虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

文字の大きさ
39 / 58

3-13 醜い言い争い

しおりを挟む
 その契約書は内容がとんでもなく酷いものだった。
モンタナ伯爵家の娘をエンブロイ侯爵の元へメイド兼愛人として向かえいれるというものであった。給金は出ず、衣服に食事は全て配給制。休みは無く、外出する事も許されない。そしてエンブロイ侯爵から伽の相手を求められれば拒否は許されず、いつでも相手に応じるという、吐き気がするほどの内容であった。

私は全ての内容に目を通すと、父を見た。

「何ですか・・・?この酷い契約書は・・これではまるで愛人どころか、奴隷に関する契約書ですね?」

「ええ・・・・。こんな非人道的な内容は初めてです。そう言えばエンブロイ侯爵は奴隷売買に携わっているという黒い噂もありますしね・・しかも彼は高利貸業も行っている。・・さては彼から借金でもされましたか?」

それを聞いた父はビクリとなった。

「ま、まあ!あ、あなた・・ひょっとして本当に借金をされたのですかっ?!」

母は驚いて父を見た。

「・・・。」

しかし父は答えない。・・・が、身体は小刻みに震えている。

「何故ですかっ?!私たちは・・それ程贅沢な暮らしはしておりませんでしたよねっ?!普通の伯爵家に比べると随分質素でみじめな暮らしをして・・耐えてきたはずですっ!なのに・・何故借金を?!」

一体、母は何を言っているのだろう?質素でみじめな暮らしをして耐えてきた?それをこの私の目の前で言えるのか?私から言わせると、父も母もカサンドラも贅沢な暮らしをしてきたとしか思えない。出来立ての食べきれない程のテーブルに並べられた料理・・なのに私に出されるのは、野菜の切れ端しか入っていないようなクズスープにカチカチに固まった固いパンのみ。しかも私に同じ料理を食べさせる気がないなら、時間をずらすか、別室で食べさせてくれれば良いのに、それすら許されずに3人の豪華な食事を前に飢え死にしないためだけに食べているだけの酷い料理。
ドレスも買ってもらえず、学校にも行かせてもらえなかったこの私の前でそんなセリフを言うなんて。

「・・ハッ!アッハハハッ!」

おかしくて笑いが出てしまう。

「な・・何です?ライザ。何がおかしいのですっ?!」

母は私を恐怖の混じった目で見る。

「ええ、おかしくて仕方がありませんわ?質素でみじめな暮らし?それではお母様のお部屋にあったあのドレスは?私の見たところ、どれも新品同様で一度も袖を通した形跡もありませんでしたよ?それに私には低能な家庭教師を付けましたが・・彼らはろくな学問を教えることも出来ませんでした。お母様、貴女はご自分の愛人をこの屋敷に入れる為に、私を使って家庭教師として連れてきたのですよね?!」

もう我慢の限界だった。母の秘密を全てぶちまけてやった。

「ラ・・・ライザ・・ッ!!お、お前という娘は・・っ!口止め料として私から金貨100枚奪っておいて・・この裏切り者っ!」

母は顔面蒼白になって言った。

「な、何だと・・?お前という女は・・いい年をして愛人を囲っておったのかっ?!しかも金貨100枚を持っていただと?!どうりで金庫の中から時々金が減っているとは思っていたが・・犯人はお前だったのかっ?!」

父は眉間に青筋を立てて母を怒鳴りつけた。

「何がいけないんですのっ?!貴方は結婚してから一度も私を顧みる事がなく・・・やっとライザを身ごもった時だって、私が泣いて頼んだからではないですかっ!あの時の屈辱は・・・今も忘れることはありません。しかも貴方の眼中にあるのはカサンドラの事ばかり。私だって誰かに愛されたいですっ!愛人の一人や二人、持っていてもいいでしょうっ?!」

母は涙をボロボロこぼしながらヒステリックに叫ぶ。

「な・・・何だと・・・っ?!お、お前・・一体何人の愛人を囲っていたのだ?!いい年をして・・恥を知れっ!恥をっ!」

母と父の言い争いはどんどん本題をずれていく。全く・・なんと醜い言い争いなのだろう?そんな醜い言い争いを何を考えているのかジュリアン侯爵は黙って見つめていたが・・・やがて手をパンッと叩いた。

その音に我に返る父と母。

「・・お2人とも、落ち着かれましたか?」

ジュリアン侯爵は笑みを浮かべて両親を見る。

「「・・・。」」

バツが悪いのか両親は黙って頷く。

「私はライザを連れて、これから役所に行ってきます。もうこれ以上私のライザをこのような醜い屋敷に置いておくわけにはいきませんからね。役所へ行って戸籍を抜いてきます。そうすれば、このモンタナ家にはもう娘はカサンドラのみという事になりますよね?」

そしてジュリアン侯爵は美しい笑みを浮かべた―。



しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

ある公爵令嬢の死に様

鈴木 桜
恋愛
彼女は生まれた時から死ぬことが決まっていた。 まもなく迎える18歳の誕生日、国を守るために神にささげられる生贄となる。 だが、彼女は言った。 「私は、死にたくないの。 ──悪いけど、付き合ってもらうわよ」 かくして始まった、強引で無茶な逃亡劇。 生真面目な騎士と、死にたくない令嬢が、少しずつ心を通わせながら 自分たちの運命と世界の秘密に向き合っていく──。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります 番外編<悪女の娘>

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
私の母は実母を陥れた悪女でした <モンタナ事件から18年後の世界の物語> 私の名前はアンジェリカ・レスタ― 18歳。判事の父と秘書を務める母ライザは何故か悪女と呼ばれている。その謎を探るために、時折どこかへ出かける母の秘密を探る為に、たどり着いた私は衝撃の事実を目の当たりにする事に―! ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・グレンツェ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

次期王妃な悪女はひたむかない

三屋城衣智子
恋愛
 公爵家の娘であるウルム=シュテールは、幼い時に見初められ王太子の婚約者となる。  王妃による厳しすぎる妃教育、育もうとした王太子との関係性は最初こそ良かったものの、月日と共に狂いだす。  色々なことが積み重なってもなお、彼女はなんとかしようと努力を続けていた。  しかし、学校入学と共に王太子に忍び寄る女の子の影が。  約束だけは違えまいと思いながら過ごす中、学校の図書室である男子生徒と出会い、仲良くなる。  束の間の安息。  けれど、数多の悪意に襲われついにウルムは心が折れてしまい――。    想いはねじれながらすれ違い、交錯する。  異世界四角恋愛ストーリー。  なろうにも投稿しています。

処理中です...