政略結婚の相手に見向きもされません

矢野りと

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閑話~静かな後宮~

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パトア妃とマアラ妃が次々と後宮から去り、今や側妃はネリーのみとなった。煌びやかな後宮も素晴らしい庭園も豪華な食事も一人では味気なく色あせて見えるのだと、二人がいなくなってからネリーは気づいた。
三人でいがみ合い、蹴落とし合い、早くいなくなれとお互い心から思っていたが、実際にいないと寂しいのだ。
ギルアが後宮を訪れなくなって二か月になるが、同じ境遇の側妃がいたからこそ、それに耐えられていたのだと痛感する毎日だ。
顧みられない側妃に価値などない。
その側妃は今やネリーただ一人。
(辛い、辛い、辛い)
毎日考えることはこればかりになった。


早くギルアの勃起不全が完治し、また足繫く後宮通いをする日を今か今かと待ち望んでいた。
そんなある日、新しい噂を耳にした。いつもならお喋り好きな下働き女の噂など聞き流していたが、今回は違った。聞き流すことなど出来なかった。
それは【国王が正妃の事を愛している】というくだらない噂だった。
聞いた時はまさかと思ったが、念のため顔馴染みの商人にお金を渡し調査を依頼した。
噂を信じていたからではない、ただ安心したかったのだ。自分はまだギルアにとって価値があると…。
後日、商人が後宮に品物を納品しに来た時、王宮での様子を教えてくれた。
驚いたことに噂は真実であった、ギルアはあんなに嫌がっていた政略結婚のお飾りの正妃に本気になっているようだ。
ギルア様が側妃達に愛情がない事など最初から知っていた、私達側妃達はギルア様が『番』と結婚する為のなのも承知していた。でも『番』が見つかる前に子供を産めば生母としての価値は永遠に続くから構わないと思っていた。
お飾りの正妃にはなんの価値もないのだから、『番』が見つかるまでは私の価値はあると信じていた。
…いつの間にか私の存在価値はなくなっていた。


ネリーは側妃になる前は狐族の領地で孤独な日々を過ごしていた。ネリーの父は族長だったが、ネリーの母は愛人でネリーが五歳の時に亡くなった。戸籍上は長女であったが、家族とは認められず、孤独に過ごしていた。そんな中、国王の側妃の話が狐族にも届いた。『側妃など愛人と一緒で不幸だ』と考えた義母は、ネリーを側妃として推薦した、誰も反対などしてくれなかった。
こうしてネリーは側妃となったのだ。
でも、ネリーは狐族の領地よりも後宮の方がましだと考えていた。
狐族の中では、族長家族から蔑ろにされている娘に居場所はなかった。
それに比べれば、後宮には側妃という明確な場所がある、ネリーの価値が認められる場所が…。
でも違った、いや違くなってしまったのだ。
愛される正妃シルビアの存在で…。


噂の真偽が分かってからは違う事を考えるようになった。
(憎い、憎い、憎い、どうやって復讐しよう)
静まり返った後宮で、ネリーは一人で静かに計画を考える。綿密に計画しなければ…、絶対に失敗は出来ないのだから。

----狐族からは要らないから後宮に送られたけど、後宮は私の唯一の場所。
今度は負けない、私の価値を取り戻すんだ。
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