婚約者はこの世界のヒロインで、どうやら僕は悪役で追放される運命らしい

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
23 / 221

第23話 ヒロインと約束

しおりを挟む
「ランタンフェスティバルは何時からだい?」

2人で橋の上から運河の景色を眺めながらエディットに尋ねた。

「はい。午後6時からです」

「午後6時か…」

懐中時計を取り出し、時間を確認するとまだようやく11時半になるところだった。

「ところでランタンフェスティバルに出るにはランタンを買う必要があるのかな?」

懐中時計をしまうと尋ねた。

「そうですね…。運河にランタンを流したいなら買わないと駄目ですけど、ただ見物するだけなら必要はないですよ」

「そうか…」

どうしようかな……。

するとエディットが教えてくれた。

「ランタンを流すのはお願い事をする為なんです。願いを込めてランタンを運河に流すのですよ」

「へ~…それじゃエディットは何か願い事があってランタンを流すんだね?」

「あ…は、はい。そうなんです。でも、もうすぐ願いが叶いそうです」

そしてエディットは頬を赤く染めた。

う~ん……もうすぐ願いが叶いそう…?

一体どんな願いなのだろう?だけど、頬を赤くしているということは、ひょっとすると恋愛に関することなのかもしれない。
それならどんな願いなのか尋ねるなんて野暮な真似はやめて、エディットに協力してあげることにしよう。

「そうなんだ。それは良かったね」

代わりに笑みを浮かべてエディットを見つめた。

「は、はい。ありがとうございます」

「よし、それじゃ僕もランタンを流すよ。エディットの願いが叶うようにね」

エディットに良いところを見せて、将来的に追放される運命を少しでも回避させよう。

「え?そ、そんな…アドルフ様。宜しいのですか?」

エディットは何故か益々顔を赤らめる。そんなに照れくさいのだろうか?

「エディット、ランタンはどこで買えるのかな?」

「はい、今日はフェスティバルなので町には露天が沢山出店しています。ランタンも買えますよ」

「そうなのか…いつでも買えるなら後で買うことにしよう。その前にそろそろ12時になるからエディットは帰ったほうがいいよね?辻馬車乗り場に行こうか?」

「は、はい……分かりました……」

何故かエディットの顔が少し悲しげになる。
何か気に障ることをしてしまったのだろうか?

「どうかした?」

「いえ。何でもありません…」

「そうかい?なら行こうか?」

「はい…」

心なしか元気のないエディットの手を引いて人混みの中、辻馬車乗り場を目指した。
手を繋いで歩きながらチラリとエディットを見ると、別に変わった様子は見られない。

うん、きっとさっきの表情は…気のせいなのだろう。
僕はそう思うことにした――。



****

ガラガラガラガラ……


揺れる馬車の中、エディットと2人で向かい合って座っていた。

「すぐに馬車が見つかって良かったね」

笑顔でエディットに話しかけた。

「はい、そうですね。でも宜しかったのですか?私の家から先に寄って貰うなんて」

申し訳無さそうにしているエディット。

「何言ってるんだい?女の子を送るのは当然のことだよ」

「そ、そうですか?ありがとうございます」

エディットは真っ赤になって頭を下げてきた。

「別に気にすることはないよ」

それよりも帰宅したらすぐに明日の試験勉強をしないとな……。
今夜は思いもかけずにエディットと出かけることになったからあまり時間も取れないし。

窓の外を眺めながら試験勉強の事を考えていると、エディットが声を掛けてきた。

「アドルフ様、今日はこの後どうされるのですか?」

「うん。エディットを送ったら家に帰って試験勉強の続きをするよ。それで17時頃にまた迎えに行くよ」

「そ、そうなのですか…?」

エディットが目を見開いて僕を見た。

「え?どうかした?」

何かまずいことを言ってしまっただろうか?

「い、いえ。何でもありません」

「そう…かい?」

「はい」

エディットは笑って僕を見たけれども……何となくその笑顔が少しだけ寂しげに僕には見えた――。



しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい

廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!  王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。 『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。  ならばと、シャルロットは別居を始める。 『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。  夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。  それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜

伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。 ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。 健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。 事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。 気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。 そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。 やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。

処理中です...