婚約者はこの世界のヒロインで、どうやら僕は悪役で追放される運命らしい

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
24 / 221

第24話 ヒロインの勇気ある誘い

しおりを挟む
 僕とエディットは『カナレア』と呼ばれる小さな市に住んでいる。

『カナレア』は南区・中央区・緑区の3つに分かれていて、僕とエディットは南区に住んでいた。

そしてランタンフェスティバルが開催されるのが、ここ中央区だった――。


****


「すみません、アドルフ様」

ガラガラと走る辻馬車の中で、向かい側に座ったエディットが謝ってきた。

「え?何を謝るんだい?」

「いえ…アドルフ様の方が御自宅が近いのに、わざわざ遠回りして一緒に馬車に乗って帰って頂いていることについてです」

エディットは申し訳無さそうにしている。

「何だ、そのことなら気にする必要は無いよ。元から一緒に乗って帰ろうと提案したのは僕の方だからね」

そして笑みを浮かべたものの、実は内心しくじったと思っていた。
まさか僕の家のほうが中央区より近いとは思ってもいなかった……と言うよりも、知らなかったと言うべきかもしれない。

こんなことになるなら遠回りせずに、エディットに断りを入れて先に馬車を降りるべきだっただろうか?

何しろ家に帰った後は明日行われる歴史の試験勉強をしなくてはならないのだから。
その後はまたエディットを迎えに行って、2人でランタンフェスティバルに参加する。
夜は2時間程しか勉強出来ないと考えた方が良いかもしれない。

いつの間にか僕は目の前にいるエディットの存在を忘れ、今日の予定について考え込んでしまっていた‥‥ようだ。

「あの……アドルフ様」
「え?な、何?どうかした?」

不意にエディットに声を掛けられて慌てて我に返った。

「いえ……私の家に到着したので、お声を掛けさせて頂きました」

「え?」

慌てて外を見ると馬車は3階建ての大きな屋敷の前に停まっていた。

しまった!いつの間に馬車が停まっていたのだろう?

「そうだね?それじゃ降りようか?」

そこで先に降りるとエディットの手を取って馬車を降りる手助けをしてあげた。

「あの、どうもありがとうございました」

真っ赤な顔で僕にお礼を述べて来るエディットに僕は笑みを浮かべた。

「うん。それじゃ、エディット。また後で会おう?夕方迎えに来るよ」

そして再び馬車に乗り込もうとした時—。

「お待ちください、アドルフ様」

突然エディットが声を掛けて来た。

「何?どうかした?」

エディットの方を振り返ると、彼女は驚くべき言葉を口にした。

「あの……折角ここまでいらして下さったので…わ、私の家で昼食を食べていかれませんか?」

「え…?食事を?」


「は、はい。そうです」

う~ん…その申し出はありがたいけど、家に帰って試験勉強をしたいし……。
返事を躊躇っていると、さらにエディットが声を掛けて来た。

「あ、あの…私とアドルフ様が婚約して以来‥‥一度も私の家にお越しいただいたことがありませんので、出来ればこの機会にお昼をご一緒出来ればと思ったのですが…迷惑…だったでしょうか?」

「エディット…」

よく見ればエディットの小さな体が小刻みに震えている。恐らく今エディットは相当な勇気を振り絞って僕を誘っているに違いない。

そんな彼女の気持ちを無碍にすることなんか出来るはずは無かった。

「うん、そうだね。それじゃ迷惑でなければ…お昼をご馳走になろうかな?」

「は、はい!」

嬉しそうに返事をするエディットを見て、僕は思った。

恐らくこのままエディットの家に残ることになり、ランタンフェスティバルが終わるまで、僕は家に帰ることが出来ないのではないだろうか…?


そして、僕の予感はものの見事に当たることになる――。

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい

廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!  王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。 『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。  ならばと、シャルロットは別居を始める。 『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。  夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。  それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。

処理中です...