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第82話 不安になる悪役令息
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「まぁ。よくいらっしゃったわね?アドルフ様」
エディットの屋敷に到着すると、エントランスまでわざわざ夫人が出迎えてくれた。
「こんにちは、お邪魔致します。いつもエディットには送り迎えをして貰って、感謝しています」
頭を下げると、夫人はホホホと笑った。
「まぁまぁ、本当にアドルフ様は立派になられましたね?それで?今日は何処でお話致しましょうか?実はあれからまた色々ありまして、是非アドルフ様にお話を聞いて頂きたいと思っておりましたのよ?」
「え?」
夫人はゾッとするようなことを言ってきた。
冗談じゃない、夫人に捕まったら2時間は開放してもらえないのに?
するとそこへ素早くエディトが間に入って来た。
「いいえ、お母様。アドルフ様が我が家にいらっしゃったのは今度の記念式典で着る私のドレスを見る為です」
ありがとう!エディットッ!
心の中で思わず感謝する。
「まぁ、そうだったのね?これは失礼しました。ではエディット、アドルフ様をご案内してさしあげなさい」
「はい、お母様。ではアドルフ様、参りましょうか?」
エディットは僕を振り返った。
「うん、お願いするよ。それでは夫人、失礼致します」
「ええ、ごゆっくりどうぞ」
にこやかに笑みを返す夫人。
「アドルフ様。どうぞ、こちらです」
「うん」
そして僕はエディットに連れられ、彼女のドレスルームへ向かった――。
****
エディットのドレスルームは2階にあった。
「ここが私のドレスルームです」
白い扉の前に立つとエディットが教えてくれた。
「この部屋の中にエディットのドレスがあるんだね?」
「はい、今扉を開けますね」
エディットはドアノブを回した。
カチャ……
扉が開くと壁の端から端にポールが渡され、ハンガーに掛けられたエディットの服がズラリと並べられていた。
「凄いね……ここがエディットのドレスルームなんだね?
「はい、そうです」
「中に入って見てもいいかな?」
頷くエディットに尋ねた。
「は、はい!勿論です。どうぞお入り下さい」
「うん、失礼するね」
そして僕はドレスルームへと足を踏み入れた。
**
「すごいね。これ全部エディットの服なんだよね」
ハンガーに掛けられたエディットの服はどれも女の子らしいデザインだった。
まさに『コイカナ』の漫画の中でエディットが着ていた服がそのまま今、僕の目の前に存在している。
フリルのついたワンピースドレスや、エプロンドレス、花柄のワンピース……。
きっと、サチが見たら興奮が止まらないだろう。
「何だか、感動だな……」
思わずポツリと呟いてしまった。
「え?アドルフ様?今、何と仰ったのですか?」
「い、いや。どれも可愛らしい服でエディットによく似合うだろうなって思ったんだよ。考えてみたら、エディットの私服姿なんて殆んど見たことが無かったから」
するとエディットは一瞬、悲しげな顔で僕を見た。
「え?エディット?どうかした?」
もしかして、僕は今マズイことを言ってしまっただろうか?
「いえ、何でもありません。確かにそうですよね?いつもは学校でお会いしていますから」
「そうだよね。だから今度からは週末は2人でなるべく一緒に過ごすことにしないかい?」
流石に気恥ずかしさがあって『デート』と言う単語は口に出せなかった。
それにまだ、僕の中では王子に対する遠慮がある。
サチは僕を応援すると言ってくれているけれど、僕はどうやら王子に目をつけられているように感じる。
ひょっとすると、王子の中では既に僕を恋敵と見ているのかも知れない……。
けれど僕の不安な気持ちを他所に、エディットは目を見開いて僕を見上げてきた。
「ほ、本当ですか……?」
その頬はバラ色に染まっている。
「うん。 勿論、エディットさえ良ければだけど……」
「はい、是非……宜しくお願いします……」
恥ずかしそうに頷くエディット。
「うん、こちらこそ宜しくね」
そしていつものようにエディットの頭をそっと撫でると、嬉しそうに微笑んで僕を見つめてくる。
そんな彼女が愛しかった。
けれど、このまま悪役令息の僕がエディットの側にいてもいいのだろうか?
どう考えても僕なんかより王子の方がエディットにはお似合いに感じる。
僕の不安な気持ちを感じ取ったのか、エディットが声を掛けてきた。
「アドルフ様?どうされましたか?」
「い、いや。記念式典パーティーで着るドレスはどれかなと思ってね」
「あ、それはこちらの奥にあるのです。案内しますね」
エディットが右側の壁を指差すと、そこにはまだ扉があった。
「この扉の奥の小部屋にドレスがあります」
「凄いね。まだ部屋があったんだね」
流石伯爵家の一人娘だ。
「はい。開けますね」
そしてエディットが扉を開けると、水色のドレスを着せられたトルソーが僕を迎えてくれた。
「うわぁ……これがエディットのドレスなんだね?」
そう。目の前のドレスはまるでシンデレラのドレスにそっくりだったのだ。
シンデレラは城の舞踏会で本物の王子とダンスを踊る。
そこで、再び漫画の原作のワンシーンが思い出されてしまった。
大きな満月の下、噴水のある園庭で2人きりでダンスを踊るエディットと王子の姿が……。
「どうですか?アドルフ様」
エディットがはにかみながら尋ねてきた。
「うん、本当にお姫様みたいなドレスだね。今からこのドレスを着たエディットの姿を見るのが楽しみだよ」
何故かざわつく不安な気持ちを抱えながら、僕は無理に笑った――。
エディットの屋敷に到着すると、エントランスまでわざわざ夫人が出迎えてくれた。
「こんにちは、お邪魔致します。いつもエディットには送り迎えをして貰って、感謝しています」
頭を下げると、夫人はホホホと笑った。
「まぁまぁ、本当にアドルフ様は立派になられましたね?それで?今日は何処でお話致しましょうか?実はあれからまた色々ありまして、是非アドルフ様にお話を聞いて頂きたいと思っておりましたのよ?」
「え?」
夫人はゾッとするようなことを言ってきた。
冗談じゃない、夫人に捕まったら2時間は開放してもらえないのに?
するとそこへ素早くエディトが間に入って来た。
「いいえ、お母様。アドルフ様が我が家にいらっしゃったのは今度の記念式典で着る私のドレスを見る為です」
ありがとう!エディットッ!
心の中で思わず感謝する。
「まぁ、そうだったのね?これは失礼しました。ではエディット、アドルフ様をご案内してさしあげなさい」
「はい、お母様。ではアドルフ様、参りましょうか?」
エディットは僕を振り返った。
「うん、お願いするよ。それでは夫人、失礼致します」
「ええ、ごゆっくりどうぞ」
にこやかに笑みを返す夫人。
「アドルフ様。どうぞ、こちらです」
「うん」
そして僕はエディットに連れられ、彼女のドレスルームへ向かった――。
****
エディットのドレスルームは2階にあった。
「ここが私のドレスルームです」
白い扉の前に立つとエディットが教えてくれた。
「この部屋の中にエディットのドレスがあるんだね?」
「はい、今扉を開けますね」
エディットはドアノブを回した。
カチャ……
扉が開くと壁の端から端にポールが渡され、ハンガーに掛けられたエディットの服がズラリと並べられていた。
「凄いね……ここがエディットのドレスルームなんだね?
「はい、そうです」
「中に入って見てもいいかな?」
頷くエディットに尋ねた。
「は、はい!勿論です。どうぞお入り下さい」
「うん、失礼するね」
そして僕はドレスルームへと足を踏み入れた。
**
「すごいね。これ全部エディットの服なんだよね」
ハンガーに掛けられたエディットの服はどれも女の子らしいデザインだった。
まさに『コイカナ』の漫画の中でエディットが着ていた服がそのまま今、僕の目の前に存在している。
フリルのついたワンピースドレスや、エプロンドレス、花柄のワンピース……。
きっと、サチが見たら興奮が止まらないだろう。
「何だか、感動だな……」
思わずポツリと呟いてしまった。
「え?アドルフ様?今、何と仰ったのですか?」
「い、いや。どれも可愛らしい服でエディットによく似合うだろうなって思ったんだよ。考えてみたら、エディットの私服姿なんて殆んど見たことが無かったから」
するとエディットは一瞬、悲しげな顔で僕を見た。
「え?エディット?どうかした?」
もしかして、僕は今マズイことを言ってしまっただろうか?
「いえ、何でもありません。確かにそうですよね?いつもは学校でお会いしていますから」
「そうだよね。だから今度からは週末は2人でなるべく一緒に過ごすことにしないかい?」
流石に気恥ずかしさがあって『デート』と言う単語は口に出せなかった。
それにまだ、僕の中では王子に対する遠慮がある。
サチは僕を応援すると言ってくれているけれど、僕はどうやら王子に目をつけられているように感じる。
ひょっとすると、王子の中では既に僕を恋敵と見ているのかも知れない……。
けれど僕の不安な気持ちを他所に、エディットは目を見開いて僕を見上げてきた。
「ほ、本当ですか……?」
その頬はバラ色に染まっている。
「うん。 勿論、エディットさえ良ければだけど……」
「はい、是非……宜しくお願いします……」
恥ずかしそうに頷くエディット。
「うん、こちらこそ宜しくね」
そしていつものようにエディットの頭をそっと撫でると、嬉しそうに微笑んで僕を見つめてくる。
そんな彼女が愛しかった。
けれど、このまま悪役令息の僕がエディットの側にいてもいいのだろうか?
どう考えても僕なんかより王子の方がエディットにはお似合いに感じる。
僕の不安な気持ちを感じ取ったのか、エディットが声を掛けてきた。
「アドルフ様?どうされましたか?」
「い、いや。記念式典パーティーで着るドレスはどれかなと思ってね」
「あ、それはこちらの奥にあるのです。案内しますね」
エディットが右側の壁を指差すと、そこにはまだ扉があった。
「この扉の奥の小部屋にドレスがあります」
「凄いね。まだ部屋があったんだね」
流石伯爵家の一人娘だ。
「はい。開けますね」
そしてエディットが扉を開けると、水色のドレスを着せられたトルソーが僕を迎えてくれた。
「うわぁ……これがエディットのドレスなんだね?」
そう。目の前のドレスはまるでシンデレラのドレスにそっくりだったのだ。
シンデレラは城の舞踏会で本物の王子とダンスを踊る。
そこで、再び漫画の原作のワンシーンが思い出されてしまった。
大きな満月の下、噴水のある園庭で2人きりでダンスを踊るエディットと王子の姿が……。
「どうですか?アドルフ様」
エディットがはにかみながら尋ねてきた。
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何故かざわつく不安な気持ちを抱えながら、僕は無理に笑った――。
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