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第4話 ヒロインと悪役令息の僕
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カチコチカチコチ…
しんと静まり返った部屋には僕の婚約者のエディット・ロワイエが向かい側のソファに無言で座っている。
う…‥非常に気まずい。
エディットは始終俯き加減に座り、小刻みに震えている。
きっと相当僕に対して怯えているんだろうな……。
まぁ、でもそれは無理も無い話かもしれない。
何しろこれまでの僕は本当に最低な男だったのだから。
幸いなことに、僕の記憶は目の前の彼女……エディットを見た瞬間に失っていた全てを思い出していた――。
****
題名は忘れてしまったけれど、ここは前世で妹の好きだった少女漫画の世界だ。
今目の前にいるエディットはこの漫画のヒロインで、僕は彼女の婚約者。
しかし、この婚約は親同士が互いの利益の為に結んだもので僕たち2人の意思はまるきり考慮されていない。
しかも、この世界の僕はとても性悪な性格でいわゆる悪役令息のポジションにいる。
気弱なエディットに言葉の暴力や、時には手を上げる程の最低な男なのだ。
そして、そんなエディットと恋に堕ちるのがこの漫画のヒーローであり、身分を隠していたこの国の王子だった。
やがて王子は自分の身分を明らかにすると、アドルフを裁判にかけて有罪にする。
そしてアドルフ…つまり僕は爵位をはく奪され、国外追放をされてしまうのだ。
そこまで回想していた時、エディットが怯えた様子で話しかけて来た。
「あ、あの‥‥お、お加減は…い、いかがでしょうか……?」
震えながら僕を見るエディットは涙目になっていた。そこまで怖がらせてきたなんて、我ながらいやになってしまう。
前世の僕は人当たりが良く、妹想いの兄だと世間でも評判だったのに、今世の僕は男として最低だ。
「ご、ごめん。さっきまで記憶が混濁していたから…ちょっと色々思い出そうとしていたんだよ」
「え?き、記憶が混濁……?」
エディットが目を見開いた。
「うん。どうやら馬に蹴られたショックで少し記憶が曖昧なんだ。だからちょっと考え事をしていたんだよ」
「あ……だからでしょうか……?アドルフ様の話し方がいつもとは少し違うのは」
エディットは余程僕が怖いのか、ビクビクしている。
それでもけなげに僕に必死に話しかけてきている。きっと父親に強く言い含められているのかもしれない。
何しろ同じ伯爵家でも、僕の方が名門貴族だから。
「うん、そうなんだよ。でもわざわざお見舞いに来てくれるなんてありがとう。凄く嬉しかったよ」
笑顔でエディットにお礼を述べた。
何しろ、エディットを一目見てアドルフの記憶を取り戻すことが出来たのだから。
「……」
すると、何故かエディットは驚いた表情で僕を見ている。
「え?どうかしたの?エディット」
「い、いえ。その……アドルフ様の笑顔を見るのが、初めてでしたので少し驚いてしまって……」
「え?」
そうだったっ!
今まで僕は一度だってエディットに笑いかけた事なんか無かったんだっけ。
「ごめん、そうだったね……。今までの僕はどうかしていたよ。君に酷いことばかりしてしまって。許してもらえるとは思わないけど、謝罪させてくれないかな?本当にごめん」
今更謝ってもどうしようもないけど、彼女を怖がらせてしまったのは事実なのだからら謝らなければ。
エディットに頭を下げて謝罪した。
「い、いえ。そんなことお気になさらないで下さい。アドルフ様は私の為を思って言って下さったのですよね?」
エディットは慌てて首を振るけれども‥‥ごめん!
それこそ典型的なモラハラ男なんだよっ!
今から心を入れ替えたところで、エディットに植え付けられた僕への恐怖心が薄れることは多分無いだろう。
だから僕は決めた。
エディットの為に自分から婚約解消を申しいれて、彼女を解放してあげよう。
そうすればエディットは心置きなく王子と交際出来るだろうし、僕は国外追放されなくて済むのだから――。
しんと静まり返った部屋には僕の婚約者のエディット・ロワイエが向かい側のソファに無言で座っている。
う…‥非常に気まずい。
エディットは始終俯き加減に座り、小刻みに震えている。
きっと相当僕に対して怯えているんだろうな……。
まぁ、でもそれは無理も無い話かもしれない。
何しろこれまでの僕は本当に最低な男だったのだから。
幸いなことに、僕の記憶は目の前の彼女……エディットを見た瞬間に失っていた全てを思い出していた――。
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題名は忘れてしまったけれど、ここは前世で妹の好きだった少女漫画の世界だ。
今目の前にいるエディットはこの漫画のヒロインで、僕は彼女の婚約者。
しかし、この婚約は親同士が互いの利益の為に結んだもので僕たち2人の意思はまるきり考慮されていない。
しかも、この世界の僕はとても性悪な性格でいわゆる悪役令息のポジションにいる。
気弱なエディットに言葉の暴力や、時には手を上げる程の最低な男なのだ。
そして、そんなエディットと恋に堕ちるのがこの漫画のヒーローであり、身分を隠していたこの国の王子だった。
やがて王子は自分の身分を明らかにすると、アドルフを裁判にかけて有罪にする。
そしてアドルフ…つまり僕は爵位をはく奪され、国外追放をされてしまうのだ。
そこまで回想していた時、エディットが怯えた様子で話しかけて来た。
「あ、あの‥‥お、お加減は…い、いかがでしょうか……?」
震えながら僕を見るエディットは涙目になっていた。そこまで怖がらせてきたなんて、我ながらいやになってしまう。
前世の僕は人当たりが良く、妹想いの兄だと世間でも評判だったのに、今世の僕は男として最低だ。
「ご、ごめん。さっきまで記憶が混濁していたから…ちょっと色々思い出そうとしていたんだよ」
「え?き、記憶が混濁……?」
エディットが目を見開いた。
「うん。どうやら馬に蹴られたショックで少し記憶が曖昧なんだ。だからちょっと考え事をしていたんだよ」
「あ……だからでしょうか……?アドルフ様の話し方がいつもとは少し違うのは」
エディットは余程僕が怖いのか、ビクビクしている。
それでもけなげに僕に必死に話しかけてきている。きっと父親に強く言い含められているのかもしれない。
何しろ同じ伯爵家でも、僕の方が名門貴族だから。
「うん、そうなんだよ。でもわざわざお見舞いに来てくれるなんてありがとう。凄く嬉しかったよ」
笑顔でエディットにお礼を述べた。
何しろ、エディットを一目見てアドルフの記憶を取り戻すことが出来たのだから。
「……」
すると、何故かエディットは驚いた表情で僕を見ている。
「え?どうかしたの?エディット」
「い、いえ。その……アドルフ様の笑顔を見るのが、初めてでしたので少し驚いてしまって……」
「え?」
そうだったっ!
今まで僕は一度だってエディットに笑いかけた事なんか無かったんだっけ。
「ごめん、そうだったね……。今までの僕はどうかしていたよ。君に酷いことばかりしてしまって。許してもらえるとは思わないけど、謝罪させてくれないかな?本当にごめん」
今更謝ってもどうしようもないけど、彼女を怖がらせてしまったのは事実なのだからら謝らなければ。
エディットに頭を下げて謝罪した。
「い、いえ。そんなことお気になさらないで下さい。アドルフ様は私の為を思って言って下さったのですよね?」
エディットは慌てて首を振るけれども‥‥ごめん!
それこそ典型的なモラハラ男なんだよっ!
今から心を入れ替えたところで、エディットに植え付けられた僕への恐怖心が薄れることは多分無いだろう。
だから僕は決めた。
エディットの為に自分から婚約解消を申しいれて、彼女を解放してあげよう。
そうすればエディットは心置きなく王子と交際出来るだろうし、僕は国外追放されなくて済むのだから――。
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