れていない。
作られた英雄は真の英雄で、平凡だと評された妻は聡明だったとはな。本来なら私の手元にぜひ置きたいが、約束は守ろう。
では褒美として平穏を与えることにしよう」
キアヌ第一王子はそう言うと後ろを振り返り兄に向かって『お前がこの二人を大切にするはずだな』と言っている。
兄も『ええ隠された宝ですから汚さないでください』と訳の分からない言葉を返している。
---お兄様と王子の会話の意味が謎だわ…。
「ああそれと、王女の『美談と婚姻』だがあれは表向きの話だ。裏では相応の罰が与えられる。
その証拠は提示できないがそれで納得してくれ。済まん、これが王族のやり方だ」
キアヌ第一王子は真剣な表情で告げてくる。私達は静かに頷きその場を後にするしかなかった。
王女の罪は公には出来ないし、表向きは幸せな結末にしか出来ない…そんなものだろう。
だがキアヌ第一王子と兄は甘くない、きっと裏で相応の罰を用意しているのは嘘ではないはずだ。
今はそれを信じるしかないし、信じたい。
「…それは理解しております。ですがあの王女の『美談と婚姻』はどういうことでしょうか!
罪を犯した者に罰を与えず褒美を与えるのは納得がいきません」
エディが怒りを抑えながらも発言をすると、王子が口角を上げ面白いものを見つけたというような表情を見せる。
「ジェームズが気に入ってるだけの事はあるな。
お前は王子である私を前にして自分の褒美よりも正義を語るのか。
っふ、いいな、面白い。
作られた英雄が本物だったとは嬉しい誤算だ。
どうだお前のような奴には私の背を任せられる、第一王子の専属護衛騎士にならないか?」
王子の専属護衛騎士に任命されるのは、騎士として最高位であり名誉なことだ。それも王子から直接言われて断るなど考えられない。
「大変有り難い事ですがお断りいたします」
しかしエディは躊躇することなく断った。
専属護衛騎士は最高位だが仕事も激務でほぼ王子の傍に控え王宮に泊まり込む。そんな生活を家族を大切にしたい彼が望むとは思えなかった。
---でも断って大丈夫かしら…?
心配でチラッと王子の後ろに控えている兄の方を見てみるが、声を出さずにお腹を抱えて笑っているのでエディの発言は大丈夫なのだろう。
---お兄様、その態度こそ大丈夫なのですか…。
「クックック、期待以上の返事だな。
残念だが仕方がない諦めよう。
ではキャンベル伯爵夫人はどうかな?ドレスや宝飾品、欲しいものがあったら遠慮なく言ってくれ。
そうだ、私の二歳になる王女を将来キャンベル伯爵家に降嫁させるのはどうだ?子息とは年齢も釣り合うし、子息の将来も明るいぞ」
第一王子は名案だとばかりに話してくる。確かに王族と縁を結ぶチャンスは貴族なら喉から手が出るほど欲することだ。だから王子が褒美としてこの話を出してもおかしい事ではない。
きっとこの話には裏はないだろう。
返事をする前に隣にいるエディの顔を見てホッとする。彼も私と同じ考えなのが分かったからだ。だから迷うことなく返事をする。
「有り難いお話ですが、お断りいたします。
息子の将来は息子のものです。親である私達が幸せを決めつけ与えるよりは、自分の手で幸せを見つけて欲しいと考えております」
私の不敬とも言える発言に王子は眉を顰めているが、兄はその後ろで親指を立ててまたもや笑っている。
---お、お兄様、腹心がそんなんで大丈夫なのですか…。
「では…褒美はいらないということか?」
「いいえ、そうではありません。
私と夫は今回の事で学びました。周りが勝手に生み出した虚像では幸せになれないことを。
自分達の手で掴んだ今まで通りの生活を望んでおります。ですから私達は平穏を褒美として頂きたいと思います」
「っふ、平穏か!つまり私が何も与えなくても褒美を与えたという体裁を整えてくれるということか。
ハッハッハッハ!
エドワード・キャンベル、キャサリン・キャンベル。お前達は素晴らしい!この貴族社会で欲に溺れず大切なものを忘れていない。
作られた英雄は真の英雄で、平凡だと評された妻は聡明だったとはな。本来なら私の手元にぜひ置きたいが、約束は守ろう。
では褒美として平穏を与えることにしよう」
キアヌ第一王子はそう言うと後ろを振り返り兄に向かって『お前がこの二人を大切にするはずだな』と言っている。
兄も『ええ隠された宝ですから汚さないでください』と訳の分からない言葉を返している。
---お兄様と王子の会話の意味が謎だわ…。
「ああそれと、王女の『美談と婚姻』だがあれは表向きの話だ。裏では相応の罰が与えられる。
その証拠は提示できないがそれで納得してくれ。済まん、これが王族のやり方だ」
キアヌ第一王子は真剣な表情で告げてくる。私達は静かに頷きその場を後にするしかなかった。
王女の罪は公には出来ないし、表向きは幸せな結末にしか出来ない…そんなものだろう。
だがキアヌ第一王子と兄は甘くない、きっと裏で相応の罰を用意しているのは嘘ではないはずだ。
今はそれを信じるしかないし、信じたい。
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