89 / 99
5-7 人として初? の食事
しおりを挟む
この時間なら旦那様と朝食を一緒に取ることが出来ますと言われて、私は父のいるダイニングルームに案内された。
「おはようございます、お父様。遅くなりまして申し訳ございません」
自分で椅子を引いて腰掛けると、目の前に座っている父親を見た。
「……」
すると何故か唖然とした様子でこちらを見ている。
「あの? どうかされましたか?」
うぅ~……丁寧な言い方をするのは……なんというか、背中がゾワゾワする。
「い、いや。驚いていたのだよ。まさかお前と一緒に朝食を取ることが出来るとは思っていもいなかったし……」
そして私を足のつま先から頭のてっぺんまで見渡す。
「お父様? どうしましたか?」
何? まさか……この身体の中身が全くの別人だと気づかれてしまったのだろうか?
内心の同様を隠しつつ、作り笑いを浮かべる。
「い、いや……サファイア。その服は何だね? どう見てもメイド服に見えるのだが……」
そう、実は私が今着ているのはメイド服なのだ。大きな違いと言えば、白いエプロンを着用していないだけである。
「はい、そうなのです。実は記憶喪失になったせいか、服の好みも変わってしまいました。部屋にあるドレスはどうしても着る気分になれなくて。そこでメイド服を着ることにしたのです」
いつの間にか私のテーブルの前には美味しそうな料理が並べられている。おお、 すごい! まるで一流ホテルの朝食メニューみたいじゃないの!
三ヶ月前までミドリムシやミルワームを食していた私に取って、フォークやスプーンを使って食事をする日がやってくるなんて……!
「い……頂きます!」
言うや否や、私は早速フワフワのオムレツを頂くことにした。スプーンですくって口に入れてみる。
「う~ん……美味しい!」
思わず顔がにやけてしまう。すると父親が首を傾げる。
「いただきます……? 今の言葉は何だね?」
「あ、それは食事を食べるときに使う言葉でして……」
そこで気付いた。もしや、この世界には食事を食べるときには『いただきます』と言う言葉は存在しないのでは……?
「どうした? サファイア?」
「い、いえ。なんでもありません。それにしても美味しいお食事ですね~。家族団らんの食事というのは」
誤魔化す為にパンを手に取り、バターを塗る。
「ああ、そうだな。何しろ家族は私とお前の二人きりだからな。これからは一緒に食事をしよう」
あ……やっぱりそうなのか。昨夜から思っていたことだが、サファイアには母親がいないんだ。普通三ヶ月半も行方不明になっていた娘が戻ってきたら、真っ先に出迎えてくれるはずなのに……姿を見せなかったのだから。
何となくしんみりした気分で焼き立てパンを食べていると、父親が声を掛けてきた。
「ところでサファイア、明日……いよいよ決戦だ!」
「え? 決戦?」
聞き間違いだろうか? 何やらとてつもなく物騒な言葉を耳にした気がする。
「そうだ。決戦だ。明日、お前の元婚約者のギルバート王子が子爵令嬢との婚約お披露目パーティーを開催する。我々もそこに参加するのだ! お前がピンピンしている姿を見せつけて、一泡吹かせてやろうではないか!」
ダイニングルームに父親のエキサイティングな声が響き渡った――
「おはようございます、お父様。遅くなりまして申し訳ございません」
自分で椅子を引いて腰掛けると、目の前に座っている父親を見た。
「……」
すると何故か唖然とした様子でこちらを見ている。
「あの? どうかされましたか?」
うぅ~……丁寧な言い方をするのは……なんというか、背中がゾワゾワする。
「い、いや。驚いていたのだよ。まさかお前と一緒に朝食を取ることが出来るとは思っていもいなかったし……」
そして私を足のつま先から頭のてっぺんまで見渡す。
「お父様? どうしましたか?」
何? まさか……この身体の中身が全くの別人だと気づかれてしまったのだろうか?
内心の同様を隠しつつ、作り笑いを浮かべる。
「い、いや……サファイア。その服は何だね? どう見てもメイド服に見えるのだが……」
そう、実は私が今着ているのはメイド服なのだ。大きな違いと言えば、白いエプロンを着用していないだけである。
「はい、そうなのです。実は記憶喪失になったせいか、服の好みも変わってしまいました。部屋にあるドレスはどうしても着る気分になれなくて。そこでメイド服を着ることにしたのです」
いつの間にか私のテーブルの前には美味しそうな料理が並べられている。おお、 すごい! まるで一流ホテルの朝食メニューみたいじゃないの!
三ヶ月前までミドリムシやミルワームを食していた私に取って、フォークやスプーンを使って食事をする日がやってくるなんて……!
「い……頂きます!」
言うや否や、私は早速フワフワのオムレツを頂くことにした。スプーンですくって口に入れてみる。
「う~ん……美味しい!」
思わず顔がにやけてしまう。すると父親が首を傾げる。
「いただきます……? 今の言葉は何だね?」
「あ、それは食事を食べるときに使う言葉でして……」
そこで気付いた。もしや、この世界には食事を食べるときには『いただきます』と言う言葉は存在しないのでは……?
「どうした? サファイア?」
「い、いえ。なんでもありません。それにしても美味しいお食事ですね~。家族団らんの食事というのは」
誤魔化す為にパンを手に取り、バターを塗る。
「ああ、そうだな。何しろ家族は私とお前の二人きりだからな。これからは一緒に食事をしよう」
あ……やっぱりそうなのか。昨夜から思っていたことだが、サファイアには母親がいないんだ。普通三ヶ月半も行方不明になっていた娘が戻ってきたら、真っ先に出迎えてくれるはずなのに……姿を見せなかったのだから。
何となくしんみりした気分で焼き立てパンを食べていると、父親が声を掛けてきた。
「ところでサファイア、明日……いよいよ決戦だ!」
「え? 決戦?」
聞き間違いだろうか? 何やらとてつもなく物騒な言葉を耳にした気がする。
「そうだ。決戦だ。明日、お前の元婚約者のギルバート王子が子爵令嬢との婚約お披露目パーティーを開催する。我々もそこに参加するのだ! お前がピンピンしている姿を見せつけて、一泡吹かせてやろうではないか!」
ダイニングルームに父親のエキサイティングな声が響き渡った――
12
あなたにおすすめの小説
幽霊じゃありません!足だってありますから‼
かな
恋愛
私はトバルズ国の公爵令嬢アーリス・イソラ。8歳の時に木の根に引っかかって頭をぶつけたことにより、前世に流行った乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったことに気づいた。だが、婚約破棄しても国外追放か修道院行きという緩い断罪だった為、自立する為のスキルを学びつつ、国外追放後のスローライフを夢見ていた。
断罪イベントを終えた数日後、目覚めたら幽霊と騒がれてしまい困惑することに…。えっ?私、生きてますけど
※ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください(*・ω・)*_ _)ペコリ
※遅筆なので、ゆっくり更新になるかもしれません。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「イザベラ、お前との婚約を破棄する!」「はい?」悪役令嬢のイザベラは、婚約者のエドワード王子から婚約の破棄を言い渡されてしまった。男爵家令嬢のアリシアとの真実の愛に目覚めたという理由でだ。さらには義弟のフレッド、騎士見習いのカイン、氷魔法士のオスカーまでもがエドワード王子に同調し、イザベラを責める。そして正義感が暴走した彼らにより、イザベラは殺害されてしまった。「……はっ! ここは……」イザベラが次に目覚めたとき、彼女は七歳に若返っていた。そして、この世界が乙女ゲームだということに気づく。予知夢で見た十年後のバッドエンドを回避するため、七歳の彼女は動き出すのであった。
悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】
乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。
※他サイトでも投稿中
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
処刑された悪役令嬢、二周目は「ぼっち」を卒業して最強チームを作ります!
みかぼう。
恋愛
地方を救おうとして『反逆者』に仕立て上げられ、断頭台で散ったエリアナ・ヴァルドレイン。
彼女の失敗は、有能すぎるがゆえに「独りで背負いすぎたこと」だった。
ループから始まった二周目。
彼女はこれまで周囲との間に引いていた「線」を、踏み越えることを決意した。
「お父様、私に『線を引け』と教えた貴方に、処刑台から見た真実をお話しします」
「殿下、私が貴方の『目』となります。王国に張り巡らされた謀略の糸を、共に断ち切りましょう」
淑女の仮面を脱ぎ捨て、父と王太子を「共闘者」へと変貌させる政争の道。
未来知識という『目』を使い、一歩ずつ確実に、破滅への先手を取っていく。
これは、独りで戦い、独りで死んだ令嬢が、信頼と連帯によって王国の未来を塗り替える――緻密かつ大胆なリベンジ政争劇。
「私を神輿にするのなら、覚悟してくださいませ。……その行き先は、貴方の破滅ですわ」
(※カクヨムにも掲載中です。)
悪役令嬢が行方不明!?
mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。
※初めての悪役令嬢物です。
悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~
糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」
「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」
第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。
皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する!
規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる