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1.花婿はコック長???
大陸の南側に位置する小国『ニギ国』。 優れた農業技術で国民は裕福ではないが安定した生活を送っている。
一方、獣人族の『オーサン国』は高い戦闘力を武器に大陸の北半分に領土を広げ繁栄している。
そんな両国は長い間必要最低限の交流のみで互いに不干渉の立場を保っていた。
しかし周辺国がきな臭くなり、軍事力が弱いニギ国は他国からの侵略の危機に。
それを回避するために軍事力の高いオーサン国に助けを求めたのである。
オーサン国としても、ニギ国が持つ優れた農業技術は喉から手が出るほど欲しいものだった。
両国の利害が一致し同盟が締結されることになった。
そしてその証として、ニギ国第一王女とオーサン国王の政略結婚が成立したのである。
*****************************
本日は、ニギ国王女シルビア・ニギとオーサン国王ギルア・オーサンの結婚式のはず…だった。
なぜか花嫁の隣には花婿ではなく王宮コック長が立っている。
そしてコック長はダラダラと脂汗を垂らし顔色が真っ青で、いつ倒れてもおかしくない状況。
そんな花婿代理を見ていると、花嫁として隣に立っているシルビアは申し訳ない気持ちになる。
(コック長、がんばれー!
恨むなら国王をですよ。こんな茶番にコック長を強制参加とは、オーサン国はブラック王宮確定ですわね)
---なぜこんな状況になっているかといえば---
国の為に政略結婚は受け入れたが、番を諦められない獣人の国王ギルア・オーサン。
そこで、番と出会えたら結婚できるようにと後宮制度を無理矢理復活にさせたのである。
後宮と認められるには、最低でも側妃が三人居なくてはいけない。
そのため、国王は正妃との婚姻前に三人の側妃を娶り既成事実を作ることにした。
そして一週間前から地方にいる側妃達を迎えに行って、各地でそれぞれと結婚式を挙げている。
本来であれば国王達一行は、二日前に城に戻っている予定であった。
そして本日、正妃との結婚式に臨んでいるはずなのに…、国王は間に合わなかった。
その理由は、王宮への帰路を側妃達とのハネムーン旅行として楽しんでいたから。
それを知った時、シルビアの中での国王の評価は決まった。
(うん、国王は『バカ』決定!)
そもそも獣人には半身というべき存在【番】がいるが、巡り合える者はほんの一握り。
ほとんどは番以外と結婚し、愛の証として互いにアルビー石の腕輪などを身に着ける。
なぜかと言うとアルビー石は番を認識出来ない効果があるので、
『これからあなただけですよ♥』という気持ちを形にして身に着けるのが、獣人国では常識なのだ。
人族の倫理観は当然一夫一婦制である。
人であるシルビアに番の感覚は分からないが、獣人の番について理解はあるつもりだ。
でも番以外との婚姻を継続する方法があるのに、それをしない国王には呆れている。
(本当に頭にくるわ。なにが、いつか巡り合うかもしれない番のためよ!エロ獣人め!
一夫一婦制の人族なめんなーー!
ほとんどのものが番以外との結婚でも幸せになる努力をするのに、なぜできない?
許すまじ国王!!)
そして正妃との結婚式に間に合いそうもない帰路途中の国王から伝令あった。
『花婿不在でも結婚式は予定通り行え』と…。
(((どうやれというんだー)))
王宮にいる臣下達の心の叫びが完全に一致した。
その命令に頭を抱え、自慢の真っ黒なウサギ耳がぺしゃりと垂れ下がってしまった宰相。
でも臣下である宰相は王命を実行するしかない。
---その結果がこの状況---
『隣の花婿がコック長???』なのである。
宰相が国王の代役を探したが誰も花婿代理をやりたい者はいなかった。
(((当然である!)))
もうこうなったら宰相が自ら代役をやるしかないと涙目になっていると、王宮コック長が目に飛び込んできた。
宰相にはその白いコック服が、もう花婿の衣装にしか見えなかった。
たまたま仕事の休憩中に式を覗きに来たのがコック長の運の尽き…。
花婿代理の出来上がりとなった。
今度はコック長が涙目になる羽目に…。
数少ない参列者もこの状況に失笑を隠しきれていない。もともと結婚で嫁ぐニギ国王女に好意的な獣人はいなかった。
大国であるオーサン国は武力を武器に栄えてきたので、国王が政略結婚を行うことは今まで無かったから。
遠方にあるニギ国からの参列者はゼロ、つまりシルビア王女は味方のいない状況でこの茶番に臨んでいる。
シルビアが隣の花婿代理をちらりと見ると、大きな体が小刻みに揺れている。
頼りないことこの上ない…、クマ獣人これでいいのか…。
(おーい、コック長。だ、大丈夫だよね…?頑張って!)
シルビアは心の中で応援してみるが、それはまったく伝わってないようだ。
二人で司祭の前に並び、婚姻の宣誓を行う。
「汝 ギルア・オーサン代理はシルビア・ニギと婚姻を結び、生涯共にすることを誓いますか?」
「……ちっ…誓います・たぶん??」
(((たぶんかい?!!!)))
教会内にいる人々は心の中でつっこんだ。
でもコック長が倒れることなく誓いの言葉をなんとか言えたことに安堵し、みんな心の中で彼を勇者認定した。
「汝 シルビア・ニギはギルア・オーサンと婚姻を結び、生涯共にすること誓いますか?」
「はい、誓います」
(NOと言えるものなら言いたい!)
「ここに二人の婚姻成立を宣言します」
荘厳な教会でシルビア王女と花婿代理の式は滞りなく(?)終わった。
本来ならこの後、王宮の広場で王女の顔見世であった…が、人がほとんどいない。
王宮内にいる臣下の十分の一程度しか集まらなかったようだ。
国王不在でも結婚式を行われるお飾りの正妃にはこんな対応で十分という臣下の心のうちが表れていた。
こんな状況だが、王宮広場での顔見世が始まった。
シルビアは数少ない臣下の前で優雅に微笑み、流暢なロート語で挨拶した。
「みなさま、私がニギ国から嫁いできましたシルビアです
獣人国の繁栄のために、正妃としての役目に邁進して参ります
慣習など慣れないことも多々あり、迷惑を掛けるとは思いますがよろしくお願いいたします」
(私が人族のシルビアよ
獣人国に政略結婚で嫁いだからには、ちゃんとお仕事だけはするからね
後宮も、愛のない政略結婚だから気にしないわ
あなたたちも臣下としての礼儀は忘れんなっつうの!!!)
シルビアの挨拶と心の声に差はあるが、耳がいい獣人とはいえ心の声までは聞こえないので問題ない…。
集まった臣下たちは形ばかりの拍手を行い、シルビアはそれに優雅に応えて本日の茶番終了。
---みんなが退出した後の教会内---
教会内には大役を終え、精根尽きているコック長が倒れていた。
今日の王宮夕食は期待できないと城の者は覚悟したのである。
一方、獣人族の『オーサン国』は高い戦闘力を武器に大陸の北半分に領土を広げ繁栄している。
そんな両国は長い間必要最低限の交流のみで互いに不干渉の立場を保っていた。
しかし周辺国がきな臭くなり、軍事力が弱いニギ国は他国からの侵略の危機に。
それを回避するために軍事力の高いオーサン国に助けを求めたのである。
オーサン国としても、ニギ国が持つ優れた農業技術は喉から手が出るほど欲しいものだった。
両国の利害が一致し同盟が締結されることになった。
そしてその証として、ニギ国第一王女とオーサン国王の政略結婚が成立したのである。
*****************************
本日は、ニギ国王女シルビア・ニギとオーサン国王ギルア・オーサンの結婚式のはず…だった。
なぜか花嫁の隣には花婿ではなく王宮コック長が立っている。
そしてコック長はダラダラと脂汗を垂らし顔色が真っ青で、いつ倒れてもおかしくない状況。
そんな花婿代理を見ていると、花嫁として隣に立っているシルビアは申し訳ない気持ちになる。
(コック長、がんばれー!
恨むなら国王をですよ。こんな茶番にコック長を強制参加とは、オーサン国はブラック王宮確定ですわね)
---なぜこんな状況になっているかといえば---
国の為に政略結婚は受け入れたが、番を諦められない獣人の国王ギルア・オーサン。
そこで、番と出会えたら結婚できるようにと後宮制度を無理矢理復活にさせたのである。
後宮と認められるには、最低でも側妃が三人居なくてはいけない。
そのため、国王は正妃との婚姻前に三人の側妃を娶り既成事実を作ることにした。
そして一週間前から地方にいる側妃達を迎えに行って、各地でそれぞれと結婚式を挙げている。
本来であれば国王達一行は、二日前に城に戻っている予定であった。
そして本日、正妃との結婚式に臨んでいるはずなのに…、国王は間に合わなかった。
その理由は、王宮への帰路を側妃達とのハネムーン旅行として楽しんでいたから。
それを知った時、シルビアの中での国王の評価は決まった。
(うん、国王は『バカ』決定!)
そもそも獣人には半身というべき存在【番】がいるが、巡り合える者はほんの一握り。
ほとんどは番以外と結婚し、愛の証として互いにアルビー石の腕輪などを身に着ける。
なぜかと言うとアルビー石は番を認識出来ない効果があるので、
『これからあなただけですよ♥』という気持ちを形にして身に着けるのが、獣人国では常識なのだ。
人族の倫理観は当然一夫一婦制である。
人であるシルビアに番の感覚は分からないが、獣人の番について理解はあるつもりだ。
でも番以外との婚姻を継続する方法があるのに、それをしない国王には呆れている。
(本当に頭にくるわ。なにが、いつか巡り合うかもしれない番のためよ!エロ獣人め!
一夫一婦制の人族なめんなーー!
ほとんどのものが番以外との結婚でも幸せになる努力をするのに、なぜできない?
許すまじ国王!!)
そして正妃との結婚式に間に合いそうもない帰路途中の国王から伝令あった。
『花婿不在でも結婚式は予定通り行え』と…。
(((どうやれというんだー)))
王宮にいる臣下達の心の叫びが完全に一致した。
その命令に頭を抱え、自慢の真っ黒なウサギ耳がぺしゃりと垂れ下がってしまった宰相。
でも臣下である宰相は王命を実行するしかない。
---その結果がこの状況---
『隣の花婿がコック長???』なのである。
宰相が国王の代役を探したが誰も花婿代理をやりたい者はいなかった。
(((当然である!)))
もうこうなったら宰相が自ら代役をやるしかないと涙目になっていると、王宮コック長が目に飛び込んできた。
宰相にはその白いコック服が、もう花婿の衣装にしか見えなかった。
たまたま仕事の休憩中に式を覗きに来たのがコック長の運の尽き…。
花婿代理の出来上がりとなった。
今度はコック長が涙目になる羽目に…。
数少ない参列者もこの状況に失笑を隠しきれていない。もともと結婚で嫁ぐニギ国王女に好意的な獣人はいなかった。
大国であるオーサン国は武力を武器に栄えてきたので、国王が政略結婚を行うことは今まで無かったから。
遠方にあるニギ国からの参列者はゼロ、つまりシルビア王女は味方のいない状況でこの茶番に臨んでいる。
シルビアが隣の花婿代理をちらりと見ると、大きな体が小刻みに揺れている。
頼りないことこの上ない…、クマ獣人これでいいのか…。
(おーい、コック長。だ、大丈夫だよね…?頑張って!)
シルビアは心の中で応援してみるが、それはまったく伝わってないようだ。
二人で司祭の前に並び、婚姻の宣誓を行う。
「汝 ギルア・オーサン代理はシルビア・ニギと婚姻を結び、生涯共にすることを誓いますか?」
「……ちっ…誓います・たぶん??」
(((たぶんかい?!!!)))
教会内にいる人々は心の中でつっこんだ。
でもコック長が倒れることなく誓いの言葉をなんとか言えたことに安堵し、みんな心の中で彼を勇者認定した。
「汝 シルビア・ニギはギルア・オーサンと婚姻を結び、生涯共にすること誓いますか?」
「はい、誓います」
(NOと言えるものなら言いたい!)
「ここに二人の婚姻成立を宣言します」
荘厳な教会でシルビア王女と花婿代理の式は滞りなく(?)終わった。
本来ならこの後、王宮の広場で王女の顔見世であった…が、人がほとんどいない。
王宮内にいる臣下の十分の一程度しか集まらなかったようだ。
国王不在でも結婚式を行われるお飾りの正妃にはこんな対応で十分という臣下の心のうちが表れていた。
こんな状況だが、王宮広場での顔見世が始まった。
シルビアは数少ない臣下の前で優雅に微笑み、流暢なロート語で挨拶した。
「みなさま、私がニギ国から嫁いできましたシルビアです
獣人国の繁栄のために、正妃としての役目に邁進して参ります
慣習など慣れないことも多々あり、迷惑を掛けるとは思いますがよろしくお願いいたします」
(私が人族のシルビアよ
獣人国に政略結婚で嫁いだからには、ちゃんとお仕事だけはするからね
後宮も、愛のない政略結婚だから気にしないわ
あなたたちも臣下としての礼儀は忘れんなっつうの!!!)
シルビアの挨拶と心の声に差はあるが、耳がいい獣人とはいえ心の声までは聞こえないので問題ない…。
集まった臣下たちは形ばかりの拍手を行い、シルビアはそれに優雅に応えて本日の茶番終了。
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