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第48話 悪役令息のピンチ
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5時間目は日本で言う、いわゆる国語の授業だった。
この授業は楽しく受けることが出来た。きっとこの科目なら自宅学習をしなくても何とかなりそうだ。
そして6時間目が問題だった。
今回は男女別れての授業で、男子学生は何と剣術の授業だったのだ。
どうやらこの授業は日本でいう、体育の授業のようなものなのだろうけど……。
これが半端なく、恐ろしいものだった。
剣道なら防具を身につけることが出来るけれども、この剣術の授業はチェインメイルと呼ばれるベストを着込むだけ。そして、木製の太極剣に似た?剣で相手と打ち合わなくてはならない。
この授業があることを知った時は、正直腹痛が起きたと言って逃げたくなったくらいだ。
何しろ、全員真剣な眼差しで打ち合う姿を見れば平凡な日本人だった僕から見れば恐怖以外の何物でもない。
太陽の降り注ぐ校庭で木剣の打ち合う音が響き渡る。
カーンッ!
カーンッ!
「くっ!」
「やりやがったなっ!」
あちこちで二人一組になって打ち合う学生たち。
カーンッ!
「止めだっ!」
カッ!カンッ!
「死ねっ!」
「えっ?!聞いたか!ブラッドリー!い、今あの2人……物騒なことを言って打ち合っているのを!」
思わず隣で順番待ちをして立っていたブラッドリーに声を掛けた。
「ああ、当然だ。あの2人にとっては因縁の闘いだからな」
ブラッドリーは僕に視線を合わせることもなく、物騒な台詞を吐きながら激しく打ち合っている2人を真剣な眼差しで見つめている。
「え……?い、因縁の闘いって……?」
何か家紋同士の争いでもあるのだろうか?
「ジャックは自分の恋人ダリアをカーターに取られてしまったんだ。しかもジャックはダリアと創立記念パーティーに一緒に参加する約束をしていたのにも関わらず」
「え……?」
「ジャックの怒りは計り知れなかった。何しろ、今年に入ってようやく出来た彼女をたったの3ヶ月間という短い交際期間で、3週間前にカーターに取られてしまったのだからな。そこで以前からジャックはカーターを狙っていたんだ……。奴に止めをさすきっかけを……。きっとこの組み合わせは意図的に組まれたものに違いない」
「ちょ、ちょっと何を言ってるんだよ。さっきから。冗談だろう?」
ブラッドリーの真剣な口調は鬼気迫るものを感じる。
「馬鹿野郎、冗談でこんなことが口に出せるか。その証拠にみてみろ!奴らの真剣な眼差しを!それにジャックはここ半月ばかりずっと、1人校舎の裏庭でこっそり剣術の練習をしていたのだぞ?」
「1人校舎の裏庭でって……」
一体、ブラッドリーは何処でそんな情報を手に入れたのだろう?
彼の話はまだ続く。
「奴め……さては教師でも買収したか?今日の剣術の組み合わせをカーターにしてくれと。あ、ちなみに右側の赤毛男がジャックで、左側の栗毛色の髪の男がカーターだ。どうせお前のことだから覚えていないだろう?」
「ふ~ん」
僕は気のない返事をした。何だ、結局は三角関係のもつれか。
だから互いに譲れない決闘?をしていたのか。
だけど、そんな話はどうでも良かった。肝心なのは、もうすぐ僕は誰かと剣術の試合をしなければならないということだった。
果たしてアドルフは剣術が得意なのだろうか……?
「ブラッドリー」
「何だ?今いいところなのに」
ブラッドリーは僕を見ることもなく返事をする。
「僕は剣術が得意だったのかな?」
するとブラッドリーは呆れた様子で僕を見た。
「はぁ?お前……そんなことすら忘れてしまったのかよ」
「う、うん……まぁね…」
するとブラッドリーはニヤリと笑った。
この表情は…ひょっとして、ひょっとするかも!
「何だ、だからお前この授業をさぼらなかったのか?」
「え?どういうことだい?」
「お前は一度も剣術の授業に出たことが無いぞ?何故なら…」
「な、何故なら……?」
ゴクリと息を飲む。
「お前は剣術がド下手だからだっ!」
ビシッと指さしながらブラッドリーは言い切った。
「えええええっ?!」
僕の叫びと同時に、教師に名前を呼ばれた。
「次の対戦者前へっ!アドルフ・ヴァレンシュタインッ!」
「そ、そんな……」
顔面蒼白になる僕の肩をブラッドリーがポンと叩いた。
「アドルフ……」
「な、何?」
ひょっとして僕を激励してくれるのだろうか?
「いってこい…。そして華々しく散ってこい」
「はぁああああっ?!」
結局、僕の対戦者はクラス1の大男で……あっという間に僕は散った――。
****
キーンコーンカーンコーン…
授業終了のベルが鳴り響き、ようやくアドルフとして目覚めた学生生活1日目が終了した。
「う…いたたたた…。ううう…手加減なしに打ってくるなんて……あんな授業、日本の場合だったら、きっと教育委員会が黙っていないぞ……」
ブラッドリー達の誘いを断った僕は1人、廊下を歩いていた。
そうだ、エディットのクラスはもう終わっているのだろうか?
一応校舎の出入り口で待ち合わせの約束をしていたものの、Aクラスをちらりと覗いてみた。
すると既にホームルームは終わっていたようで、教室に残る生徒はまばらだった。
エディットの姿は…既にいないようだ。きっともう待ち合わせ場所にいるに違いない。
「急ごう」
踵を返し、エディットの元へ向かおうとした時突然背後から声を掛けられた。
「このクラスに何か用か?」
「え?」
振り向き、驚いた。何と声を掛けてきたのは王子、セドリックだったからだ。
何で王子が僕に声を…?
「ちょと人と待ち合わせをしていて、まだ教室に残っていないか見に来ただけだよ」
平静を装って答えた。
「ふ~ん……ところで何だ?お前…あちこち傷だらけじゃないか。しかもアザまで出来ている」
……ひょっとして心配してくれているのだろうか?
「あ、これは今日の剣術の授業で……」
「フッ情けない男だな」
「え?」
「男なら剣術位まともに出来ないと大切な者を守れないぞ」
これは…僕へのアドバイスなのだろうか?ならお礼を言わないと。
「ありがとう、本当にその通りだね」
「……」
すると何故か王子は驚いた様子で目を見張ったその時――。
「お待たせ致しました、セドリック様」
王子の背後で女性の声が聞こえた。
みると、そこには黒髪ロングヘアの女子学生の姿があった。ひょっとして彼女が侍女なのだろうか?
「ああ、行くか」
「はい」
そうだ!僕もすぐにエディットの元へ行かないと!
今度こそ校舎の外を目指そうと背を向けた時、王子のボソリと呟く声が耳に飛び込んできた。
「本当に情けない男だな……」
「!」
一瞬その言葉に驚いたけれども、僕は振り返ること無くエディットの元へ向かった。
痛む身体を引きずりながら――。
この授業は楽しく受けることが出来た。きっとこの科目なら自宅学習をしなくても何とかなりそうだ。
そして6時間目が問題だった。
今回は男女別れての授業で、男子学生は何と剣術の授業だったのだ。
どうやらこの授業は日本でいう、体育の授業のようなものなのだろうけど……。
これが半端なく、恐ろしいものだった。
剣道なら防具を身につけることが出来るけれども、この剣術の授業はチェインメイルと呼ばれるベストを着込むだけ。そして、木製の太極剣に似た?剣で相手と打ち合わなくてはならない。
この授業があることを知った時は、正直腹痛が起きたと言って逃げたくなったくらいだ。
何しろ、全員真剣な眼差しで打ち合う姿を見れば平凡な日本人だった僕から見れば恐怖以外の何物でもない。
太陽の降り注ぐ校庭で木剣の打ち合う音が響き渡る。
カーンッ!
カーンッ!
「くっ!」
「やりやがったなっ!」
あちこちで二人一組になって打ち合う学生たち。
カーンッ!
「止めだっ!」
カッ!カンッ!
「死ねっ!」
「えっ?!聞いたか!ブラッドリー!い、今あの2人……物騒なことを言って打ち合っているのを!」
思わず隣で順番待ちをして立っていたブラッドリーに声を掛けた。
「ああ、当然だ。あの2人にとっては因縁の闘いだからな」
ブラッドリーは僕に視線を合わせることもなく、物騒な台詞を吐きながら激しく打ち合っている2人を真剣な眼差しで見つめている。
「え……?い、因縁の闘いって……?」
何か家紋同士の争いでもあるのだろうか?
「ジャックは自分の恋人ダリアをカーターに取られてしまったんだ。しかもジャックはダリアと創立記念パーティーに一緒に参加する約束をしていたのにも関わらず」
「え……?」
「ジャックの怒りは計り知れなかった。何しろ、今年に入ってようやく出来た彼女をたったの3ヶ月間という短い交際期間で、3週間前にカーターに取られてしまったのだからな。そこで以前からジャックはカーターを狙っていたんだ……。奴に止めをさすきっかけを……。きっとこの組み合わせは意図的に組まれたものに違いない」
「ちょ、ちょっと何を言ってるんだよ。さっきから。冗談だろう?」
ブラッドリーの真剣な口調は鬼気迫るものを感じる。
「馬鹿野郎、冗談でこんなことが口に出せるか。その証拠にみてみろ!奴らの真剣な眼差しを!それにジャックはここ半月ばかりずっと、1人校舎の裏庭でこっそり剣術の練習をしていたのだぞ?」
「1人校舎の裏庭でって……」
一体、ブラッドリーは何処でそんな情報を手に入れたのだろう?
彼の話はまだ続く。
「奴め……さては教師でも買収したか?今日の剣術の組み合わせをカーターにしてくれと。あ、ちなみに右側の赤毛男がジャックで、左側の栗毛色の髪の男がカーターだ。どうせお前のことだから覚えていないだろう?」
「ふ~ん」
僕は気のない返事をした。何だ、結局は三角関係のもつれか。
だから互いに譲れない決闘?をしていたのか。
だけど、そんな話はどうでも良かった。肝心なのは、もうすぐ僕は誰かと剣術の試合をしなければならないということだった。
果たしてアドルフは剣術が得意なのだろうか……?
「ブラッドリー」
「何だ?今いいところなのに」
ブラッドリーは僕を見ることもなく返事をする。
「僕は剣術が得意だったのかな?」
するとブラッドリーは呆れた様子で僕を見た。
「はぁ?お前……そんなことすら忘れてしまったのかよ」
「う、うん……まぁね…」
するとブラッドリーはニヤリと笑った。
この表情は…ひょっとして、ひょっとするかも!
「何だ、だからお前この授業をさぼらなかったのか?」
「え?どういうことだい?」
「お前は一度も剣術の授業に出たことが無いぞ?何故なら…」
「な、何故なら……?」
ゴクリと息を飲む。
「お前は剣術がド下手だからだっ!」
ビシッと指さしながらブラッドリーは言い切った。
「えええええっ?!」
僕の叫びと同時に、教師に名前を呼ばれた。
「次の対戦者前へっ!アドルフ・ヴァレンシュタインッ!」
「そ、そんな……」
顔面蒼白になる僕の肩をブラッドリーがポンと叩いた。
「アドルフ……」
「な、何?」
ひょっとして僕を激励してくれるのだろうか?
「いってこい…。そして華々しく散ってこい」
「はぁああああっ?!」
結局、僕の対戦者はクラス1の大男で……あっという間に僕は散った――。
****
キーンコーンカーンコーン…
授業終了のベルが鳴り響き、ようやくアドルフとして目覚めた学生生活1日目が終了した。
「う…いたたたた…。ううう…手加減なしに打ってくるなんて……あんな授業、日本の場合だったら、きっと教育委員会が黙っていないぞ……」
ブラッドリー達の誘いを断った僕は1人、廊下を歩いていた。
そうだ、エディットのクラスはもう終わっているのだろうか?
一応校舎の出入り口で待ち合わせの約束をしていたものの、Aクラスをちらりと覗いてみた。
すると既にホームルームは終わっていたようで、教室に残る生徒はまばらだった。
エディットの姿は…既にいないようだ。きっともう待ち合わせ場所にいるに違いない。
「急ごう」
踵を返し、エディットの元へ向かおうとした時突然背後から声を掛けられた。
「このクラスに何か用か?」
「え?」
振り向き、驚いた。何と声を掛けてきたのは王子、セドリックだったからだ。
何で王子が僕に声を…?
「ちょと人と待ち合わせをしていて、まだ教室に残っていないか見に来ただけだよ」
平静を装って答えた。
「ふ~ん……ところで何だ?お前…あちこち傷だらけじゃないか。しかもアザまで出来ている」
……ひょっとして心配してくれているのだろうか?
「あ、これは今日の剣術の授業で……」
「フッ情けない男だな」
「え?」
「男なら剣術位まともに出来ないと大切な者を守れないぞ」
これは…僕へのアドバイスなのだろうか?ならお礼を言わないと。
「ありがとう、本当にその通りだね」
「……」
すると何故か王子は驚いた様子で目を見張ったその時――。
「お待たせ致しました、セドリック様」
王子の背後で女性の声が聞こえた。
みると、そこには黒髪ロングヘアの女子学生の姿があった。ひょっとして彼女が侍女なのだろうか?
「ああ、行くか」
「はい」
そうだ!僕もすぐにエディットの元へ行かないと!
今度こそ校舎の外を目指そうと背を向けた時、王子のボソリと呟く声が耳に飛び込んできた。
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