婚約者はこの世界のヒロインで、どうやら僕は悪役で追放される運命らしい

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
47 / 221

第47話 生じる疑念

しおりを挟む
 昼休みも終わりに近づき、僕とエディットはAクラスの前に戻ってきていた。

「あの、それではアドルフ様。放課後、校舎の出入り口で待ち合わせで宜しいですよね?」

「うん、そうしよう。ほら、エディットは……もう、Cクラスには来ないほうがいいからさ?また他の学生に難癖つけられるかもしれないだろう?エディットを辛い目に遭わせたくはないからさ」

そう、ついに原作のヒーローがエディットの前に現れてしまった。
しかもどうやら出会ったときから?エディットに執着しているようだし。

僕が彼女を傷つけるような真似をしようものなら、途端に目をつけられて追放の末路は免れないだろう。

自分の身の保全の為にもエディットが少しでも傷つけられたり嫌な目に遭わされるのは全力で防がないと。


そんな僕の言葉をエディットは好意的に取ってくれたようだ。

「アドルフ様……ありがとうございます。私、すごく嬉しいです。そんな風に仰って下さるなんて」

エディットは顔を真っ赤にさせながら俯いた。
うん、やっぱりシャイなエディットはとても可愛らしいな。

「アハハハ…お礼なんて言わなくていいって。そんなのは当然のことだから」

そしてつい癖?でエディットの頭を撫でたその時……何やら視線を感じた。

「?」

思わずエディットの頭から手を引っ込めて視線を追うと、エディットの教室の中からこちらをじっと見つめている人物がいた。

その人物は……。

「王子……」

視線の主はこの世界のヒロインである王子だった。彼は僕と目が合うと視線をそらせて窓の方を向いてしまった。

一体今のは……?

「あの、アドルフ様?」
「あ、な、何?」

エディットに声を掛けられ、我に返った。

「今、王子とおっしゃいましたか?」

「い、いや。言ってないよ。ところで、今日転校してきた男子学生だけど、名前は何て言うのかな?」

「はい、セドリック・ジョンソンと言う名前です」

「セドリック……」

やはりそうだ。
確か原作でもセドリックと言う名前は実名だった。けれど、ラストネームは身元を隠す為にありきたりな名字を使っていたはずだ。

「どうかされましたか?」

「ううん、いい名前だなって思っただけだよ。それじゃ、僕はそろそろ教室へ戻るね。また放課後に会おう」

「はい、ではまた」

そして僕達は笑顔で手を振りあった。
……その時も王子…セドリックの視線を感じながら――。



****


 教室へ戻ると、早速僕は悪友たちに取り囲まれた。


「おい!アドルフッ!お前一体何処へ行ってたんだよ!」

肩をガシッと掴んできたのはブラッドリーだ。

「どこって……エディットと2人で食事をしてきただけだよ」

「お前なぁ…あの後、大変だったんだぞ?」

呆れた様子で声を掛けてきたのはラモンだった。

「大変て…何が?」

首を傾げると、エミリオがため息をついた。

「あの後、エレナたちが俺たちに文句を言ってきたんだよ。アドルフは一体どういうつもりだって」

「どういうつもりって……」

「いつの間にあんなにエディットと親しくなったんだって俺たちを責めてくるんだぜ?あれ程エディットの悪口を言っていたのに、どういうつもりだってな」

ブラッドリーが説明してくれた。

「どういうつもりも何も……何度も言ってるじゃないか。馬に蹴られてから生まれ変わったんだって。今までの自分はどうかしていたんだよ。やっぱり女性には親切にしてあげないといけないってね。ましてやエディットは僕の(まだ)婚約者なんだから」

すると僕の言葉にラモンとエミリオが驚きの声を上げた。

「げっ!」
「マジかよっ!」

「な?俺の言ったとおりだろ?」

そこへ何故かしたり顔のブラッドリー。

「それじゃお前、やっぱり来月の創立記念パーティーのパートナーはエディットにするんだな?」

エミリオが尋ねてきた。

「そうだよ、もうエディットには申し込んであるからね」

すると、ラモンが頭を抱えた。

「あ~もう!何て事してくれたんだよっ!お前がエレナたちを怒らせてしまったから、彼女たちにパートナーの誘いを断られてしまったんだよっ!」

「え?まさか彼女たちを誘う気だったのかい?」

「何言ってるんだアドルフ。元はと言えばお前が先に言い出したことだろうがっ!」

ブラッドリーに言われるも、僕にはその記憶がさっぱり無いからどうしても他人事にしか感じられない。
でも僕のせいだというなら、謝らなければ。

「ごめん、悪かったよ。許してくれ無いかな?」

「「「……」」」

すると何故か冷めた目でこちらを見る悪友たち。

「な、何?」

「謝られてもなぁ……」
「ああ、全くだ」
「少しも誠意を感じられない」

ブラッドリー、ラモン、エミリオが不満そうに僕を見る。

「まぁまぁ、パーティーまで後一月あるわけだし…今からパートナーを探せば見つかるんじゃないかな?」

すると僕の言葉にブラッドリーが反論した。

「何、脳天気なこと言ってるんだよ。いいか?女子学生たちはなぁ…あっという間に今日転校してきたAクラスの転校生に夢中なんだよ!」

「え?」

「ああ、そうさ。全く驚いたよ。学食に10人近い女子学生を引き連れてやってきた時は」

エミリオがふてくされている。

「顔がいい男は得だよな」

最後にラモンはため息をついた。


嘘だろう?
あの王子が…大勢の女子学生を引き連れて?


何故なら漫画の中の彼は誠実な人物で、大勢の女子学生を引き連れて歩くようなことは一度も無かった。
逆にエディットという婚約者がいながら多くの女子学生を引き連れていた僕……アドルフを軽蔑していたのに?


一体、王子はどうしてしまったのだろう……?

僕の中で、王子への違和感がまた少し大きくなった――。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

四葉美名
恋愛
「危険です! 突然現れたそんな女など処刑して下さい!」 ある日突然、そんな怒号が飛び交う異世界に迷い込んでしまった橘莉子(たちばなりこ)。 竜王が統べるその世界では「迷い人」という、国に恩恵を与える異世界人がいたというが、莉子には全くそんな能力はなく平凡そのもの。 そのうえ莉子が現れたのは、竜王が初めて開いた「婚約者候補」を集めた夜会。しかも口に怪我をした治療として竜王にキスをされてしまい、一気に莉子は竜人女性の目の敵にされてしまう。 それでもひっそりと真面目に生きていこうと気を取り直すが、今度は竜王の子供を産む「運命の花嫁」に選ばれていた。 その「運命の花嫁」とはお腹に「竜王の子供の魂が宿る」というもので、なんと朝起きたらお腹から勝手に子供が話しかけてきた! 『ママ! 早く僕を産んでよ!』 「私に竜王様のお妃様は無理だよ!」 お腹に入ってしまった子供の魂は私をせっつくけど、「運命の花嫁」だとバレないように必死に隠さなきゃ命がない! それでも少しずつ「お腹にいる未来の息子」にほだされ、竜王とも心を通わせていくのだが、次々と嫌がらせや命の危険が襲ってきて――! これはちょっと不遇な育ちの平凡ヒロインが、知らなかった能力を開花させ竜王様に溺愛されるお話。 設定はゆるゆるです。他サイトでも重複投稿しています。

悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい

廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!  王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。 『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。  ならばと、シャルロットは別居を始める。 『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。  夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。  それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...